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新連載 続・常識ある大人の為の肉筆紙芝居
伝説の倒錯フィクション、待望の第二部へ!
酒気帯び運転で人身事故を起こした「くみ子」が体験する、恥辱の獄中生活。唇を噛み締めた身体検査、身も細る裁判、羞恥地獄の移送を経て、ついに女囚となった「くみ子」を待ち受けていた辛酸体験とは......。一組の男女の会話で綴る、異色の被虐イマジネーション紙芝居。秘蔵されていた第二部に突入!!
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【3】管理入浴と健康診断


何か隠していないかを調べる身体検査のほかにも、私たち女囚は、なにかにつけて女の羞恥心を残酷に踏みにじられる、意地の悪い屈辱的な扱いをされることがたくさんありました。たとえば入浴は、私たち女囚にとって数少ない楽しみのひとつでしたが、このお風呂の入り方だって、ひどく屈辱的なもので、最初のうちはほんとうに惨めな気持にさせられたものでした。房ごとに順番に、二十人くらいが一緒に入浴するのですが、まず石鹸などを入れた洗いおけをもって廊下に並びます。

次が自分たちという順番になると、脱衣所に入ります。当番の看守(センセイ)がいて「ピッ」と笛を吹いて、

「入浴準備!」

と命令します。私たちはそこで着ているものを全部脱いで素っ裸になり、自分たちの番を待っていなければならないのです。いくら女ばかりの部屋とはいっても、なにもかも丸出しの素っ裸で立っていなければならないということは、ほんとに恥ずかしく惨めなものでした。

前の組が上がってくると、また「ピッ!」笛の合図で浴室に入ります。

「前を洗いなさい」

命令されていっせいに下半身を洗い、浴槽の前に立ちます。かってに入ることは許されません。タオルは洗いおけの中に残しておきますから、ほんとうに前丸出しでキヲツケをしていなければならないのです。





「入りなさい」

また笛が鳴ってやっと湯舟に入れます。五分もたつとまた「ピッ」と笛が鳴って、立ち上がらなければなりません。

「出なさい!」

の号令で、またいっせいに足をあげて、湯舟のふちをまたぎます。長湯もからすの行水もない、すべて一斉行動なのです。笛の合図で二十人もの裸の女がいっせいに動くのは、仲間の女囚がやらされているのを見ていても、なんとも奇妙で猥褻な眺めでした。もちろん私だけ勝手な行動ができるわけもなく、私も、みんなと同じ前丸出しのスッパダカで、笛に追われて立ったりしゃがんだりさせられたのです。

このほか毎月一回、定期健康診断があります。健康診断そのものは、たいへん有難いことなのですが、そのやり方が......。結局私たち女囚は、人間らしい羞恥心を持つことなどは許されないのだということを身にしみて悟らされるのでした。

健康診断の日になると、私たち女囚は、全員広い体育館に集められます。そこで看守(センセイ)の残酷な命令が飛びます。

「ただいまから健康診断を行なう。着ているものを全部脱いで受診姿勢になって整列!」
「受診姿勢ったって、なんで下穿きまで脱がなきゃならないの?」

口の中でブツブツ文句を言いますが、逆らいようもなく、私たちは全員ズロースまで脱いで全裸になるのでした。

一糸纏わぬスッポンポンで受けさせられる体重測定と胸部レントゲン検査。中学や高校のころの身体検査とやることは同じですが、あのころは体操衣とブルマーは身に着けていました(お医者様の診察を受けるときだけは上半身裸になりましたが)。半分子供だったあのころでさえ、下まで脱がされはしなかったのに、ここでは、一人前の女たちが腰まで裸にされてやらされるのです。

それがすむとお医者さんの前に一列に並んで順番を待ちます。自分の番がくると、例の如くキヲツケの姿勢で称呼番号と名前を申告しなければなりません。

「八百六十五号、丸矢くみ子です! お願いしますッ」

前を隠すことも許されず、下腹の黒いものさえムキ出しの姿で、自分の名前や囚人番号を叫ばされるのは、何度やらされても惨めなものでした。思わず屈辱に声が震えます。裸のお尻でじかに座らされた診察用の丸椅子のレザーの冷たさが、お尻から頭の芯まで突き抜けます。

お医者さんは、お義理程度に聴診器をポンポンと胸とお腹と背中に当てると、「ウン」と、あごで後ろの診察台を指示します。そこで私たちは、素っ裸の姿でその黒いレザーの診察台に這いあがって、その上で四ツン這いになり、肛門からじかに便を採る[直接検便」を受けるのです。

下半身まで丸出しのマッパダカ。股間を覆うものがなにひとつない姿で台の上に四ツン這いになり、高々と宙に突きあげている女囚の大きなお尻の中心に、看護婦さんが、慣れた手つきで手荒にガラス棒を突っ込みます。

焼け火箸を突っ込まれたようなそのショックに、女たちの口から思わず 「ウウッ」と声が洩れます。みんなのほうへお尻を向けていれば、女の秘密の個所がなにもかも丸見えになるし、逆を向けば、羞恥の中心を貫かれるショックと屈辱にゆがむ顔がみんなの前に晒しものになります。

いずれにしても、私たち女囚は、囲いひとつない丸見えのなかで、思いっきり恥ずかしい思いをさせられるのでした。





「女にとって、パンツ一枚と一糸纏わぬスッポンポンでは、やっぱり恥ずかしさが違うものかね。お乳丸出しは一緒なんだが」

「そりゃ違うわよ。下まで見られちゃうってのは上半身を裸にされるのとはぜんぜん違った恥ずかしさだわ。刑務所の健康診断だって体重測定やレントゲン検査なんて、学校のときの身体検査とそんなに変わらないんだから、下着を着てたってできるはずなのに、どうしてパンツまで脱がせちゃうの?」

「罰を受けている女囚の身なんだから、恥ずかしい思いをするくらいはあたりまえだ、という囚人取り扱いの本音がポロリと顔をだしているんだね。どうせ、しょっちゅう全裸で身体検査されているんだし、検診の便宜上最初から素っ裸にしておけというわけだ。まあ表向きの理由は、大勢を短時間に検診する必要上やむを得ないというんだろうけど」

「だいたい、みんなの見ている前で、ノーズロで四ツン這いにさせるなんてひどすぎるわよ」

「団体生活だから、伝染病や寄生虫が怖い、というのはわかるがね」

「そんな恥ずかしい検査を、くみ子もやられているのね。みんなの見ている前でズロースをおろしてお尻にガラス捧を......。アアもうどうしよう」


【4】女囚と月経


私たち女の受刑経験者(いわゆる女の前科者)に刑務所での女囚暮らしのなかでつらい思いをしたことを挙げなさいと聞いたら、二番目以降はいろいろ(たとえば、全裸での身体検査、囲いのないトイレでの用便、あるいは家族との通信制限など)出ると思いますが、一番つらかったこととしては、ほとんど全員が「毎月の生理時の取り扱い」と答えると思います。

女子刑務所という所は、成人の女性ばかりが収容されているのですから、ごく一部の閉経した高齢者や妊娠中の女囚を除けば、全員毎月月経があるわけです。ただし、初めて逮捕され裁判を受けて刑務所に入った女囚は、最初の一、二カ月生理が止まるのが普通のようです。

早寝早起きで適当に体を動かす労働をさせられるのですから、肉体的にはシャバよりもよほど健康的な生活のはずなのですが、やはり、鉄格子の檻のなかに入れられて鍵をかけられ、外へ出るときには両手を固い手錠で縛られ、外から帰ってくれば、大勢の人が見ている前でパンツまで脱がされて、マッパダカの体を隅々まで検査されるという生活を生まれて初めて体験するわけで、その精神的なショックで生理が止まるのだと思われます。

私の場合も、逮捕留置、起訴勾留といった期間は生理がありませんでしたが、刑が確定して栃木刑務所に入所して一月あまりしてから、遅れていたメンスがとうとう始まりました。

困ったことには、まず何よりも私は生理用品を持たされていないのです。

私は途方にくれました。周りの女囚に聞き、死ぬ思いで看守さんに申告して生理用品の支給を受けたときの恥ずかしさ。しかもそれは、お股のところにゴムを貼った褌状の月経バンドという信じられないほど旧式なもので、おまけにそれさえ新品ではなく、お股のあたるゴムの周囲の布には、だれのものともわからぬ経血の跡が、洗っても落ちないシミになっている使い古しなのでした。

扉のないトイレで人目を気にしながら股間に脱脂綿を当てがい、(何故かタンポンは許可されないのだそうです。「女囚の分際じゃ、何によらずアソコにモノを入れちゃいけないってことさ」と古参の女囚が自嘲の苦笑いを口もとに浮かべて教えてくれました)月経帯を締めました。

冷たくヌメヌメした生ゴムがお股に当たる気色悪さ。動けばズレて洩れそうなので、思いっきり股布を締めあげなければなりません。だれともわからぬ他人のメンスで汚された使い古しだと思うと、ますます不潔感が増しますが、ほかにどうしようもないのです。





局部にあてがう脱脂綿(今どき吸収力も使用感もはるかにすぐれたナプキンがたくさんあるのに、これまた昔ながらの脱脂綿なのです)やチリ紙は、毎日決まった量しか支給されません。生理時の経血の量には個人差もあるし日によっても大きな差があるのに、多い日だからといって余分な支給を申請することもできませんし、ほかの人から分けてもらうことは厳禁なのです。


私は人より量が多いほうなので、三日目、四日目などはすぐに脱脂綿もチリ紙も使いきってしまい、夕方には、用をたしたあとそれまで使っていた物をもう一度当てがうほかないこともたびたびでした。自分のものとはいえ、生理の血で汚れた脱脂綿を局部に当てがわなければならないそのときの気色悪さ、惨めさは本当に鳥肌がたつほど情けないものでした。

さらに、その月経帯の上に穿く下穿きも、月経中であることを申告して月経期間専用のものを穿くのだといわれました。その申請書をみて私は呆れかえりました。何とそれは、「月経時用猿股貸与願」という代物だったのです。

刑務所の正式用語では下穿きは男女を問わず猿股と呼ぶのだそうです。貸与された下穿きは、猿股の名にふさわしい黒い木綿のブカブカズロースでした。月経期間中はこれを穿き、終わったら洗って返納することになっています。私が穿きおわったら次に月経の始まった女囚がそれを穿くのです。

洗って熱湯消毒するのですから不潔ではないにしても、生理時に穿くものだけに他人の使い古しというのはゾッとするほど嫌な気分ですが、私だけ特別扱いされるわけもありません。月経中でも朝の体操と乾布摩擦のときには、シャツ・ズロースの下着姿で運動場に出なければならないのです。

自分が月経期間中であることを示す黒いズロースを男の看守さんさえ見ている前で晒さなければならない恥ずかしさ、惨めさは何にたとえようもありませんでした。

鉄格子のなかに拘束される女囚の身として、出入りのたびに否応なしに受けさせられる身体検査は、生理期間中だからといって免除されるはずもありません。女囚の分際としては仕方がないことだとは思いますが、自分の身のこととして、帰房検査で月経バンドまで脱がされて一糸纏わぬマッパダカにされ、高々と足をあげて、横棒をまたぐカンカン踊りを踊らされたときには、本当に女に生まれたことを恨めしく思いました。

作業で使う刃物や針の員数が合わなかったり、タバコやマッチなどの禁制品が持ち込まれた疑いがあったりした場合は、生理中だからといっても何の遠慮会釈もなく、身につけていたものはズロースであろうと月経帯であろうとすべて取りあげられて中を検査されます。見ている前で汚れた脱脂綿の中まで探り回されるのは、本当に身を切られるようにつらく恥ずかしいものでした。

そしてその上に身体検査を命令されれば、床に両手をつき大きく足を開いて裸のお尻を天井に向けて突き出す、あの犬のような四ツン這いのポーズをとらなければならないのです。

私も、一年あまりの刑務所暮らしのなかで、何度か生理期間中にこの四ツン這い身体検査をやられたことがあります。作業工具の員数が合わず、

「裸身捜検!」

と命令がかかって膣の中まで検査されることになって、私は顔から血が引いていきました。

私は生理中なのです。しかし、そんなことを申し立てても取り合ってもらえないことは、いままでの仲間の女囚たちの例でよくわかっています。諦めて私は、月経中を示す黒いズロースと、そして最後の月経帯を脱ぐほかありませんでした。

身につけていた物をすべで検査のために提出させられ、一糸纏わぬ全裸の姿で、私たち女囚は例の手型足型のある場所へ連れていかれます。そして仲間の女囚たちのとらされている、見るも哀れなワンワン・スタイルを見ながら、私は気が遠くなる思いでした。

もうじき私も、あそこであれと同じ格好をさせられて、メンスで汚れた股間を広げて見せなければならないのです。

とうとう自分の番がきました。足を床の足型の上に置くと、1メートル以上も足を広げなければなりません。運悪く一番量の多い期間で、大きく脚を開くと肉体の奥の不安感が一層つのります。

「床に手をつけ!」

手型通りに両手をつくと、哀れな四ツン這いができあがります。

「ヒザを真っすぐ立てる!」

うしろに立った女看守の命令で、思いきり裸のお尻を天井に向けて突き上げさせられて......。さっき見ていた仲間の姿でわかります。私のアソコは、うしろに立つ看守たちの目に、お尻の穴から下腹部の黒い毛まで、そしてその間にあるあの女の性器のグロテスクで卑猥な形から、メラニンが多量に沈着した俗にドドメ色と呼ばれる色具合まで、隠しようもなく丸見えになっているのです。

それだけでも気が狂いそうな恥ずかしさなのに、いまの私のアソコは月に一度の女の生理で......。

「ウワッ、こいつメンスだよ」

検査のために近づいてきた女看守の無遠慮な大声が聞こえて私は目をつぶりました。

「アー、臭い臭い。厭だね本当に」

通気性のない生ゴムの月経帯のなかで、一日中ムレていたのです。自分自身でも気になっている臭気をあからさまにののしられて、自分たちだって同じ生理を持つ女なのにと、心の底から憎悪がわきます。耳をふさぎたい思いでもそれも叶わず、私は全身を固くして地獄の時間が早く過ぎるようにと祈るほかありませんでした。

「口を大きくあけていなさい」

犬のような四ツン這いの姿で、膣と肛門の力を抜くためにポッカリ口をあけて刑の執行を待たされます。そしてゴム手袋をはめた指が、口にも出せない場所に侵入して中を探るおぞましい感触に、私は歯をくいしばって呻きをこらえました。膣の中をかきまわされて調べられ、そして最後の仕上げに、太い指が一番うしろの用を足すための穴を乱暴に貫く苦痛に、私は思わず、

「アッ」

と声をだしていました。

「立て!」

と命令され、耳まで真っ赤になった顔をあげて立ち上がりキヲツケの姿勢をとります。

「何でこんな時にメンスになるんだよ。アー汚い」

ブツブツ言う女看守のゴム手袋の指に、ベッタリと私の生理の血がついているのを見て、私はもう一度顔が熱くなりました。

「お前が汚したんだよ。よく洗っておきな」

ゴム手袋を渡され、「もうしわけありません。どうも有難うございました」と屈辱のお礼まで言わされ、ようやく地獄の時間が終わるのでした。


(続く)
※「女囚くみ子」は、1990年代(監獄法廃止以前)に書かれた、浜不二夫氏によるSM創作物語です。一組の男女の会話から想起される獄中の描写、法律談義は、くみ子を責めるためのプレイトークとしてお楽しみ下さい。

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浜不二夫
異端の作家。インテリジェンス+イマジネーション+ユーモアで描く羞美の世界は甘く、厳しく、エロティック。
「 悪者に捕らわれた女性は、白馬の騎士に助けてもらえますが、罪を償う女囚は誰にも助けてもらえません。刑罰として自由を奪われ、羞恥心が許されない女性の絶望と屈辱を描きたかったのです。死刑の代わりに奴隷刑を採用した社会も書いてみたいのですが――」
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