The decision to fight against the world which cannot be finished.
"終われない世界"に、立ち向かう決意を。 |
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第3話にして、ついにこの世界の最アンダーグラウンドに来てしまった! 2人は完全に冒険に巻き込まれたね。
連れて行かれた先にあったのは、もうまさに宮崎駿の作品に繰り返し出てくる「地に足が着いた人たちが暮らしている」村だったんですが、ここは同時にテロリストの村でもあった。当然ですよ! 第1話から発散されてた、なんか危ない雰囲気プンプンのこの世界。こんなディストピアで「地に足が着いた生活」なんかしたら無事ですむ訳がない! テロリストといえば若松孝二のドキュメンタリー『赤軍‐P.F.L.P 世界戦争宣』ですが、それを現代の若者が観て「何言ってるんだこの人、とりあえず危ない」みたいな。主人公もこの村の趣旨を知ってとりあえずひいていました。
この村で主人公はゆっくりと雪解けして『フラクタル』の世界から、何か自分の真実へ向かっていくんでしょうけど(そうでしょう! そうなんでしょう山本監督!)、しかしそれが村の一員となる方向へ行くのか? 村と決別して自分の道へ行くのか、さあどうなるんでしょう。
しかし今回観てビンビン来たのは、この村はまちがいなく将来、悲劇に見舞われるということですよ! 例えば主人公を敵視してくる、この村の趣旨を塗り固めたような偏屈ジジイ。こいつでさえ、絶妙にシリアス路線を外してきて嫌な奴になりきらない。村人の親しみやすさは、もちろんシリーズ後半に訪れるこの村の悲劇への布石に違いない!(そうなんでしょう山本監督!)
そして今回、なんと言っても素晴らしかったのは、ものを食べることが出来ないネッサが主人公に「食べ物の味」を聞くシーンでした。これは芸術の誕生ですよ! 食べるという共有する体験がないからネッサにはナアナアの説明は通じない訳です。そこでは言葉も意味を成さない、もっと根源的な伝達方法が求められてしまう! そこでなんと、主人公は踊りで味を表現する、これこそ芸術じゃないですか!
直前にこの村のおばあさんが、ネッサにドッペルと気づかず食事をすすめて謝るというエピソードがある。このおばあさんはネッサの「かわいそうさ」にすぐ気づいたんですね。『フラクタル』世界で多分、この村の中にしかないような真っ当さですが、そのかわいそうさを今度は芸術で乗り越える! このコンボには感動しました。
今回は「フラクタル・ターミナル」という、この世界の人たちが体内に埋め込んでいる機械の話でした。テロリスト村の人たちはこれを摘出していて、だから眼鏡がないとドッペルが見れない。「まさに逆『ゼイリブ』(サングラスをかけた瞬間この世の隠された真実が見えるようになる!というSF映画)状態!」と叫びたくなりましたが、ドッペルは肉眼でも見れるホログラムというより、iPhoneとかデバイスを透かさないと見れないARみたいなもんなんでしょうか。
そしてこの機械にはネットワーク化の機能もあって、主人公が病院を見たとき、「うわ、初めて見た!」と驚いちゃう。誰もが「ターミナル」を体内に埋め込んだこの世界では、医療も遠隔操作で好きな時に受けられて、ただこの村の人たちだけが病院という専用の場所に通っている。これが意味するのは、彼らは「ターミナル」から自由で、しかし同時に距離に縛られているということでした。
そして、この距離の克服こそ、文明の進歩な訳ですよ! 乗り物はより速く移動! さらに移動すら必要のない分野を電話、インターネットと開拓していく! さらに常時接続ARみたいなドッペルで家族が周りにいれば、もう家族も日常的に会議電話とかskypeと同じ、移動しない為の技術で代用できちゃう! それがこの世界でしょう。つまり家族の問題は、(物理的な)距離の問題でもあった! これは、今回の発見でした。
そんなテロリスト村で、主人公達をさらった女の子がさっそく、そこまで悪い奴じゃないと化けの皮が剥がれたり、まあこれは予想通りですけどね!何しろこっちは『未来少年コナン』の鉄の女モンスリーが実は良い奴だったという衝撃体験をすでにすましてますから!さらに『天空の城ラピュタ』の海賊ドーラが実は最高ですという体験をすでにすましますから!!だからバレバレなんですから、むしろ『フラクタル』のツンデレ具合は全然マダマダですから!というのは置いといて、とにかく和気あいあい、幸せな捕虜生活が続くのかと思っていたら後半早速ぶちかまして、今回は終わりました。まさかこんなに早く、シリアスシーンがくるとは思わなかったよ!
文=ターHELL穴トミヤ
『フラクタル第3巻DVD』(初回限定生産版)
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フラクタル - FRACTALE - 公式サイト
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12.01.08更新 |
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