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残酷なお友達 4

「マア、ホホホ……奴隷ってやっぱり辛い目にあうのね。前に勤めていた会社へ連れて行かれてお便所掃除? うちへは来なかったわね」
「最初に勤めた会社が近かったんですね。お詫び奉公と言いますが、競売に掛けられて売られて、調教監獄の外で使役される時に備えた訓練の一つですから、関係先全部を回るわけではありません」
「この浅ましい奴隷姿で晒し者になるのも辛いでしょうけど、ブラシを口に咥えて、汚い水を飲みながら便器のお掃除をさせられるなんてイヤねえ。自分のオシッコも飲まされたんだって?」
「ハ、ハイ……私が粗相をしたのですから仕方ないのですが……」
「マア、人間の基準で綺麗だの汚いだのということは、奴隷には許されないことです。野良犬やカラスは生ゴミを漁るわけですし、ネコは自分のお尻を舐めますよね。だいたい、小便というのは排泄直後は雑菌も混じっていないし、飲むと健康にいいという研究結果があるそうです」
「そうそう、一時、飲尿健康法とかあったわよね。私は絶対イヤだけど」
「奴隷には、自分が洩らしたオシッコのほかにも、看守の小便を飲ませたりもするそうです。もちろん、どんなことでも命令には従うという服従心を養うための調教ですが、健康法も兼ねているってことですかね」
「ホッホッホ、マア、イヤだ。お前も看守さんのオシッコ飲んだの?」
「ハ、ハイ……何度か飲まされ……イエ、飲ませて頂きました……アア……」
「ギャハハハ、嫌だわ汚い。そんなことまでさせられたの? それってコップに取って? それともジカに?」
「S子さん! 何を考えてるの? お下品ね。フフフ」
「だって、ちょっと想像しちゃったんだもの。アハハハハ」
「ハハハ、女性看守が牡奴隷に飲ませる時はどうするんでしょうね」
「キャー、キャー! Hさんで、スケベー」
「ハハハ、冗談は別にして、奴隷って苛酷な扱いをされているようですが、考えようでは、早寝早起きの実に規則的な生活で、食物(餌)は、家庭から出る生ゴミを魚の骨や野菜の皮まで粉砕して栄養剤を加えた物で栄養バランスは完璧(ひどい臭いはしますが)。酒、タバコはもちろん、糖分の取り過ぎもなく、毎日シッカリ運動するわけで(鞭でぶたれながらですが)、考えようではこの上なく健康的な暮らしなのです。 そのせいでしょうか、奴隷にされた直後は牡牝ともにヤセ細りますが、牝奴隷はじきに回復して、結構豊満でしかも贅肉のない、いい体になっていくそうです。一方牡はダメで、衰弱したままになる奴が多いということです。奴隷は、一般人以上に寿命の牡牝差が出そうだと言われています」
「牝はどんな環境にも順応出来るといういうことかしら。女は逞しいのよね」
「牝奴隷は長生き出来るんだって、お前、よかったわね。いつまでもこうして鎖に繋がれて、鞭でぶたれながら生きていけるのよ」
「アア、そんなひどい……アッ、いいえ、お許しください。どうぞお慈悲を!」
「M枝さん、Mすずさん、二人とも近ごろ少しブヨってきたわよ。奴隷にしてもらってシェイプアップしたほうがいいんじゃない?」
「アーラ、S子さんこそ、毎夜のご乱行でずいぶんお肌が荒れて、むくんでるわよ。一度奴隷に志願して、健康的なお暮らしをなさったほうがいいと思うけど」
「そうよ、私たちが太ったのは幸せ太リなのよ。でも、確かにくみ子さん、昔よりスマートになったわね。ねえHさん、一カ月だけ奴隷にしてもらってダイエットする、なんてコースはないの?」
「美容院じゃあるまいし、そんなコースなんてあるわけないじゃないの、Mすずさん」
「ハハハ、そうですね。有期奴隷の最短期間は10年です。奴隷の調教には結構手間も費用もかかるので、そのくらい勤めてもらわないと引き合わないんですね」
「10年はちょっと長すぎるわね」
「マジなの? Mすずさんは困った人ね。そんなに奴隷の気分を味わいたいんなら、Hさんに頼んで、くみ子さんの手錠や鎖の予備を貸してもらって付けてみたら?」
「アッ、それやってみたい。くみ子さん、ちょっとあなたのお道具貸してね」
「ハ、ハイ。お心のままに……」
「ハハハ、マア、お貸ししますけど、外部の人には内緒ですよ」
「それから、上はいいけどパンティ脱ぐのはイヤよ。口に咥える、何ていうの? あれ、よく洗ってね。手錠はあんまりきつく締めないで。鞭もソッとよ。恥ずかしい格好は刺激的だけど、痛いのはイヤなのよ」
「注文の多い奴隷ね。まあ、手錠嵌めて嵌口具咥えさせてしまえば、パンティ脱がすのも簡単だけど」
「イヤン、そんなことしないでね。お願いだから」
「奴隷は、お慈悲ですから、というものよ」

30分後、バンティ1枚で後ろ手錠、首輪を付け、口に嵌口具を咥えたMすずさんを、皆キャアキャア笑いながら鎖で引き回し鞭で追い立て、Mすずさんはウットリとお腰をくねらせて……皆様には、ただの刺激的なお遊びですが、私には毎日させられている惨めなお扱いです。身の置き所のない私の気持などお構いなしに、残酷な昔のお友達のパーティーは夜更けまでエッチに盛り上がるのでした。

奴隷公示

さらに私を残酷に辱める処置がありました。まず、分際鞭を頂戴して泣き喚いた私の前に、調教官様がお立ちになりました。もちろん、床に額をすり付けて平伏します。頭の上からお声が聞こえます。

「牝奴9703号! お前の奴隷公示の日と場所が決まった。いわゆる『奴隷の晒し』だ。お前だって見たことくらいはあるだろう。○月○日、場所はお前の本籍地・M市だ。親をはじめ親類縁者や幼馴染みが大勢集まってタップリ笑ってくださるだろう。思い切り恥を晒して来い」

棍棒でなぐられたようなショックでした。奴隷刑の宣告を受けたときから、奴隷公示されることは判っていたはずですが、とうとうあの浅ましい『奴隷晒し』にかけられるのです。それも、故郷のM市で……。

中学生のとき、学校の社会見学で、地方では珍しい奴隷公示を先生に引率されて見ました。公示にかけられたのは、大勢の幼い女子児童を刃物で刺し殺した若い男。奴隷として当然マッパダカにされ、厳重に手錠を嵌められ、回転する腕木に首輪を吊られて、高い晒し台の上をグルグル歩かされていました。奴隷は畜生なのだから、性器丸出しが当然だと教わっていても、パンツも穿いていない股間に、根元を鉄輪で締められた男性器がブラリと下がっているのは、思春期の少女には刺激が強すぎる眺めでした。

「ヒエー、チ○ポにまで鍵掛けられちゃうんだ」

男子が小声で言うのが聞こえて、彼が見ていたのと同じところをジッと見ていた自分に気付いて、顔が真っ赤になったことを覚えています。若い女の身で、私があの姿にされるのです。

“奴隷刑は、死刑に代わる極刑として制定された刑罰なのだから、奴隷は、それこそ死んだほうがまし、と思うほどの辛い思いをしなければならない。それが罪の報いである”という考え方から、奴隷の扱いは、ことさらに残酷で屈辱的なのです。その一端としてこの奴隷公示があり、私が人格を剥奪されて奴隷に堕ちたことを広く知らせる役割を果たします。万が一私が逃亡を考えても、親戚知人全員が私を奴隷だと知っていて、どこにも頼る先がないようにしておくのです。だから奴隷公示は、新聞テレビなどで大きく報道されると同時に、「犯罪防止協会」から関係者に通知され、奴隷の親兄弟はもとより親戚知人まで、「市民の義務」として奴隷公示に立ち会い、晒される奴隷を笑い辱めて、親戚友人として付き合いはおろか、もう人間として扱わないという意思表示をするのです。

また、“奴隷を笑い辱めるのは市民の義務である”この考え方から、学校でも教育の一環として、生徒に奴隷公示を見学させるのです。

その夜は、鎖に繋がれた真っ暗な檻の中で一晩中泣き明かしました。両親姉弟、そして昔の私を知っている友達や近所の人の前に、このマッパダカで首輪や鼻環を付けられ、体に奴隷番号を烙印された姿で曳き出される。皆がどんな目で私を見るのでしょうか。父母や姉弟はどんな思いをするでしようか。そう思うと、気が狂いそうになりますが、私の気持ちには何の関係もなく、私を晒しにかける準備が進められていきます。

私の身柄はS市へ汽車で送ると言い渡されました。晒し台などの器材はトラックで送るのですから、私を一緒に積んで行けば簡単なはずですが、私の浅ましい姿を大勢の人に見せるのが目的ですから、わざわざ汽車で送るのです。当日、分際鞭を頂戴した後、餌は与えられず逆に浣腸を掛けられて、皆が見ている前で、お腹じゅうの物を噴き出させられました。輸送中は当然用便などさせて頂けないのです。

長時間塀の外を輸送されるのですから、拘束具や施錠の点検は格別に厳重でした。後ろ手に固く手錠を嵌められ、首輪に短く吊られて、両手は全く動かなくなりました。鎖褌を平生より一段階きつく締め上げられて、食い込む膣リングと肛門栓に嵌口具の中で呻きました。

首輪の前後に、私の旧人間名、本籍地、罪名及び終身奴隷刑に処す旨を記載した、裁判所の宣告文が吊されました。足首は30センチほどしかない鎖で繋がれ、そして股間に歩行矯正具が吊られます。無数に針が生えた鉄球で、針には刺されば激痛が走る疼膚剤が塗られていますから、これを股間に吊られて曳かれる奴隷は、針が内股に触れないように、思い切り股を広げて歩かなければなりません。

この姿で奴隷監獄の外へ曳き出されたときの気持ち! 道を行く人が皆立ち止まって、私の浅ましい姿をジロジロ見ます。悔めさ、恥ずかしさ、苦しさ。でも、鼻環の鎖を曳かれれば足を止めることも出来ず、私は、大きく股を広げてヨタヨタと、惨めな奴隷歩きを披露したのです。

死ぬ思いで駅まで歩いた私は、懐かしい故郷行きの列車に乗せられました。去年の今頃、新調の服に身を包み、両親や友達に会える楽しみで胸を膨らませながら乗った汽車です。今の私は、乳房も牝性器もムキ出しのマルハダカで、両手は後ろ手に厳しく手錠を嵌められ、首輪と鼻環、そしてハダカの肌に惨めな奴隷番号を焼き付けられた浅ましい姿で、死ぬより辛い恥を晒しに故郷へ向かうのです。

本当に悪い夢を見ているとしか思えません。呆然としていた私は、「ビシッ」とハダカのお尻に督促の鞭を頂き、慌ててデッキの隅の繋奴スペースの床に正座しました。首輪を壁に繋がれ、鼻環の鎖が高く吊られて、顔が惨めに上を向き、腰を浮かせます。

「フフフ、立てば楽になるんだろうが、そうはさせんぞ」

護送の看守様に床の金具と股鎖を短く繋がれ、立ちもならず、座ることも出来ない残酷な姿勢にされます。

この姿勢で三時間の旅をさせられるのです。奴隷はどんな時でも苦役を勤めさせられる。絶望に目の前が暗くなりました。汽車が動きだして、苦痛は倍加しました。中腰の不安定な姿勢です。揺れるたびに鼻環を吊られる辛さに、私は嵌口具の中で泣き喚きました。必死に体を支える太腿も腰も、すでに感覚がなくなっています。

人間だった頃なら、もうとっくに倒れているでしよう。でも今の私には、倒れることさえ許されないのです。泣こうが喚こうが、無慈悲な奴隷戒具に強制される苦しい姿勢を、血の涙を流しながらでもとり続けるほかないのです。嵌口具の中でヒイヒイと呻き泣きながら、私は奴隷の身の辛さ苦しさを骨の髄まで味わっていました。

女の人が私の前に立ちました。上品そうな初老の婦人です。私は必死に哀願しました。

「お願いです。せめてとの鼻環の鎖だけでも緩めてください。もう死んでしまいます。どうかお慈悲を」

でも、嵌口具を咥えた私の口から出たのは、ただ「ウーウー」という獣のような呻き声だけでした。

「お前が丸矢くみ子だね。今、お前が輸送されているって車内放送があったんだよ。新聞で見たけど、お前は梨ケ崎女子高校の出身だそうじゃないか。私は先輩なんだよ。よくも学校の名誉を汚してくれたね」

パシーッ!

平手打ちが私の頬に鳴りました。確かに私は、悪いことをしたのだと思います。でも、ここまで苦しめられ、辱められるなんて……全身のこわばる苦痛以上に、頬を叩かれた痛みが身にしみました。

苦しみ抜いた三時間余りの旅の末にM駅に着いた私は、大勢の見物人の嘲笑とカメラのフラッシュを浴びながら、今夜留置される警察まで、浅ましい姿でヨチヨチと歩いたのです。

後ろ手錠も外されずに留置所の鉄格子の中へ追い込まれ、足伽まで嵌められました。婦警さんが鼻をつまみながら持ってきた奴隷食を、器に顔を突っ込んでガツガツとすすります。若い女奴隷がハダカで繋がれているのです。警察中の職員が物珍しそうに檻の外から覗きます。一晩中消されない留置室の灯りの下で、私は恥ずかしい姿を晒し続けました。

最初は死ぬほど恐ろしかった奴隷監獄の檻の暗闇を、今の私は心から望んでいたのです。

(続く)





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「女囚くみ子」第二部
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浜不二夫
異端の作家。インテリジェンス+イマジネーション+ユーモアで描く羞美の世界は甘く、厳しく、エロティック。
「 悪者に捕らわれた女性は、白馬の騎士に助けてもらえますが、罪を償う女囚は誰にも助けてもらえません。刑罰として自由を奪われ、羞恥心が許されない女性の絶望と屈辱を描きたかったのです。死刑の代わりに奴隷刑を採用した社会も書いてみたいのですが――」
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