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咲きほころぶ踊り子たちの肖像 舞姫爛漫  第14回 「ひなぎく」 【5】
写真・文・インタビュー=インベカヲリ★ モデル=ひなぎく

ストリップ劇場でのストリップショー。黄金時代は過ぎたといえ、根強いファンはいまも劇場に通っています。そして踊り子たちもまた踊り続けているのです。そんな彼女たちの姿を追う「舞姫爛漫」第14回ひなぎくさん、最終回です!
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なんか、私は付き合うということをしたことがなくて。1対1で恋愛するのが苦手なんですよ
恋心とか愛とかって、一方に向かうわけじゃなくて、色んなところに向かっていいと思うし
私は少数派じゃない

すっかり燃え尽きたひなぎくは、しばらくやりたいこともなく、実家でダラダラと過ごしていた。何も考えないでいると1カ月や1年はあっという間に過ぎていく。ある日、鏡の前に立ったひなぎくはハッとした。自分の顔が一気に老け込んでいるように感じたからだ。これはマズイ……そう思った彼女はストリップへの復帰を決意した。

「舞台に立ってないと、顔が老けてくるんですよ。素人大会を辞めたときもそれは感じた。実家にいる間にちょこっと工場のバイトとかもしてたんですけどね、そこではやっぱり駄目なんですよ。人に見られることでテンションが上がるっていうのはあると思う。あの頃の私は、今よりも老けてたと思いますよ」

ストリップのステージは、軽い気持ちで戻れるような場所ではない。ダンスも体力作りも一からで、衣装作りにはお金もかかる。それでも復帰することを決意したのは、ストリップのステージが、ひなぎくにとって魅力的な場所だったからだ。

「自分の身体一つで遊べるっていうのは楽しいですよね。この前はマジックショーで、アソコから旗を出したんですけど、お客さんが驚いてくれてすごく楽しかった。といっても小道具を使うのは、それに頼る部分もあると私は思うので、身体一つで踊ることがやっぱり一番すごいことだと思う。たぶん私は、『女性の身体でこんなことをやってる』っていうのを目指してるんですよね。だから女の子にウケるとすごい嬉しいというか、女性のお客さんがもっと増えて欲しいと思ってる。やっぱりキーワードがそこへ行くというのは、私の中で何かあると思うんですけどね。女性が元気元気とか色々言われてるけど、社会の中では全然そんなことないじゃないですか。大変な話だっていくらでも聞くし。だから、男性と対抗してみたいなことじゃなくて、女性がもっともっと元気になるといいなあって」



ひなぎくの関心はやはり女性に向いていた。では、恋愛はどうしているのだろう。彼女の場合、男性との恋愛が不思議と想像つかなかった。

「なんか、私は付き合うということをしたことがなくて。1対1で恋愛するのが苦手なんですよ。恋心とか愛とかって、一方に向かうわけじゃなくて、色んなところに向かっていいと思うし。私はそれを公言しているんですね。恋愛関係になる人が同時に何人かいたりとか、セックスをする相手が何人かいるときもあるし、それを隠さないので。それが駄目っていう人は、最初から私に近づかないですね。トラブルになることもたまにあるけど、そういうとき私は自分がどうしていきたいかをちゃんと説明して、今後どうするかを決めるんです。私はそういうやり方がすごく好きなんですよね」

あまりの徹底ぶりに驚いてしまった。ひなぎくは、さも説明し慣れているようにサラサラと答える。

「独占欲がないわけじゃないし、嫉妬もするんですけど。でも1対1になれるわけがないと思っていて。Aさんを好きな気持ちと、Bさんを好きな気持ちって、方向性はたぶん違うじゃないですか。相手が違うんだから。それなのに、同じように恋愛という形をとったり、他の人を遠ざけたりする理由は私はないと思っていて。確かに好きな人が、他の子と仲良くなると嫉妬したりするんですけどね。でも好きな人が好きな人ってどういう人だろうって気になりませんか?それで私も仲良くしてみたりするんですよ。まあ、それをやって向こうに怖がられましたが(笑)」

正直すぎるというか、真面目すぎるというか。確かにひなぎくのような考えの人がいっぱい集まったら、面白い国にはなりそうだ。

「絶対面白いですよ。それに、1対1で恋愛して結婚しましょうっていうのは、日本の歴史の中でも最近の話だしね」

さらにこんなことも言う。

「なんか浮気とかもよくわからなくて。だって付き合わないから浮気とかないじゃないですか。はははは」

世の「婚活ブーム」と、真っ向から対立するひなぎくの意見。では結婚についてはどう思っているのだろう。

「私は結婚反対とは思ってないんですよね。ただ結婚するカップルを取り立てて『おめでとう』とは思わないし、離婚する人たちに『おめでとう』って同じくらい言ってもいいじゃないと思ってる。それは新しい生活スタイルへ変えていくために、結婚して繋がりを持とうというのも、離婚して別のことをやりましょうというのも選択肢だし、未来に向けてやってることだから」

少数派の意見は、それを話すのも行動するのも勇気とエネルギーがいる。あえてそこに飛び込もうとすることは、とても逞しいことだ。私がそう言うと、ひなぎくは「少数派」という言葉に対し首をかしげた。

「そんなに自分が少数派だと思ったことはないですね。むしろ多数派なんじゃないかな。そんなことないですかね? え? 今の話のどこらへんが変で少数派ですか? 私わからない。だってシングルマザーで結婚したくないけど子供が欲しい女性って、いっぱいいそう。主夫が欲しい女性もいっぱいいるじゃないですか」

むむ、私の周りではゼロといってもいいくらいだが、少なくとも思った先に実行できる人はなかなかいないだろう。

彼女と話していると、自分とは違う国で生きてきた人のようにすら感じるから不思議だ。

「やっぱりそういう友達が周りにいっぱいいるからだと思う。そうでなかったら私も色々揺らいでたと思うし、ここまでハッキリ口に出せて言えるようにはならなかったと思う。そういう意味ではすごくラッキー。高校時代はそうとう内向的だったし、外へ外へっていうタイプじゃなかったから。大学で性に関するグループに入って、その出会いはすごく大きいと思う」

私の場合はどうだろう? 女性差別というものすら受けたことがないと思って生きてきたが、それはもしかして鈍感なだけだったのか。いや、ひなぎくのような女性たちが時間をかけて少しづつ、生きやすい世の中にしてくれたからなのか。今は少数派と思うひなぎくの意見だが、もしかするとこの先賛同する日がくることも、ないとはいえない。例えば私なら「恋愛も結婚もこりごりだ」と、思ったときなどだろうか……。

文=インベカヲリ★


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Hinagiku x Inbe Kawori★

ひなぎく
2002年09月11日、DX歌舞伎町にて劇場デビュー。DX歌舞伎町所属。抜群のスタイルと美しい黒髪、そしてエンターテインメントに徹したステージで観客を魅了する。

ひなぎくの庭で

香盤情報
芦原ミュージック劇場
4月21日ー4月30日

若松劇場
5月11日ー5月20日

撮影=インベカヲリ★
モデル=ひなぎく
取材協力=池袋ミカド劇場

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インベカヲリ★ インベカヲリ★ 東京生まれ。編集プロダクション、映像制作会社勤務を経てフリー。写真、文筆、映像など多方面で活動中。著書に「取り扱い注意な女たち」。趣味は裁判傍聴。ホームページでは写真作品を随時アップ中。

インベカヲリ★ http://www.inbekawori.com/

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09.04.18更新 | WEBスナイパー  >  咲きほころぶ踊り子たちの肖像 舞姫爛漫