毎週土曜日更新! The dancing girls are in full bloom at their best.
咲きほころぶ踊り子たちの肖像 舞姫爛漫 第14回 「ひなぎく」 【4】
写真・文・インタビュー=インベカヲリ★
モデル=ひなぎく
ストリップ劇場でのストリップショー。黄金時代は過ぎたといえ、根強いファンはいまも劇場に通っています。そして踊り子たちもまた踊り続けているのです。そんな彼女たちの姿を追う「舞姫爛漫」第14回、ひなぎくさん掲載中です!
ドイツって売春が合法なんですよね
合法で働くってどういうことだろうってことに興味を持ったんです
母の背中
合法で働くってどういうことだろうってことに興味を持ったんです
「性の問題に取り組むグループというのは、女性だけでやっているんですか?」
そう質問すると、ひなぎくは当たり前といったように否定した。
「そんなことはない。関係ないし、男女もあまり意味がない。売春やってますっていう男の子もいたし」
考えてみれば男女平等とはそういうものだ。しかしひなぎくには、明らかに女性側への共感のようなものが感じられた。
「うちは両親が離婚しているんですけど、なぜ離婚したかというと、お母さんが外へ出て働きたかったっていうのがあったんですよね。お父さんはお母さんがパートに出ることにも良い顔をしてなくて、そこで馬が合わなくなっちゃったみたい。両親は仲が悪かったけど、お父さんからすればそのくらいの仲の悪さはどこにでもある話だと思ってたらしくて、離婚の話が出たときも『なんで?』って思ったみたいですね。だから、どっちかっていうとお母さんがお父さんを捨てたみたいな。ははは」
ひなぎくは母親と仲がよい。それは話を聞いていれば一目瞭然だった。父親の話がほとんど出てこないのだ。
「お母さんが働きに行って、お祖母ちゃんが家事をしてたんです。でも、お祖母ちゃんは、『子供を立派に育てるのが主婦の務め』みたいに思ってる昔の主婦なんですよね。それで、弟には何も言わないのに、私は『女』っていう理由だけで手伝いをさせられる。お母さんにも弟がいて、境遇が似てたから、2人して『あれは酷いよね』なんて姉妹みたいに言い合ってたんです」
母親の仕事は大変だった。10年子育てをした後に就ける仕事はほとんどなく、待遇は最悪で、売り上げを上げても給料は男性の半分。幼いひなぎくは、母親の愚痴を聞きながら、それでも楽しそうに仕事をする姿を見て育った。
「最初は離婚って悪いことだと思ってたんですよ。小4だったし、『人に言うのが恥ずかしい』って思ってた記憶がある。でもその後のお母さんを見てると本当に元気なんですよね。社会は酷くて、最低な現場で働いてたりするんだけど、それでも踏ん張って仕事してるんですよ。朝早くて夜遅いから、3日間顔合わせないこともあったけど、『仕事してたらアンタたちのことなんか忘れてるわ私』なんて言いながら、それでも愛情は感じるみたいな。そんな姿を見てると、離婚ってOKじゃないって普通に思えてきてた。自分の人生を新しく切り開こうとするのって、すごい格好良いなって。お母さんはすごい尊敬してる。母の背中を見て育ったから、私はこうなったと思っています。お母さんはショック受けるかもしれないけど。ははは」
アクティブな母親の影響を色濃く受けたひなぎくは、同じように自分の意思で自由に行動する女性に育った。
素人大会のアルバイトも辞め、しばらくフラフラしていたひなぎくは、ふいにドイツへ行きたい衝動にかられた。以前、旅行で行ったことのあるドイツは、「天気がよくて気持ちがよい」という理由で、気に入っていたからだ。ひなぎくは自然の流れに身を任せるように、ドイツ行きへの計画を始めた。
「なんだかドイツに行きたくなって、ワーキングホリデーがあるから行こうと思ったんですよ。でもお金がないから、稼がないといけなくて、それで2年間ストリッパーをやろうと思ったんです。素人大会とプロの踊り子とでは、職種が全然違うんですけど、すでにデビューしてる友達が2人いて、羨ましいなあ、自分もやりたいなあと思ってたんですよ。
それで覚悟を決めて2年間。2年やれば自分も納得するだろうと思ってたし」
途中で気が変わることもなく計画通りお金を貯め、2年後ストリップは休業。単身ドイツへ向かった。しかしなぜドイツだったのだろう?
「ドイツって売春が合法なんですよね。もちろんキリスト教国だから嫌悪感がないわけじゃないけど、日本とは違う意見を持ってるんですよ。日本はやっぱり非合法じゃないですか。ストリップもそうだし、性に関する仕事は年々追い詰められてる。法律もどんどん変なほうに厳しくなっているし、やらなくてもいい法整備をして、実際に働いてる人を追い詰めてる。じゃあ合法で働くってどういうことだろうってことに興味を持ったんですよ」
やはりひなぎくの興味は、「性」に向いていた。ワーキングホリデーで滞在できるのは1年間。ドイツへ行ってまず、語学学校に通った。
「とりあえず働けるだけの語学力を身につけようと、すごい必死で勉強しました。人生の中でも『私、勉強できるんじゃん』って思ったくらい(笑)。4〜5カ月目には結構喋ってて、それだけ喋れる人はなかなかいないと思うぐらいまでには出来たんですけどね。結局、仕事はしないで7カ月目に帰ってきちゃいました。なんかね、ヨーロッパはスリリングで、知り合った人に売り飛ばされそうになったりとかして。そんな経験してたら、燃え尽きたの」
ひなぎくはビックリするようなことを、淡々と話す人だ。それでいて普通のお姉さんといった外見だから余計に驚く。
「ああ、私はね、普通なんだけど喋ると面白いっていうのが好きなんですよ。そういう人間のほうが面白いじゃないですか。ふふふ」
またしてもヤラれたという気分。ひなぎくはあらゆることを確信犯でやっているようだ。
(続く)
Hinagiku x Inbe Kawori★
ひなぎく
2002年09月11日、DX歌舞伎町にて劇場デビュー。DX歌舞伎町所属。抜群のスタイルと美しい黒髪、そしてエンターテインメントに徹したステージで観客を魅了する。 香盤情報
芦原ミュージック劇場
4月21日ー4月30日
若松劇場
5月11日ー5月20日
撮影=インベカヲリ★
モデル=ひなぎく
取材協力=池袋ミカド劇場
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インベカヲリ★ 東京生まれ。編集プロダクション、映像制作会社勤務を経てフリー。写真、文筆、映像など多方面で活動中。著書に「取り扱い注意な女たち」。趣味は裁判傍聴。ホームページでは写真作品を随時アップ中。 インベカヲリ★ http://www.inbekawori.com/ |
09.04.11更新 |
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