たとえSMマニアではなくとも、彼のその姿、その作品を一度は目にしているのではないだろうか。それほど多くの作品に関わり、多忙な日々を過ごす乱田舞。だからこそ足を止めることなく走り続ける、新たな時代のキーパーソンである。そんな彼の想いは深く、そしてとても大きく見える。 |
photo サコカメラ |
名実ともに斯界の旗手として
他を寄せ付けぬ活躍を見せる男
――明智さんが亡くなられてこれからを思うと、不安と期待が入り交じるような感慨があります。こういった状況の中、乱田さんはある意味トップランナーと言って差し支えないですよね。そんな乱田さんに改めてSMのことをお伺いしたいんです。
乱:SMの表現方法には色々あるじゃないですか。そこで、俺のなかでSMって何なんだろうって考えるんだけど。ひとつ答えとして、簡単な言葉で言うと、ファンタジー。色んな人に影響を色んな形で与えていって、それに共感をしてくれる人たちと共に過ごせればいいかなと思っているんですけどね。
――SMはファンタジーだと思うようになるまで様々な経緯があったと思うのですが、その思いはSM的なものとの最初の出会い、そのときの衝動とか衝撃、感動そういったものと結びついているんでしょうか。
乱:最初はやっぱりエロですよ。完全に自分の性癖というか。磔にされている女の人を見て興奮している自分に、小学校4、5年生くらいからずっと悩んでて。中学のときに初めてSM雑誌ってものを知って、自分の性癖が異常じゃない、俺と同じような性癖の人がいるんだっていうところからの始まりなんでね。それで20歳ぐらいのときにホテルでスイートルームを借り切って、SM好きな人間を集めてサークルをやったんです。縛りが好きだったからそういうところで縛って、みんなに見せるっていう。でもある時、明智さんのショーを友達と見に行って。まあそれまでは結構天狗だったんです。俺の縛りは一番だと思っていた。でも明智さんの縛りをボンッと見て衝撃を受けて。あ、もうこれはやめたと。すぐ閉めちゃったんですよ、自分のサークルを全部。
――それはもうかなわないという思いだったんでしょうか?
乱:いや、かなわないっていうより、明智さんのショーを見て、すごいっていう気持ちと、俺だったらこうするなっていう気持ちがほんとに半々であったんですよ。いや、もっとこだわってもっとショーアップしたものをやれば、もっともっと変わったSMの表現ができると思った。そっちの思いのほうが大きかったのかもしれない。明智さんをすごいって思う反面、このすごさを自分が手に入れて、そこに音楽とBGMと照明とそれと色んなスタッフの人たちの手も借りてショーアップできるようなことが、もしも自分にできるのであれば、これはもう絶対にこの道を進むべきだと思って。その翌日か翌々日にもうサークル活動をピタッとやめて。それからもう毎日縛りの特訓。テーブルとか椅子とかを縛って覚えて。僕的にはもう明智伝鬼という人の縛りのすごさに確かに影響を受けたんだけど、それだけでそこに……と思いたくなかった。また違う形の表現をするんだってことを、ずっと試行錯誤してやってきた。同じ縛りでもちょっとした工夫で人の視線を誘導することを常に研究したっていうか。最初に明智さんのショーを見て思ったんだけど、ほどいてるときみんな見てないんですよ。僕は今でもそうですけど、ほどいているときでも人を飽きさせないような手の動かし方、演出の仕方、ひとつひとつ全ての動きが人に注目されるような、そういうものがやりたいってあのときに思った。それがあったからこそ、今の自分があると思ってる。あの明智さんのショーを見ていなかったら、今の自分は絶対にいないから。僕自身、サークルやってるとき、SMは趣味の世界で終わらせようと思っていた。でも実際それを職業にしている人のショーを見てものすごい衝撃を受けたと同時に、今実際に僕が活動している全てのことが思い浮かんだ。そのときに思った夢や憧れをひとつひとつ実現していくってことを僕は今までしてきたんです。あのときに感じたことが、ほんとに皆さんのおかげで全部実現させてもらえた。100パーセント。そうなると、さっきの話に戻るけど、自分がこうやってるなかで徐々に芽生えてきた部分っていうのがファンタジーの部分。SMはこうあるべきだっていうものではなく、ひとつの大きなSMのカテゴリーの中で夢を与えていきたいって。
(続く)
インタビュー=編集部・五十嵐彰
※この記事はS&Mスナイパー2006年1月号に掲載された記事の再掲です。
乱田舞 1959年生まれ。緊縛師としてビデオ、Vシネマ、テレビ、雑誌、写真集、舞台などで積極的に活躍。また日本だけではなくアメリカやヨーロッパでも活動する。ビデオやVシネマと舞台では監督、脚本、演出も手掛け、関わった作品は1000本を悠に超えるほどである。
関連リンク
乱田舞公式サイト『−乱舞−』=http://ranbu.32ch.com/
Bar 乱舞館=http://ranbukan.32ch.com/
サコカメラ公式サイト『WWW.SACO-CAMERA.ORG』=http://www.saco-camera.org/
関連情報
乱田舞プロデュース 『SM LIVE SHOW DX act2』開催!
開催期間:2007年3月21日(水)祝日〜31日(土)
※3月25日(日)、及び31日(土)は特別興行となるため、開催時間及び料金システムが異なりますので、ご注意ください。
会場・お問い合わせ:『新宿DX歌舞伎町』
東京都新宿区歌舞伎町2-25-10/TEL03-3232-9946/URL=http://www.dxk.co.jp/
料金:男性8,000円/女性5,000円
出演者:香盤表