毎週土曜日更新! The dancing girls are in full bloom at their best.
咲きほころぶ踊り子たちの肖像 舞姫爛漫
番外編 船橋ストリップシアター若松劇場 【1】
写真・文・インタビュー=インベカヲリ★
ストリップ劇場でのストリップショー。黄金時代は過ぎたといえ、根強いファンはいまも劇場に通っています。そして踊り子たちもまた踊り続けているのです。そんな彼女たちの姿を追う「舞姫爛漫」、本日から3週にわたり番外編として、踊り子たちを陰で支えるストリップ劇場をご紹介します!
ストリップ劇場とは不思議なものだ。近代的なビルが立ち並ぶ歓楽街の中で、ひとたび足を踏み入れればそこだけが昭和の匂いを残している。まるで時間が止まっているかのように昔のままで存在する。もちろんステージに立つ踊り子たちは、今を生きる女性だし、時代とともにステージも様変わりしてきたわけだけど、そんなこととは関係なしにやはりレトロな味わいを漂わせているのだ。
性産業が多様化し、安易に女体に手が届く時代にあって、なぜに黄金期をとうに過ぎたストリップ劇場が今も息をし続けているのか。
閉館していくストリップ劇場も多い中で、今も現役で続けている場所の一つが、千葉県船橋市にある「若松劇場」だ。裏口を案内され中に入ると、そこには当たり前だが、ストリップ小屋の裏部屋があった。取材で伺っていることを話すと、「写真? 嫌だよ、恥かしいから〜」と顔を背けてしまうスタッフの面々。その中で率先してカメラの前に立ってくれたのは、受付歴22年のTさんだった。お客さんから差し入れられたうなぎ弁当を頬張りながら、微笑んでくれる。
若松劇場の外観
職員通用口
受付歴22年のTさん
「お客さんから、踊り子さん全員とスタッフ全員に差し入れがくるんですよ。叙々苑の焼肉弁当だったり、ちらし寿司、うなぎ、相当な金額だと思うよ」
いかにも人のよさそうなTさん。ストリップが好きでこの業界に入ったかというと、そうでもないらしい。
「たまたま知り合いの仕事を手伝うようになって今に至るの。ストリップってそんなに知らなかったの」
Tさんの座っている受付の椅子と同じ位置で外を眺めてみる。内側からの光景は新鮮だ。ふと見ると、入り口を行ったり来たりして、なかなか入らないお客さんがいる。
「入る人、入らない人、顔見ればだいたいわかりますよ。あの人はね、好きな踊り子さんが乗ってるか確認しに来たんでしょう」
受付のスペースはとても狭い。人ひとりが入れるぐらいのスペースに椅子がドンと置いてある。Tさんはこの中で仕事をしている。
「外から見ると特殊な世界だけど、やってることは別に普通ですよ。チケット切って『ありがとうございました』って言って、普通に仕事をするだけ」
人の入れ替わりもよくわかる。昔はお爺ちゃんのお客さんが多かった。今はお爺ちゃんは少ないという。
「若い子が結構いるんだよね。追っかけの子とかね。踊り子さんの出てる10日間のうち、7回8回来てて、普段何してるんだろうなあ?って人が結構いるよ」
細い体でヒュルっと現れたのは照明を担当している通称イバラキさん。気さくな人で何でも答えてくれる。
「照明の仕事を始めて4年目だね。それまでは職人の仕事を転々としてたよ。ストリップなんて興味もなかったね」
職人の世界とストリップ劇場の賑やかな世界はまったく違う。「全然ノリが違いますよね」と言ったら、イバラキさんは真顔で答えた。
「違和感は別になかったよ。ああ、こんなもんかって」
照明室への入り口
照明室の壁の落書き
踊り子たちの照明指示書
照明を操作するイバラキさん
照明室へは、廊下の脇にある小さな入り口から、もぐりこむように入る。中は意外と広い。壁には踊り子が書いたサインや落書きがあった。
「始めた頃はさ、照明なんてただつければいいだけだと思ってたから、それで何で踊り子に怒られなきゃいけないのって思ってたね。タイミングも駄目だし、ピンは外れるし、『あの人の照明では踊りたくない』ってハッキリ言われてさ。踊り子はこだわりがあるんだよな。俺は劇場が閉まってから上手い踊り子に頭下げて残ってもらってさ、照明の当て方を練習したよ。おかげで今はみんなに信頼されてる。中には『お任せで』って言ってくれる踊り子もいるんだ」
照明室から舞台を観ると、客席のどの位置よりも眺めがよかった。イバラキさんがマイクを使って場内放送をする。その声を聞いて驚いた。さっきまでとは別人のように凜々しい声だ。
「みんなに言われるよ。マイクを使うとなんで茨城弁が出ないの?って(笑)」
Wakamatsu Theater x Inbe Kawori★
取材協力=船橋ストリップシアター若松劇場
千葉県船橋市本町2-17-27
\x87\x84047-432-0767
船橋駅より徒歩7分
座席100席
駐車場無料
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閉館していくストリップ劇場も多い中で、今も現役で続けている場所の一つが、千葉県船橋市にある「若松劇場」だ。裏口を案内され中に入ると、そこには当たり前だが、ストリップ小屋の裏部屋があった。取材で伺っていることを話すと、「写真? 嫌だよ、恥かしいから〜」と顔を背けてしまうスタッフの面々。その中で率先してカメラの前に立ってくれたのは、受付歴22年のTさんだった。お客さんから差し入れられたうなぎ弁当を頬張りながら、微笑んでくれる。
若松劇場の外観
職員通用口
受付歴22年のTさん
「お客さんから、踊り子さん全員とスタッフ全員に差し入れがくるんですよ。叙々苑の焼肉弁当だったり、ちらし寿司、うなぎ、相当な金額だと思うよ」
いかにも人のよさそうなTさん。ストリップが好きでこの業界に入ったかというと、そうでもないらしい。
「たまたま知り合いの仕事を手伝うようになって今に至るの。ストリップってそんなに知らなかったの」
Tさんの座っている受付の椅子と同じ位置で外を眺めてみる。内側からの光景は新鮮だ。ふと見ると、入り口を行ったり来たりして、なかなか入らないお客さんがいる。
「入る人、入らない人、顔見ればだいたいわかりますよ。あの人はね、好きな踊り子さんが乗ってるか確認しに来たんでしょう」
受付のスペースはとても狭い。人ひとりが入れるぐらいのスペースに椅子がドンと置いてある。Tさんはこの中で仕事をしている。
「外から見ると特殊な世界だけど、やってることは別に普通ですよ。チケット切って『ありがとうございました』って言って、普通に仕事をするだけ」
人の入れ替わりもよくわかる。昔はお爺ちゃんのお客さんが多かった。今はお爺ちゃんは少ないという。
「若い子が結構いるんだよね。追っかけの子とかね。踊り子さんの出てる10日間のうち、7回8回来てて、普段何してるんだろうなあ?って人が結構いるよ」
細い体でヒュルっと現れたのは照明を担当している通称イバラキさん。気さくな人で何でも答えてくれる。
「照明の仕事を始めて4年目だね。それまでは職人の仕事を転々としてたよ。ストリップなんて興味もなかったね」
職人の世界とストリップ劇場の賑やかな世界はまったく違う。「全然ノリが違いますよね」と言ったら、イバラキさんは真顔で答えた。
「違和感は別になかったよ。ああ、こんなもんかって」
照明室への入り口
照明室の壁の落書き
踊り子たちの照明指示書
照明を操作するイバラキさん
照明室へは、廊下の脇にある小さな入り口から、もぐりこむように入る。中は意外と広い。壁には踊り子が書いたサインや落書きがあった。
「始めた頃はさ、照明なんてただつければいいだけだと思ってたから、それで何で踊り子に怒られなきゃいけないのって思ってたね。タイミングも駄目だし、ピンは外れるし、『あの人の照明では踊りたくない』ってハッキリ言われてさ。踊り子はこだわりがあるんだよな。俺は劇場が閉まってから上手い踊り子に頭下げて残ってもらってさ、照明の当て方を練習したよ。おかげで今はみんなに信頼されてる。中には『お任せで』って言ってくれる踊り子もいるんだ」
照明室から舞台を観ると、客席のどの位置よりも眺めがよかった。イバラキさんがマイクを使って場内放送をする。その声を聞いて驚いた。さっきまでとは別人のように凜々しい声だ。
「みんなに言われるよ。マイクを使うとなんで茨城弁が出ないの?って(笑)」
(続く)
Wakamatsu Theater x Inbe Kawori★
取材協力=船橋ストリップシアター若松劇場
千葉県船橋市本町2-17-27
\x87\x84047-432-0767
船橋駅より徒歩7分
座席100席
駐車場無料
開演時間■11:30〜23:30 ※1日4回公演入れ替えなし 料金■平常5,000円/早朝13時まで3,500円 公演時間 1st 11:30〜14:30 2nd 14:35〜17:30 3rd 17:35〜20:30 4th 20:35〜23:30 |
4/21-30の出演予定 詩田笑子 一愛遥 蒼井夏恋 西園寺瞳 鈴木りん 麻吹ルキア ※出演者の詳細については 劇場までお問い合わせ下さい |
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インベカヲリ★ 東京生まれ。編集プロダクション、映像制作会社勤務を経てフリー。写真、文筆、映像など多方面で活動中。著書に「取り扱い注意な女たち」。趣味は裁判傍聴。ホームページでは写真作品を随時アップ中。 インベカヲリ★ http://www.inbekawori.com/ |
08.04.19更新 |
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