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新連載 異端のAV監督・ゴールドマンが放つ衝撃の告白小説 毎週日曜日更新!
Autobiographical novel by Goldman [SEX・MOVIE・BLUES]
数々の伝説に彩られた異端のAV監督・ゴールドマンが書き下ろした衝撃の自伝的小説。セックス、ハメ撮り、結婚、逃避、勃起不全……余りにも赤裸々に語られ尽くす、ゴールドマン史における事実、裏話、そして苦悩は、読む者を人生の迷宮に拉致監禁せずにはおかない文学的事件だ。
 | 
セックスという名の快楽には、男も女も、多かれ少なかれ、なにか憧れにも似たような感情を、抱いているはずだ。
しかし、それを、職業として生きていくと、やがて、鉛のリュックを背負ったまま、ぬかるみの海に沈んでいくような、苦悩を味わうことになる。

4 ハメ撮りの生まれた日

最初に俺がハメ撮りというものを体験したのは、たしか89年の秋で26歳の時だった。もう、すでに10月だというのに真夏のような暑い日だった。

それまでにも俺は、数本のAVを監督していた。
低予算のB級映画のようなドラマものだ。
撮影用のスタジオを借りて、スタッフもたくさんいた。プロ用の機材を使って、画質もクオリティの高いものだった。メイク、照明、音声、カメラマン、AD、女優、男優、マネージャー等、皆がそれぞれの持ち場で熱心に仕事をしてくれた。
それが、一般にいうAV撮影の現場だ。
しかし、撮っているうちに、俺の心の中に、ある疑念がわいてきた。

この、いわゆるお仕事的なセックスは、なんだ? 全然エロくない! せっかく女の性器に男のペニスを入れたり出したりしているのに、まったくもってイヤらしくない!

これは、どういうことなんだ!

日常的に、自分が体感しているエロとは、まるでかけはなれた世界だ!
この、仕事で行なうセックスという行為に、一体なんの意味があるのか?
こんなものを観ながらペニスをしごいているAVファンは、はたして満足なのか?
男優も女優も、まったく心から欲情していない。手のあいているスタッフは、そのへんで弁当を食べてる。カットがかかって撮影が終わると、さわやかな笑顔でシャワーを浴びて、帰り支度するついさっきまで男のペニスをくわえこんでたAV女優という名の生物。

俺は思った。

セックスというのは、こんなもんじゃない!
本当のエロスというのは、こんなものじゃない!
ただ単に、金のために集ってるスタッフ達。
金の代わりに交尾する男と女。
俺の求めてる世界は、ちがう!
もっとイヤらしい世界ができるはず!
本物のエロスを表現できるはず!
もっと、もっと、生々しい、息をのむような男と女の性というものが撮れるはず!

俺は、たった一人、心の中で叫んでた。
こんなAVいくら作っても、ゴミだ!
オナニーしている奴らも、かわいそうだ!
本当に愛液がしたたり、肉がはじける瞬間!
カメラのレンズなんてまるでおかまいなしのエロスにみなぎった男女の世界!
そんな映像が撮りたいと、いや、撮るしかないのだと、強く深く意識するようになった。
しばらくは、そのことについて、悶々と考える日々がつづいた。

丁度、その前年の88年のことだった。
俺は生活のためにアルバイトをしていた。
いわゆる家電量販店である。
売り場は、ビデオカメラ売り場。
まったくもって偶然の出来事である。
当時、小型の家庭用ビデオカメラが、ものすごい勢いでどんどん発売されはじめ、親が子供の運動会のためにと、血まなこになって買いだしていたのだ。
俺は、そんな小型で軽量、性能もバツグンによくなってるビデオカメラを手にして、毎日のように客にすすめていた。

誰にでも簡単に手に入るリアルな映像。
写真では決して味わえない臨場感。
客にもビデオカメラをすすめながら、俺自身もワクワクしていた。
ビデオカメラに魅了されていた。
時代の新たな可能性を感じていたのだろう。
俺は、ビデオカメラを手にすると、ひどくエキサイティングな気分になった。
自動車のハンドルを握ると人格が変わってしまうスピード狂のレーサーがいるように。
俺も、ビデオカメラを手にした瞬間、やけに魂が躍動した。不思議な気分だった。

その時の感触が、しみついていたのだろう。
ある日、俺は、プロ用の機材を使わないことにした。業務用のカメラに見切りをつけたのだ。それまでAVの世界で常識とされていたプロ用の撮影機材による高画質な商品と、そして、それらの仕事に必要とされる単に金で雇われただけのスタッフ達、ここに、まったくもってつまらない形だけのセックス撮影を生みだしてしまう最大の要因があると考えたからだ。

わざわざ高いギャラを払って技術者を雇って、そのおかげで、うんざりするほどつまらない男と女のセックスもどきを撮影するなんてバカバカしいにもほどがある。
社会悪とまでは言わないけれど、200%ムダである。

俺には、自らの経験から、絶対的な確信がひとつだけあった。
それは、セックスというものは、二人きりでするものであり、それは密室で行なわれるもの。
それこそが、最低であり最高の必要条件なのだと。
そんなあたり前のことも、仕事でエロを作ってる奴らは、まったくもって理解できていなかったのだ。いや、理解はできたとしても、それを映像化していく情熱が足りなかったのだろう。
とにかく、もうバカバカしい形だけのお仕事的セックスは、やめにしよう。
もっと、五体で感じられるような生々しいセックスを表現しよう。
そんな心の変化が、俺の中だけで起こった。
誰も知らない心の中だけで……。

今でこそ、ハメ撮りというジャンルはある。
しかし、当時はまだ、どこにもそんなものはなかった。ごく一部で、ちゃんとしたAV撮影の合い間に、オマケとして、男優なりスタッフが女と二人っきりでHなことをしちゃいました的なものはあったようだけど。

まるまる一本のAVが、家庭用の小型ビデオカメラで作品として製作され、リリースされるということは皆無だった。今と違ってその頃は、デジタルでもハイビジョンでもなくて、8ミリビデオテープの初期なので、当然のごとく業務用で使ってたベーカムなどに比べて、かなり画質も悪く、AVメーカーとしても、そんなものが商品として流通しうるものなのかどうか判断がつかなかったようだ。ほとんどの経営者たちは、そんなクオリティの低い映像作品は発売できないと思い込んでいたようだ。エロで商売しているくせに、ケチなプライドだ。しょせん、金もうけのためだけに生きてる連中というのは、つねに盲目だ。
それは、今も昔も、まったく変わらない。
うんざりする連中である。

そんな中で、唯一、俺の理想とするところのイメージに近いものがあった。
それは、素人が自ら応募する投稿写真の世界だった。地方のカップルたちが、自分たちで撮影したエロい写真を投稿してくる。その自分たちの痴態を全国の読者に晒すことによってさらなる興奮を得る。一部のマニアックな趣味であったが、熱狂的だった。
俺は、そこからなにかを学ぼうとして、投稿写真を眺めていたわけではないけれど、その純粋に性的興奮を楽しんでいる様子は、職業としてエロに携わる人間の忘れてしまった一番大切な魂であり、とにかく熱くほとばしるものが感動的でさえあった。
俺の追及するエロスの源は、ここにあった。

とりあえず、いつもお世話になっている西新宿にあるAVメーカーの社長に会うことにした。小型カメラで、二人っきりの密室で、AVを撮影してみたいという話をした。
その社長は、テキトーにおもしろがって話をきいてくれた。でも、そういった映像を現実に見たこともなかったので、社長としては予算を出して商品化するというところまでは決断してくれなかった。

経営者としては、当然の判断だろう。
ちょっと肩透かしをくった感じだったが、俺はどうしても自分の納得するエロい映像を手にしたかったので、自腹を切って撮影することにした。

その頃は、AV監督の仕事や、たまにADやカメラマンもやっていたので、ほとんど借金もなくなっていた。多少の金は融通できる生活になっていた。
たまたま、知り合いのADにフリーでやってるAV女優を紹介してもらえることになった。自らAVメーカーに電話してきて、出演したいと志願したらしい。当時としては本当にめずらしく、だいたいAVに出る女はスカウトと決まっていた。

会ってみるとショートボブのすごく可愛らしい娘。23歳だというのに、まるで美少女チックな不思議なモデルだった。

俺は、自分のイメージしてることや、自主制作でお金がないことなど、正直に語って、そこそこのギャラで出演してもらうOKをとった。とにかく熱く語ったのを覚えている。
女優のギャラだけなんとかなれば、あとはラブホテル代とビデオテープ代くらい。
それがあれば現場は成立する。
あとはすべて俺の問題だ。
撮影は、もちろん全部、自分一人でやる。
頼る人間もいなければ、逃げ場もない。

一つだけ、すごく気がかりだったことがある。それは、もともとAV男優でもなんでもない自分が、他人(スタッフ)がいないとはいえカメラの前で、はたして本当にセックスすることができるのだろうか? それも、ただするだけじゃなく、AVを観ている人たちを興奮させられるような行為が自分にできるのだろうか?
そういった不安に心が揺れた。
そりゃ、そうだ。あたり前の話だ。
まだ、一度もヤッたことがないのだから。

二人きりのAV撮影。それも、別に恋人でもない、あくまで知らない女だ。
緊張するなというほうが、無理な話だろう。
不安はないというほうが、ウソだろう。
いろいろな迷いの中で、俺は考えた。
セックスは、できればしたほうがいいけど、どうなるかわからないので、絶対しなくちゃいけないという風にはしない。
むしろ、変態カップルのSMプレイ的な要素を強くして、ビニールテープで縛ったり、ハサミでワンピースを切り刻んだり、マニアっぽいプレイを中心にしていけば、それほどセックスにこだわらなくても、ワイセツすぎる映像が絶対に撮れるはずと確信した。投稿写真でつかんだマニアカップルのイメージだ。
そんなイメージだけ伝えて、俺はショートボブの彼女と真昼のラブホテルに潜りこんだ。

場所は新宿歌舞伎町、回転ベッドのある部屋だ。金ピカの風呂もレトロなテイストだ。
俺は生まれてはじめてビデオカメラを手に、AVアクターに変身する。
たぶん、幼稚園の学芸会より緊張しただろう。
しかし、カメラがまわり、マニアの男になりきって女のカラダをオモチャに、いろいろと変態的なプレイを撮影していくと、俺は徐々に熱をおび、気がつくとすでに自分もパンツを脱いで、そのフリーのAV女優という肉塊のワレメにめりこんでいた。

その時の細かい部分は、もはや思い出すことはできないが、ひとつだけ言えることは、俺の、この撮影に対する絶対的確信は正しかったと思えたこと。鳥肌の立つような、ゾクゾクする感覚。絶対に演技ではすまされない二人だけの密室エロス。
撮影のすべてが終了した時の充実感は、それまで味わったことのないものだった。

最高のカタルシスだった。

俺は、最大級の満足を得て、女の顔の精液をやさしくティッシュでぬぐった。
のちに、この撮影されたビデオテープは、あの社長に買いとってもらうことになる。
通常のAVの制作費よりも破格だったこともあり、無事、俺の魂は、世間にリリースされることになった。

その作品は、賛否両論はあったものの、その、それまでにない生々しいエロスの映像の衝撃に、一部のAV評論家たちが大絶賛し、俺はその後20年以上もハメ撮りをつづけることになる。

若さゆえの強引さは、人生に必要なのだろう。
ちなみに、その時のショートボブの娘とは、半年くらい恋人っぽくつきあったが、彼女はすぐに別の男と結婚して、子供も生まれた。
あの日の出来事は、あの時だけの二人の出来事だった。
(続く)

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harrehare_index.jpg
異端のAV監督・ゴールドマンが来る!!
ゴールドマン 87年にアートビデオより「電撃バイブマン」で監督デビュー。その後、実験的な作品をリリースするなどAV業界に対して常に挑戦的な姿勢を持ち続ける。中でも89年に発表された60分ワンカットの8ミリビデオ作品「なま」は伝説級。近年はハメ撮りでの言わせ系淫語で独自の世界を展開。20年間で約1500人の女とハメ撮りし、300本以上のハメ撮り作品を制作してきたAV業界の巨頭。
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10.08.08更新 | WEBスナイパー  >  セックス・ムーヴィー・ブルース
文=ゴールドマン |