毎週日曜日更新! あの日“アイツ”を追いかけた 全ての女子たちへ! 「腐った遺伝子」 第15回 文=早川舞 ←仲良しのM男くんがなぜか今になって、もう何年前なのか私にもよくわからない(たぶん6〜7年前)雑誌のグラビアの写真を送ってきてくれました。結構前に廃刊になってしまった『カルメン』という女王様専門誌なのですが、私は自分のグラビアを手元に置かない主義だったので(照れくさいから←ここも自意識過剰)、自分ではすっかり忘れていました。しかしこうやってみると顔というか、表情が幼い。たぶん摂食障害初期〜中期にかけての写真ですね。このあとに嘔吐地獄がお前を待ちかまえているんだよと教えてあげたい。あと歯並びが悪い。いや、今も悪いままなんですが、今まで食費にかけた分があれば、確実に矯正ぐらいはできたと思われ……。あー、仮定法過去で物事を考えると凹むのでやめます。 |
↑もう1枚送ってきてくれたのが同じくカルメンで書いたこちら。言葉責めについていったい何を書いたのかまったく覚えていません。ただ、当時ちょうど韓国への取材旅行から帰ってきた直後ぐらいで、韓国の女性が妙に強そうだったので、それに感動したということを書いたのだけは覚えています。言葉責めと全然関係ないし。安藤さん(編集長)元気かなぁ。
あ、話は変わりますが、最近よくこの連載を読んでますと声をかけていただけるんですが、最近ゲロの話ばっかりでほんとすいません。
(前回からの続きです)
私の人生の転換期、というか開き直れた時期は、やはりちょうど3軒目の病院に行った後だったと思います。きっと何か憑き物が落ちたのでしょう。
あとで知ったんですが、ちょうど大殺界も抜けていました(笑)。
私はあまりスピリチュアルなことは信じすぎるたちではありませんが(多少は信じる)、やはり気持ちが変わると引き寄せるものも変わるのかもしれません。
その後『ダカーポ(マガジンハウス)』という雑誌の編集長さんにお会いする機会があり、SMをやっていたことやその当時のSMについて思うことを話したところ、「では、現在のSM文化についてルポを書いてみないか」と、当時まだ駆け出しも同然の若輩ライターだった私に(今もですけど)、12ページもの特集ページを任せて下さいました。
そのルポのインタビューで朝霧リエさんと知り合い、お話を伺ったことでSMへの興味が再燃して、朝霧さんがプロデューサーをおつとめになるラ・シオラに所属させていただくことに。
そのうち、本場ヨーロッパで生活なっていた朝霧さんや、フィンランドから来ていたダダ女王様との交流や、ヨーロッパSMを感じさせる有形・無形のあれこれに触れたことで自分自身もヨーロッパのSMに興味を持つようになりました。
だってなんかRPGっぽかったから(特にウィザードリィとかD&Dとか古き良きな感じのやつ)。責め具とか、飛び交う淫靡な外国語とか(←これは妄想)ファンタジーを感じさせるレザーやラバーなどの衣装とか。
あぁ、求めていた世界観をやっと見つけた! っていう感じですよ。
自分を好みの形の枠にはめて、その自分を動かすSMという思想を身につけて、今度はついに背景を見つけることができたんです。
やっと3次元化できたといったところ(笑)、いや、ついに生身の人間になれたとでもいうべきでしょうか。
私は、夢と現実の狭間を漂っていた自意識だけが過剰なふわふわした存在から、やっと立派に人間になれたのでした(←「立派な」人間かどうかはさておき)。
たぶん普通は、何も考えなくても最初から3次元だと思うんですけどね。
その後、取材がてらロンドン、ヘルシンキのフェティッシュイベントに遊びに行ったのちは、ベルギーで現地のM男性たちとセッションする幸運にも恵まれました。あ、念のため申し加えておきますが、全部自腹です。
↑ヨーロッパSM体験記は某エロマンガ誌でマンガにもしていただきました。漫画家さんにインタビューしていただいたときも、終始ウィザードリィがどうのこうの言っていたような気が……通じる方でよかった!
写真はフィンランドのイベントで簡単な緊縛を披露したときのもの。日本がテーマのイベントで、「日本っぽい格好で」とリクエストされたので安易に浴衣を着て行ったら、キッチリ着物を着こなしているフィンランド人女性がいたりして恥ずかしかった(笑)。
やおい本でハァハァしていたあのときから約15年。
当時は一輝の目線で氷河をいたぶっていたガイジン男子加虐妄想が、まさかこうやって現実になるとは、腐女子の一念岩をも砕く……と言いたいところですが、もちろん私の一念なんて大したもんじゃなくて、もう全面的に、貴重なチャンスを与えてくれた編集長さんや朝霧さんといった方々のおかげです。
お世話になった方々のお名前を列挙していったら、それだけでこの記事が終わってしまいそうなので割愛させていただきますが、皆様本当にありがとうございます。
あと個人的には、これらの経験を通して英語が喋れるようになったのが大きかった。っていってもまだまだ全然ヘタクソですが、仕事で使うこともあるしなぁ。
ビジネス的な丁寧さが求められるわけじゃなければ、ですが。受験生時代なんて全っ然比べものにならないぐらいの勢いで勉強しましたよ。
もう1回英語だけ大学受験したいぐらいの気分です。
やっぱり語学は目的があってこそ身に付くものなんだなぁとつくづく思いました。
↑英語を使えるようになってよかったのは英語のSNSができるようになったこと(写真のMySpaceは最近日本語対応になりましたが)。向こうで知り合った人たちとのやりとりがラクだし、近況がわかったりもするので助かってます。あと、英語でプロフィールを書いておいたら世界各国の女王様やM男や変態たちからメッセージが届いたりして、それもまぁおいしいっちゃおいしい。
こうして私の摂食障害は、いつの間にかなくなっていきました……なんてまとまりのよい終わらせ方をしたいものですが、残念ながら今も治っていません。
とはいえ、どんなときにお腹が空くのか、どんなときに吐きたくなるのかなど、自分の体のペースを把握することでだいぶ回数は減りましたが、それでもまだ、例えばお酒に酔って満腹中枢がおかしくなった(としか思えない)ときや、どうしようもなくストレスが溜まったときに吐いたりします。
そもそもは自分の肉体に、自分なりの完璧さを求めるところから発生しているものなので(そう考えるとボディビルダーと似ている……)、ヘタしたら一生続いてもおかしくはないのかもしれません。
あぁ、でも今はもう、抱えていくことに開き直っちゃったから、生きていることがすっごいラク……。
私はM男性と呼ばれる人たちを始め、変態に対して、自分に危害が及ばない限りは寛容というか、むしろ好きなのですが、それは、こうした「共存していくしかないどうしようもないもの」を抱えて生きているから好きなのだと思います。
ここでひとまず現在に至る早河舞の成り立ちは終了です。
さて、最後のほうは終始ゲロ話だったとは言え、何だかマジメな路線で終わってしまいましたが、次回からは本領発揮と言いますか、腐腐(くさくさ)した記事をガツガツ書いていこうと思います!
(続く)
早川舞 世界、特にヨーロッパのフェティッシュ・カルチャー関係者との交流も深い、元SM女王様フリーライター。だが取材&執筆はエロはもとよりサブカルからお笑い、健康関係まで幅広く?こなす。SMの女王様で構成されたフェミ系女権ラウドロックバンド「SEXLESS」ではボーカルとパフォーマンスを担当。 現在、フェティッシュ・ミックス・バー「ピンク・クリスタル」に毎週木曜出勤。
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08.01.20更新 |
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