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咲きほころぶ踊り子たちの肖像 舞姫爛漫 第13回 「浅葱アゲハ」 【2】
写真・文・インタビュー=インベカヲリ★
モデル=浅葱アゲハ
ストリップ劇場でのストリップショー。黄金時代は過ぎたといえ、根強いファンはいまも劇場に通っています。そして踊り子たちもまた踊り続けているのです。そんな彼女たちの姿を追う「舞姫爛漫」第13回浅葱アゲハさん、掲載中です!
SMがしたくてSMショーパブに行ったんですけど、すぐに違うなって思ったんです
自分を痛めつけたいみたいな理由でやってたけど、だんだん気が治まってきたというか
生真面目なM女
自分を痛めつけたいみたいな理由でやってたけど、だんだん気が治まってきたというか
成績優秀だった浅葱アゲハは有名大学に一発合格。映画好きが高じて、映画館でアルバイトも始めた。世間的に見れば順風満帆な人生のはずだが、浅葱アゲハはそれで満たされるメンタリティではなかった。
ある日、映写室で一人こもっていると、いつの間にか自分の腕が血だらけになっていることに気がついた。愕然とした。切った記憶はないが、自分で切ったことは明らかなのだ。
「勤務中に無意識で切るって、人としてどうなの?と思って。やっぱり頭おかしいじゃないですか。打開策を考えないとって思ったときに、SMどうかしらって思ったんです。一人でやるよりも誰かと関わったほうが、若干社交的なんじゃないかって」
自分を痛めつけたいという欲求は消えることがなかった。だがSMという人とのコミュニケーションの中で成立するものなら、より健全だと考えた浅葱アゲハは、さっそくパソコンに向かい「SMクラブ」を検索した。
「といってもSMが何か全然わかってなかったんですけどね。手っ取り早く痛い目に合うために、最初はSMクラブに行ったんです。そしたら面接でメニューを見せられて、『フェラ』だとか『アナルファック』だって書いてあって、ビックリして帰ってきちゃいました。『すみません、間違えました』って(笑)」
浅葱アゲハは処女だった。人の輪に入れず友達もほとんどいない彼女は、当然のように彼氏もいない。そんな彼女が求めているのはHなプレイではなく、ただの「痛み」。次に閃いたのは、SMのショーパブだった。
「色々考えて、SMショーだったら相手の人とも一線越えなくて済むし、痛いことだけしてればいいし、人も一応見てるから安全かしらと思って」
向かった先は、六本木の「Jail」。彼女はすぐにM女としてショーに出始めた。大学一年の18歳。お酒も飲まず、夜の世界で遊んだ経験もなかった。人前で裸になることには抵抗があったが、痛みを得るためなら頑張れた。そうまでして自分を傷つけないと、前に進めなかったのだ。
「精神科へは行ったんですか?」
「行かないです。自分が病気と認めたくないというか。え、でもたぶん病気とかじゃないでですよね? だってそこらへんにいっぱいいるじゃないですか。腕切ってる人とか。珍しくないですよ」
遠い過去を振り返るように、微笑んでそう言った。
『Jail』に入店してすぐ、浅葱アゲハは縄師である長田スティーブと出会うことになった。2人はすぐに意気投合し、なんと32歳という年の差で付き合うようになった。そして当然のように、SMショーでのパートナーになった。大学へ行きながらも、どっぷりと夜の世界に浸かるようになった彼女は、自分の生きている世界を認めてもらおうと、両親に報告をした。
「うちは倫理的に厳しい家なんですよ。父も母も夜遊びみたいなことは絶対にしない人で。父は仕事に定時で帰ってきて、飲みにもほとんど行かない。土日は家族でどこかへ出かけたりするくらいで。むしろ父は水商売といった種類の女性がすごく嫌いでした。うちの母にも化粧しないでって言うくらい。で、母のほうも似たようなもので、男性経験まったくなく結婚したんです。だからもう私が始めたことなんか意味わかんないみたいな。ただやっぱり腕切ったりとか、学校行かなかったりっていうので、娘がしんどい姿は知ってたんですよ。だからこの仕事も受け入れてはいないけど、認めてくれてます」
リストカット同様、やらなければ生きていけない。それが浅葱アゲハにとってのSMショーだった。厳しい両親に報告するというのは、とてもハードルが高いことに感じるが、それも彼女の生真面目さなのだろう。そして生きるためにショーを続けるうち、考え方も少しづつ変わっていったようだ。
「実はSMがしたくてSMショーパブに行ったんですけど、すぐに違うなって思ったんです。やっぱり痛いのが好きでリストカットをしていたわけじゃないんですよね。自分を痛めつけたいみたいなよくわかんない理由でやってたけど、それもだんだん気が治まってきたというか。スティーブとSMショーをやっていく中で、いわゆるショーとしてお客様に出すものとしてはなんか違うなって。ムチを打たれてどうのとか、蝋燭垂らされてどうのっていう瞬間よりも、例えば縛られて宙に浮くとか、縛ってる形とか、動きでお客様が楽しむみたいな、そういう瞬間のほうが自分がやっててしっくりくるなって思ったんです」
M女としてショーを行なっても、そこに気持ちよさは伴わない。気持ちよさそうなリアクションをしなければ、お客の求めてるものと一致しない。自分はM女というのとは、少し違うのかもしれない。スティーブと話し合った結果、ムチや蝋燭を使うのを止め、SMショーではなく緊縛ショーに移行していった。
(続く)
浅葱アゲハ
2003年6月よりSMショーに出演、2004年4月21日九条OSのSM興行にて劇場デビュー。緊縛師・長田スティーブとの緊縛ショー、またソロの出演では空中パフォーマンスをメインとして演出がなされた演目を行なっている。鍛え抜かれたスレンダーな肢体が宙に浮いたまま披露されるステージは必見だ。劇場のほかクラブイベントなどにも精力的に出演しており、ステージを見ることができる。
A-GEHA.COM Asagi Ageha Official Website
-浅葱アゲハ公式サイト-
船橋ニュー大宝
2月1日ー2月10日
イベント情報
新宿ロフトプラスワン 毒蟲
2/16 ソロパフォーマンス
撮影=インベカヲリ★
モデル=浅葱アゲハ
取材協力=西川口テアトルミュージック
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インベカヲリ★ 東京生まれ。編集プロダクション、映像制作会社勤務を経てフリー。写真、文筆、映像など多方面で活動中。著書に「取り扱い注意な女たち」。趣味は裁判傍聴。ホームページでは写真作品を随時アップ中。 インベカヲリ★ http://www.inbekawori.com/ |
09.01.31更新 |
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