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ある編集者の遺した仕事とその光跡

天災編集者!
青山正明の世界 第1回


取材・構成・文=ばるぼら


21世紀を迎えてはや幾年、はたして僕たちは旧世紀よりも未来への準備が整っているだろうか。乱脈と積み上げられる情報の波を乗り切るために、かつてないほどの敬愛をもってばるぼら氏が書き下ろす21世紀の青山正明アーカイヴス、待望の新連載開始!
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青山正明が亡くなったのが2001年で、七回忌の2007年も何事もなく過ぎてしまった。もうそんなになるのかと驚いた人も多いだろうし、青山正明の名前をもはや知らない人もいるかもしれない。確かに、10万部を超えるベストセラーとなった、日本で初めての実用的なドラッグ・マニュアル『危ない薬』が出たのは1992年だし、彼が編集長を務め、鬼畜・悪趣味ブームを巻き起こしたアングラ雑誌『危ない1号』の最初の号が出たのも1995年で、どちらも既に10年以上前のことになる。彼の話題を見なくなって久しいが、それも当然かもしれない。

しかし青山正明はロリコン、カルトムービー、ドラッグ、鬼畜、悪趣味など、80年代以降のアングラ文化の現場には必ずいた名編集者として、ある種の人間に対してトラウマに近い多大な影響を与えた人物である。ところが、どうにも、彼の業績は一向にまとめられる気配がない。そろそろ簡単にでも形にしないと、資料は散逸し、関係者の記憶もおぼろげになって、正しい20世紀の記録を残せないのではないかという、不安と危機感が混じりあった妙な感情を日に日に覚えるようになった。

その過程で、青山正明と鬼畜・悪趣味を安直に結びつける風潮も更新されるべきだと思っている。彼がそれらと切っても切り離せない関係にあるのは確かだが、彼が同じように愛した音楽や、ポルノグラフィや、カルトムービーや、精神世界や、書籍・雑誌への愛着などは、これまでそれほど多くは語られていないように感じる。我々は青山正明を知っているようで、何も知らない。

とは言っても別にしめっぽい想い出を語りたいわけではなく、良識的な視点から偉そうに断罪したいわけでもない。あくまで青山正明が好きだったハッピーなあれこれに注釈をつけていきたいだけだ。この連載は、彼が日本の文化に及ぼした少なくない影響を思いだすための覚書であり、彼を知らずに育った人への手引きであり、また21世紀を乗り切るための切符である。

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『危ない薬』
初版1992年11月15日/データハウス

『危ない薬』
青山正明の初の単行本は「全て作者体験済み!」の帯コピーが強烈なドラッグ解説本だった。内容は合法・非合法に限らず、様々なドラッグの種別と効用、注意点に使用法、ドラッグの歴史解説等を中心としたもので、累計10万部を突破したベストセラーとなった。70年代から80年代前半にかけての日本では、「マリファナは煙草より安全だ」として、マリファナ解放を叫ぶヒッピー出自のニューエイジな人々が盛んに活動を続けており、その軌跡は『マリファナ・ナウ』『マリファナX』をはじめとする関連書籍で追うことが出来るが、その影響を青山氏も少なからず受けているように思う。

『危ない1号 第4巻:青山正明全仕事』
初版1999年9月20日/データハウス

青山氏が編集していた雑誌『危ない1号』の第4巻は、80年代から90年代中頃までエロ本で続けていた連載「フレッシュ・ペーパー」の原稿を中心にまとめたもので、青山正明の実質的な2冊目の単行本になっている。内容はロリコン、悪趣味、ホラー映画、辺境音楽、ドラッグ、精神世界まで幅広く、ある意味まとまりに欠けるが、青山正明の趣味の変遷、幅広い知識を覗える。特別書き下ろしとして『危ない薬』以降のドラッグ事情や、音楽ガイドとブックガイドを収録。音楽の方は解説があるものの、書籍については書名の羅列のみなのが惜しい。90年代はこの本を読みながら終わった。


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man.gif ばるぼら ネットワーカー。周辺文化研究家&古雑誌収集家。著書に『教科書には載らないニッポンのインターネットの歴史教科書』『ウェブアニメーション大百科』など。なんともいえないミニコミを制作中。

「www.jarchive.org」 http://www.jarchive.org/

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08.03.23更新 | WEBスナイパー  >  天災編集者! 青山正明の世界