『ビデオコレクション』
1985年6月号/東京ニュース通信社
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『ビデオコレクション』における青山正明
前回マクロに見ていくと書いたが、その前に『ビデオコレクション』誌での連載について触れておく方がよい気がしてきたので、それについて書いておく(映画入門ではなく、あくまで青山正明における映画の話なので、作品解説などは適宜省略する)。
名前のとおりビデオ情報誌の『ビデオコレクション』は、1983年1月に創刊(1991年2月号で休刊)した東京ニュース通信社発行の月刊誌で、人気映画評論家の滝本誠が現在のスタイルを獲得した最初の舞台でもある。この雑誌の編集協力にはジャックポットの名前がある。覚えているだろうか、大正堂のあとに青山が短期間在籍した編集プロダクションである。まだ在籍前だが、この頃から映画に詳しいライターとして、青山とジャックポットは付き合いがあったのではないだろうか。
『ビデオコレクション』誌で青山は、本名の大塚雅美名義で「My Favorite Movie」というビデオ紹介コラムを執筆していた。今回確認したのは1985年6月号以降。ゾンビ映画のオリジネーター、ジョージ・A・ロメロ関連のビデオが多くリリースされていた時期だからだろう、6月号では「ロメロ・ホラーは、コミック・ブックの醍醐味だ!」として、『ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド ゾンビの誕生』『ザ・クレイジーズ 細菌兵器の恐怖』『マーティン 呪われた吸血少年』の3本を推薦。7月号は未見。8月号でもロメロ制作による米国のホラー番組『フロム・ザ・ダークサイド』のVol.1と2を紹介している。9月号ではルチオ・フルチの『サンゲリア』と、以前触れた青山が解説を担当したビデオ3本を紹介……と、タイトルを並べれば判るとおり、『Hey!Buddy』誌とあまりかわりばえのないセレクトだった。
これではよくないと思ったのか、1985年10月号から形式が変わり、「WHO'S WHO ビデオソフト怪紳士録」と題した、監督や俳優などの人物紹介に連載がリニューアルされた。取り上げた人物を列挙すると、ジョージ・A・ロメロ、トム・サビーニ、ロブ・ボッティン、ジョン・カーペンター、ドナルド・プレザンス、バージェス・メレディス、フレディ・フランシス、ジャック・カーディフ、トッド・ブラウニング、アンジェロ・ロッシット、ベラ・ルゴシ、ボリス・カーロフ、ヴィンセント・プライス、バーバラ・スティール、スーザン・サランドン、デビッド・ボウイ、ナスターシャ・キンスキー、ロマン・ポランスキー、ウィリアム・キャッスル、ジャック・アーノルド、テレンス・フィッシャー、ピーター・カッシング、クリストファー・リー、クリストファー・ウォーケン(以上、1987年9月号まで)。
『ビデオコレクション』
1985年10月号/東京ニュース通信社
また、連載は本名だが、青山正明名義でも途中からポツポツと原稿を書いている。確認できるのは1986年7月号「虐殺の美学を追及する映像作家、D・アルジェント」、1986年9月号「エロ・グロ・典雅の混然一体がバーヴァの映像美学」、1987年4月号「未公開映画特集」のうち「ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド」評、1987年5月号「「死霊のはらわた」と双璧を成す80年代疾走ホラーの傑作」として「ゾンバイオ 死霊のしたたり」評などである。
雑誌全体を見ると、流石に当時流行していただけあって、ホラー/カルト映画のライターは青山以外にも何人もいて、決して青山が特別重宝されていたわけではないように見える。1986年5月号の「カルト・ムービー大百科」特集に名前は見当たらないし、1987年5月号のクローネンバーグの特集は久保田明氏が担当している。『Hey!Buddy』誌のように映画評で他にほとんどライバルのいない(高杉弾氏くらいか)雑誌では独占状態だったが、専門誌では流石に普通のコラムニスト扱いだ。とはいえ、他のビデオ雑誌にも多数原稿を書き散らしており、総体で見れば充分人気なのだけども。次回は『ビデオコレクション』『ビデオ・ザ・ワールド』以外の映画雑誌について見てみよう。
『ビデオコレクション』
1987年1月号/東京ニュース通信社
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【プロローグ】 【1】 【2】 【3】 【4】 【5 】 【6】 【7】 【8】 【本文註釈・参考文献】
1985年6月号/東京ニュース通信社
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『ビデオコレクション』における青山正明
前回マクロに見ていくと書いたが、その前に『ビデオコレクション』誌での連載について触れておく方がよい気がしてきたので、それについて書いておく(映画入門ではなく、あくまで青山正明における映画の話なので、作品解説などは適宜省略する)。
名前のとおりビデオ情報誌の『ビデオコレクション』は、1983年1月に創刊(1991年2月号で休刊)した東京ニュース通信社発行の月刊誌で、人気映画評論家の滝本誠が現在のスタイルを獲得した最初の舞台でもある。この雑誌の編集協力にはジャックポットの名前がある。覚えているだろうか、大正堂のあとに青山が短期間在籍した編集プロダクションである。まだ在籍前だが、この頃から映画に詳しいライターとして、青山とジャックポットは付き合いがあったのではないだろうか。
『ビデオコレクション』誌で青山は、本名の大塚雅美名義で「My Favorite Movie」というビデオ紹介コラムを執筆していた。今回確認したのは1985年6月号以降。ゾンビ映画のオリジネーター、ジョージ・A・ロメロ関連のビデオが多くリリースされていた時期だからだろう、6月号では「ロメロ・ホラーは、コミック・ブックの醍醐味だ!」として、『ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド ゾンビの誕生』『ザ・クレイジーズ 細菌兵器の恐怖』『マーティン 呪われた吸血少年』の3本を推薦。7月号は未見。8月号でもロメロ制作による米国のホラー番組『フロム・ザ・ダークサイド』のVol.1と2を紹介している。9月号ではルチオ・フルチの『サンゲリア』と、以前触れた青山が解説を担当したビデオ3本を紹介……と、タイトルを並べれば判るとおり、『Hey!Buddy』誌とあまりかわりばえのないセレクトだった。
これではよくないと思ったのか、1985年10月号から形式が変わり、「WHO'S WHO ビデオソフト怪紳士録」と題した、監督や俳優などの人物紹介に連載がリニューアルされた。取り上げた人物を列挙すると、ジョージ・A・ロメロ、トム・サビーニ、ロブ・ボッティン、ジョン・カーペンター、ドナルド・プレザンス、バージェス・メレディス、フレディ・フランシス、ジャック・カーディフ、トッド・ブラウニング、アンジェロ・ロッシット、ベラ・ルゴシ、ボリス・カーロフ、ヴィンセント・プライス、バーバラ・スティール、スーザン・サランドン、デビッド・ボウイ、ナスターシャ・キンスキー、ロマン・ポランスキー、ウィリアム・キャッスル、ジャック・アーノルド、テレンス・フィッシャー、ピーター・カッシング、クリストファー・リー、クリストファー・ウォーケン(以上、1987年9月号まで)。
『ビデオコレクション』
1985年10月号/東京ニュース通信社
また、連載は本名だが、青山正明名義でも途中からポツポツと原稿を書いている。確認できるのは1986年7月号「虐殺の美学を追及する映像作家、D・アルジェント」、1986年9月号「エロ・グロ・典雅の混然一体がバーヴァの映像美学」、1987年4月号「未公開映画特集」のうち「ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド」評、1987年5月号「「死霊のはらわた」と双璧を成す80年代疾走ホラーの傑作」として「ゾンバイオ 死霊のしたたり」評などである。
雑誌全体を見ると、流石に当時流行していただけあって、ホラー/カルト映画のライターは青山以外にも何人もいて、決して青山が特別重宝されていたわけではないように見える。1986年5月号の「カルト・ムービー大百科」特集に名前は見当たらないし、1987年5月号のクローネンバーグの特集は久保田明氏が担当している。『Hey!Buddy』誌のように映画評で他にほとんどライバルのいない(高杉弾氏くらいか)雑誌では独占状態だったが、専門誌では流石に普通のコラムニスト扱いだ。とはいえ、他のビデオ雑誌にも多数原稿を書き散らしており、総体で見れば充分人気なのだけども。次回は『ビデオコレクション』『ビデオ・ザ・ワールド』以外の映画雑誌について見てみよう。
(続く)
『ビデオコレクション』
1987年1月号/東京ニュース通信社
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ばるぼら ネッ
トワーカー。周辺文化研究家&古雑誌収集家。著書に『教科書には載らないニッポンのイ
ンターネットの歴史教科書』『ウェブアニメーション大百科』など。なんともいえないミ
ニコミを制作中。
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09.01.25更新 |
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