The ABLEFE October 2009
窮屈な毎日に縛られて気持ち悪くならないためのゆるやかな処方箋
黒い恥毛の奥深く、まばゆい女陰から迸る黄金色のオシッコを百薬の長と崇める稀代のネクタール(神の酒=おしっこ)愛飲作家が、自由闊達、繊細至極、奇々怪々、博覧強記の知性に加えて、百花繚乱の体験談を交えて読者諸兄からの質問・相談に答える新連載。内容・ジャンルは自由。ネクタール+言葉の免疫で、貴方が今を生きるためのヨスガを紡ぎます。
Consultation of life to drink delicious urine. For boys and girls.
第2回の受付案件
5、「美食家――最後の晩餐」
6、「女性器の臭いが苦手」
7、「スカトロの美」
8、「書くこと」
5、「美食家――最後の晩餐」
先生の文章を読んでいて、女性の描き方の繊細さや遊び方の粋なところから「この人は絶対に美食家に違いない!」と思っています。芳野先生なら最後の晩餐に何を食べますか?(匿名希望 公務員)
誰でも死にます。
死ぬけど、それが、いつ死ぬのかわからない。
わからないから、最後の晩餐がいつなのかもわからない。
開高健の「最後の晩餐」(文春文庫)には人間嗜食をとりあげています。
山頭火が死んだ夜は、草庵で句会が開かれていたのですが、同人たちは、山頭火がまた酔っていつものように眠っていたと思っていたようです。死んだことに気がつかない。
そうすると、山頭火の最後の晩餐は、酒だったのに違いない。そう思う。
なんたって、酔生夢死の一生だから、はじめからきまっている。
酔うてはこほろぎと寝ていたよ
山頭火
私の美食は酒です。
毎日、セッセセッセ飲んでおります。ハイ。
6、「女性器の臭いが苦手」
女性器の臭いが苦手です。そのためにクンニリングスを避けてしまい、セックスの時の雰囲気が悪くなったり、間がもたなくなったりすることがあります。無味無臭の人と出会ったこともありますが、今の彼女は間違いなく臭いがきつい部類です。愛しているのに、その臭いを嗅ぐと萎えてしまいます。何かいい乗り越え方はないでしょうか。(I・F 会社員)
――臭いとか臭くないとかというようなことは愛にはありえない。そう思う。
それは愛していると思っているだけである。
彼女は、野性味あふれた、すばらい芳香美人に違いない。
オレニナメサセロ!
「菊いただき」という美しい言葉がある。
男が彼女のオマタに顔をこすりつけ、懸命に舐め舐めすると、男の顔に、マアマア、彼女の芳陰のあとがくっきりと、菊の花のように咲くからである。
この「菊いただき」こそ、江戸時代の男にとっては、究極の愛情表現であった。
女陰タトゥーだゾ。
ところが「誹風末摘花」に、その反対の不心中(誠意のないこと)の男の句がある。
こんにゃくでなめるは男不心中
というのである。
女から舐めろといわれ、いやいやこんにゃくを口にくわえ、舌のように見せて、花をつまんでお舐めしたわけ。
こんな不心中な男になるなよな。
こんにゃくってさ、男の舌になったり、女の芳陰になったりしてイソガシイ。
そんなこと知らないって、マア、イイカ。
7、「スカトロの美」
先生の影響で金子光晴を読み始め、スカトロの美というものについて考えています。いえ、スカトロとエロと言うべきかも知れません。私にはスカトロで興奮する趣味はなかったのですが、先生や金子光晴の描くスカトロジーには美を感じ、そこからエロまであと一歩という気が自分の中でしているのです。先生はあまりスカトロという言葉をつかわれないようなので、もし失礼だったら申し訳ありません。先生にとってのスカトロの魅力を教えて下さい。(鹿子 自営業)
――混沌としている性の世界に、ことばが、SとかMとかスカトロとか名前をつけました。
名前をつけることは、あっさりと性の世界を切って、その境をつくってしまったことですね。
しかしですよ、そう簡単に切れますか。
生死の境だって、簡単に決められていないでしょう。
それと同じで、SとかMとかスカトロとか、その境なんてありませんよ。
それに、人間はたえず変化しているのです。
若者も老人になる。
ですから、SとかMとかスカトロとか、いちいち区切らなくてもいいんじゃないですか。
すべてが人間的なんですから。
それだけ。
金子光晴は、詩の中では使えまいとされていた糞尿で、新しい詩美の世界を開拓したわけですね。
それでは、有名な「洗面器」の詩を鑑賞しましょう。
(――洗面器にまたがって広東の女たちは、嫖客の目の前で不浄をきよめ、しゃぼりしゃぼりとさびしい音をたてて尿(いばり)する)
洗面器のなかの
さびしい音よ
くれゆく岬(ダンジョン)の
雨の碇泊。
ゆれて、
傾いて、
疲れたころに
いつまでもはなれるひびきよ
人の生のつづくかぎり
耳よ、おぬしは聴くべし
洗面器のなかの
音のさびしさを。
『女たちへのエレジー』(講談社文芸文庫)より
著者=金子光晴 出版社=講談社 発売=1998年8月
著者=金子光晴 出版社=講談社 発売=1998年8月
詩美も、そのほかのすべての美も、すべて、そのひとの感性です。
8、書くこと
私は毎日インターネットで日記を書いています。知人からは「不特定多数の人に自分のプライバシーを明かして何が楽しいの?」と言われますが、書かないと不安になるんです。書くことのプロである先生にとって、文章を書くことってどういうことですか?(M・M 学生)
私は日記を書いたことありません。
いたって筆不精です。スミマセン。
五十余年、小説エッセイを発表させていただいたのは、活字にして下さった多くの雑誌の編集長の方々のおかげだと感謝しています。
それに、やはり、ファンの方々ですね。
私の小説を雑誌から切り抜き、まとめて一冊の本にして保存して下さっているファンにお会いしたときには、作家冥利でした。
それと、
「若い頃は、ヨシノさんの小説を読んでは、オナニーをしてました」
というファンに出会うたびに、最高のホメ言葉をいただいたと、有難うございますとお礼を申し上げました。
だから、五十余年も書いてこられたのでしょう。
すべて、皆さま方のおかげです。
だから、書く。
(つづく)
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芳野眉美 作家・ネクタール愛飲家。1952年、『奇譚クラブ』に高校3年生の時に書いた小説「孤独なFANTASY」が掲載され、デビュー。翌年2月号の「硝子便所」で評価が固まり、以後ネクタール(神の酒=おしっこ)を題材にした小説の元祖として多くのマニア読者に支持される。また「あぶいらいふ」での連載「芳野流神酒譚」で綴られたファンタジックなまでに刺激的な実体験は、数多のファンに衝撃を与えた。現在は『SMマニア』(マイウェイ出版)にて不定期に新作を発表している。