異端のAV監督・ゴールドマンが放つ衝撃の告白小説 毎週日曜日更新!
Autobiographical novel by Goldman [SEX・MOVIE・BLUES]
数々の伝説に彩られた異端のAV監督・ゴールドマンが書き下ろした衝撃の自伝的小説。セックス、ハメ撮り、結婚、逃避、勃起不全……余りにも赤裸々に語られ尽くす、ゴールドマン史における事実、裏話、そして苦悩は、読む者を人生の迷宮に拉致監禁せずにはおかない文学的事件だ。しかし、それを、職業として生きていくと、やがて、鉛のリュックを背負ったまま、ぬかるみの海に沈んでいくような、苦悩を味わうことになる。
5 エロの原点
俺が生まれ育ったのは、東京のすぐとなりにある街。だから、海とか山とか川とかがある田舎で育った人には、憧れてしまう。
父親も母親もまじめな公務員で、見合いで結婚して、姉と弟の俺が誕生した。
父親は本当にまじめな男で、昔たばこは少し吸っていたけど酒は一切飲まない、人づき合いもほとんどなし、趣味のようなものも全くなく、家と職場をただ往復するだけの、典型的な仕事人間だった。それを、ヒステリックな母親が、「つまらない人!」と、度々非難していたのが子供心に深く刻みこまれている。
まあ、いわゆる中流といえば中流の、平凡な家庭だったようだ。
それが、なんで俺みたいな人間を、育てたのか?
なぞだ!
小学生の時はおとなしくて、マンガばかり読んだり描いたりしていた。ギャグマンガも、熱血スポ根ものも、SFも、番長ものも、みんな大好きだった。将来は絶対に、マンガ家になるんだと、信じてまったく疑わなかった。
そんな自分に変化がおとずれたのは、中学二年生の頃だったと思う。
ある晩、ラジオの深夜番組から流れてた甲斐バンドの『テレフォン・ノイローゼ』という曲にものすごい衝撃を受け、どんどん音楽の世界にハマりこんでいき、それからは時間の許すかぎり、レコードがすり切れるまで、好きな音楽を一生懸命聴いていた。
いつの間にか、マンガのことは忘れていった。
丁度、そんな頃に目覚めたのが、オナニーだった。きっかけはなんだったのか定かではないが、たしか父親が戸棚のすみっこに隠し持っていた官能小説みたいな本に、グラビアページみたいのがついていて、その写真というのが女子高生のセーラー服なのにアミタイツを穿いている、ちょっとフケ顔のエロいお姉さんの横たわってるポーズで、まだ純情だった中学生の俺は、父親のいない時に、何度も何度もその写真をながめては、なんともいえない大人の快感に浸っていたのだ。
しかし、エロいお姉さんのグラビアページは興奮させてはくれるものの、なんかもの足りない感じがして、俺は近所の小さな本屋で、もっとエロい本がないか探しはじめた。
中学二年生にしては、大胆な行動だ。
そこで発見したのが、官能劇画、いわゆるエロマンガである。当時は、官能劇画にとって、空前の大ブームだったらしく、とにかくたくさんのエロマンガだけの雑誌が並んでいて、俺は学校の帰りに、その本屋によって、並んでいるエロマンガの本を端から端まで全部チェックして、一番エロいと思える一冊を、なけなしのこづかいで買って帰った。
それをドキドキしながら夢中で読んだ。
もちろん、オナニーも毎日した。
そこには、めくるめく官能の世界があった。
大人の男と女の交わる肉体。
まだ恋もしたこともなければ、女の裸や、もちろんセックスなんてどこをどうすればいいのかさえ知らない、本当にウブな少年が、いきなりエロでも、妄想の強すぎる現実離れした世界に、迷い込んでしまったのだから、これがよくなかったんだと思う。
優等生の美少女が、処女なのに変態オヤジに調教されて、セックス奴隷になっていく。
色情狂の頭のおかしい女が、結婚している男をたらしこんで、一方的に犯してしまう。
そんなありえないエロスの世界にどっぷりとハマりこんでしまった中学生の俺。
思えば、これが俺のエロの原点だ。
いまだに、その頃大好きだった三条友美のマンガは愛用しているし、成人してからは、フランス書院文庫の女教師ものに熱中していたり、結局、俺はエロ本が好きなんだということが、最近ようやくわかってきた。
たぶん、生身の女よりも、エロ本の中の女に強く魅力を感じてしまってるのは事実だろう。
女好きではなくて、エロ本好き。
そういえば当時、エロ本の自動販売機というものがけっこうあって、でも近所だと知ってる人に目撃される可能性があるので、わざわざ夜中にジョギングしてくるといって、ジャージに着替えて、百円玉をいくつか握りしめながら、隣の街までわざわざ走っていって、ひどくドキドキしながらエロ本を買って帰ったのを思い出した。
この、まるで恋愛でもなく、ましてや、セックスなんてほど遠い、少年の頃の純粋な興奮が、今の俺を形成してくれてるのだろう。
そういう仕事をするようになるとは、夢にも思っていなかったけれど……。
人生というのは、だからおもしろい。
オナニーをはじめた頃は、まさか、将来、他人をオナニーさせるために苦労するなどとは、まったくもって想像できなかったから。
そういう意味では、自分のエロの原点を忘れずに、感謝の心で、エロ映像を作っていかねばと思う。
ボッキのことで悩む46歳の俺は、中学生の頃の俺を、ギンギンにボッキさせうるエキサイティングなエロスを、新たに創造しゆくことを固く心に誓うのであった。
ちなみに、まじめすぎる父親が、その後に無修正の局部丸出しのエロ本を密かに隠し持っているのを、俺は発見した。
まるで趣味がないと思われた父親の唯一の趣味か?
そのDNAが、俺のカラダに流れてる。
6 理想のキャスティング
2010年1月31日、新宿駅から山手線に乗って、五反田に向かう。とあるAVメーカーのプロデューサーと女優のキャスティングの打ち合わせのためだ。山手線で渋谷を過ぎて、品川方面に向かうのは苦手だ。なんとなく気持ちが、はずまない。街にエロの匂いがしなくなるからだろうか? 向かいの席に座った化粧の濃い、つけまつげの若い女は、やっぱり渋谷で降りた。
待ち合わせは、五反田駅から歩いてすぐのコンビ二の2Fにあるファミレス。
一昨年のリーマンショック以降、世界的な大不況はもちろん、AV界においても、ネットの進化も手伝って、商品の売り上げは日に日に落ち込んで、本来なら酒を飲みながら打ち合わせしたい、古いタイプのプロデューサーも、昨今はファミレスのドリンクバーで、がまんしているのだ。
最低5杯は飲んで、なにかに勝利した気分になって、そのプロデューサーはいつも満足気に帰っていく。これが世の中の現実だ。
そういう意味では、みんなオナニーをするために、何千円も出してAVを買う金銭的な余裕はない。衣食住のほうが、はるかに大切だ。
ネット上には、無料で観られるエロ画像があふれている。無修正の裏DVDも、500円以下で手に入る。
そして、若者の性欲は、確実に減退しているらしい。これじゃ、どこにもAVなんて、売れる理由があるわけないのである。
だからこそ、AVメーカーとしては、最低限の努力として、売れる女優をキャスティングすることに徹するのだった。
それは、顔であり、ボディであり、中身はあまり関係ない。パッケージの写真さえよければ、売り上げが伸びたりする。
実際に、現場で撮影する俺たちにしてみれば、とにかく反応がよくて、エロい娘が最高。
しかし、金を出すAVメーカー側としては、中身は少々エロくなくても、売り上げの上がる娘が一番。資本家とクリエイターの永遠に埋まらぬミゾである。
だから、つねに人生は戦いである。
午後1時50分、俺が先に着いて席をとる。
脇では若い主婦たちが、パスタを食べながら、ダンナの悪口を言い合ってる。
少し遅れてプロデューサーの到着。
ニヤニヤとしたひさしぶりの笑顔。
去年の秋に撮った俺の作品が、思いのほか売れたらしい。理由は、やはり女優の人気。
所詮、ヤツらの気分は売り上げで変わる。
わかりやすく言うと、金次第ということだ。
今の俺のボッキの悩みなんて、まるでおかまいなしだ。そりゃあ、当然の話だ。
極端な話、俺だって、ぐにゃぐにゃの無ボッキ状態だったとしても、速やかに現金で、ギャラさえもらえれば、それでもOKだ。
やはり、世の中、金次第か?
俺は、モデルプロダクションから集めたAV女優のプロフィールを、テーブルの上に並べた。俺は、マネージャーから聞いた情報を、手短に伝えた。
どの娘がエロい、どの娘がイキやすい、どの娘が一番変態か。
しかし、このプロデューサーという立場にいる男の頭は、どの女が金になるかしか考えていない。他のことには、一切興味なし。
メーカーが利益を出すことは喜ばしいことではあるが、問題は、俺のボッキだ。
俺がボッキしやすい女であるかないかが、一番重要なのだ。心の中で叫びたい気持ちもあったが、日曜の午後のファミレスで、ボッキについて議論するのはカッコ悪すぎるので、今日のところは黙って引き上げることにした。
俺は、最後のコーラを飲み干して、店を出た。
帰りの電車の中で、俺は考えた。
俺にとって、ボッキしやすい女とは、どういう女だろう?
いろいろ考えたが、よくわからない。じゃあ反対に、ボッキしにくい女とは?
そのほうがカンタンだ。
まず絶対ダメなのが、プロっぽい女。現場なれしすぎてるとか、風俗をすべて制覇しただとか、SMでもスカトロでもなんでもできますよという、いわゆる初々しさのない女は、まったくボッキする可能性がない。
あと、大柄な女は絶対ダメ。身長165センチ以上だとまずムリ。美脚とか言ってスタイル抜群で手足が長い女もキライ。巨乳すぎるのも気持ち悪い。尻がデカイのも迷惑だ。
おまけに顔が可愛いコも苦手で、できればちょいブスのほうが安心してボッキする。
消去法でいくと、売れる要素のある娘は、ほとんどいなくなってしまう。
俺のボッキしやすい理想のタイプは、ずぶの素人で、小柄で、手足が短くて、貧乳で、顔はちょいブス。できればナマでヤラせてくれればなおよし。
う〜ん、これじゃ商品にならないなあ。
プロデューサーじゃなくても、首をひねってしまう。
AVという商品を作る以上、多少は見栄えよく作らなければならないのだが、なんともボッキ力のおとろえたベテランハメ撮り師には、見栄えのことなど気にする余裕などなく、まずは己が完全にボッキする理想の女をついつい追い求めてしまうのであった。
これが仕事でなければよかったんだけどね……。男の生理ってあるよね。
(続く)
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ゴールドマン 87年にアートビデオより「電撃バイブマン」で監督デビュー。その後、実験的な作品をリリースするなどAV業界に対して常に挑戦的な姿勢を持ち続ける。中でも89年に発表された60分ワンカットの8ミリビデオ作品「なま」は伝説級。近年はハメ撮りでの言わせ系淫語で独自の世界を展開。20年間で約1500人の女とハメ撮りし、300本以上のハメ撮り作品を制作してきたAV業界の巨頭。
10.08.15更新 |
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