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実の母親に人体改造を施され、生ける人形として極限まで「感覚」を削られていく女子高生の壮絶な体験。数十年に亘って自らを責め苛む工夫に情熱を注いできた実践派マゾヒストである著者が、イマジネーションの果てに辿り着いた自虐妄想のリミットとは。「私もこうされてみたい――」という激烈な思いで描かれた、他に類を見ないマニアック嗜虐フィクション! 
 
※この作品には残酷な描写が含まれており、閲覧時に不快な気分になる恐れがあります。グロテスクな描写が苦手な方や嫌悪感を感じる方は閲覧されないようご注意下さい。

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【4】衆人環視の晒し外出

■電車での移動

降りた場所からホームに行くには、とりあえず8人乗りのエレベーターを使って改札口に行き、再びエレベーターで降りるしかなかった。ユカとアヤカが麻紀にピッタリと寄り添うこともなく、傍からは麻紀が1人でエレベーターを待っている風にも見えた。

エレベーターには、麻紀ら3人の他に、女子高生が1人乗ってきた。狭い空間内で女子高生は、ヘッドギアを被った麻紀の顔を30センチの距離から見ることになり、声をあげそうになっているのが2人には分かった。

麻紀の顔に彫られた刺青と、半開きの口元から次々と溢れ出たよだれが下顎から何滴も流れ落ち、よだれ掛けの上に模様を作っている様子に、少女の視線は釘付けになっていた。

「あのー、よだれが……」

女子高生はハンカチを取り出し、麻紀の口元を拭いた。

「ご親切にありがとう……奇麗になって好かったわねぇー」

麻紀の口元がきれいだったのは、ほんの一瞬だけだった。数秒後には、口元からあふれ出たよだれが下顎から流れ落ちていった。

「よだれを拭けたらいいのだけど、自分では出来ないのね。それで、よだれ掛けをしているのよ。これなら安心でしょう」
「……」

ユカの説明にも、女子高生は無言で、麻紀の顔を見つめていた。

麻紀自身は、拘束されていなければ、残っている上腕部でよだれを拭うことは出来たのだが、上腕部にも革枷が嵌められ、体から離れないように胴体に繋がれて、よだれ掛けが必要な少女にさせられていたのだった。

女子高生は、麻紀が何の反応も示さないことに疑問を持った。

「ゴメンね、暴れて舌を噛んだりしないように、口の中に器具を入れてあるのよ。だから喋れないのよ」

確かに、白い何かが口の中に入っていることは、女子高生にも判った。

「そうなんですか」

気のない返事に、よだれ以上に刺青に関心がありそうなことがユカにも分かったが、次の質問に移る間もなくエレベーターが改札口の階に着き、ドアが開いた。

「さあ、着いたわよ、しっかり歩きましょうね」

女子高生が降り、ユカ、アヤカが降り、最後に麻紀が降りた。

麻紀はイヤホンから流れる指示どおり、ヨチヨチ歩きのまま改札口に向かって歩き始めた。自動改札口は通れないので、駅員のいる改札口を3人は通った。そこから、ホームへ降りるエレベーターまでは、10メートル程あった。

麻紀は1人で点字ブロックの上を歩かされた。歩行器の「ゴトッ、ゴトッ、ゴトッ」という車輪の音が周囲に響いた。よだれがひっきりなしによだれ掛けの上に落ち、歩行器を使って懸命にヨチヨチと歩く麻紀の姿は人目を引き何人も振り返らせたが、誰も声を掛けて来なかったし、近寄って手を差し伸べようともしなかった。

ホームに降りるエレベーターの前には、5人程の乗客が並んで待っていた。その中に、水田静江の顔もあった。麻紀の姿を見ると遠慮して誰も乗らず、結局は麻紀ら3人しか乗らなかった。

「うふふふっ、この姿では誰も近づかないわよねぇー」
「水田さんも、お嬢さんと一緒は嫌だったみたいですね」
「だって、このお顔でしょう。それによだれが服にでも付いたら嫌だもの。私だって仕事じゃなかったら遠慮するわ」
「ユカ先輩。よだれってどうして、一箇所に落ちないのでしょうね。こんなに広がって落ちるなんて、不思議じゃないですか」
「そんなこと知らないわよ……ますます酷いお顔になってきたわね」

ユカは、よだれで下顎をベトベトにしている麻紀の顔を見ながら言った。

水田静江が同じエレベーターに乗らなかったのは、よだれのせいではなく別の理由があった。

「凄い姿でしたよねー、初めて観ました」

エレベーター内で、静江は何か言いたそうな顔をしている他の乗客に水を向けた。

「一緒に乗って、よだれが着いたらいやだもの」
「私もあんな姿、初めて見ましたわ。お顔も酷かったですよねぇー」
「よだれ掛けなんて久しぶりに見たわ。あんなに大きな子供がよだれ掛けなんて、恥ずかしくないのかしらねぇ」
「恥ずかしそうな表情ではなかったなぁー」
「私だったら、自殺しちゃうかも」

口々に、麻紀の感想を言い始めた。

静江は、麻紀の醜い顔とよだれ掛け姿が、他の人の脳裏にしっかりと焼き付けられれば、それだけで満足だった。

麻紀の姿を見た人が、その体験を胸の内だけに仕舞っておくとは思えなかった。きっと、家族、友人、知人、同僚に喋り、話題にし、尾ひれを付け、酒の肴にすることが想像できた。

感情のない人形になったとしても、衝撃的な姿そのものが、水田麻紀を語っていることに、静江は言い知れぬ興奮をおぼえていた。

半開きの状態で固定された麻紀の口元からは、ひっきりなしによだれが流れだし、下唇から下顎、さらにはヘッドギアのベルトまでベトベトに濡らし、何本も糸を引いてそのままよだれ掛けに落ちていた。

麻紀のよだれ掛けは、幼児用のタオル地で作られた物とは違って、高分子吸収剤を挟み込んだものだった。早い話、紙オムツを広げた状態にしたものと同じだった。だから、麻紀がどんなによだれを流しても、たとえコップ1杯分を流したとしても、十分吸収出来た。指で触れば特殊なものと判ったが、触る人はいなかった。

麻紀の体が前に少しでも倒せたならば、よだれはそのまま地面に落ちていったはずだったが、歩行器に上半身が固定されているので、流れ出たよだれは全部よだれ掛けの上に落ちるようになっていた。

「麻紀ちゃん、ほら醜いお顔が自分で見られますよ」

エレベーター内には、麻紀の全身か映る大きな鏡があったが、視力がほとんどゼロの麻紀には何の役にも立たなかった。エレベーターのドアが開く前に、歩行器の点検をユカが行なった。

「あなたは立派な商品だから、事故が起きては大変なのよねぇ」

ユカはそう言いながら、全ての金具の接続状態を点検し、ロープが緩んでいないかを確認し、最後に猿轡のベルトを締めなおした。

「いいみたいね」

ホームに降りると、ホームの最後尾まで長い距離を歩かされた。歩幅が20センチにも満たない麻紀にとっては大変な運動だった。呼吸が乱れればさらによだれの量が増え、下顎全体がよだれでベトベトになっていたが、ユカもアヤカも拭こうとさえしなかった。その状態のまま、照明灯の鉄柱にユカは歩行器を繋ぎ、車輪にロックを掛けた。

そのとき、ユカの視界に水田静江の姿が映った。

「たまには、お散歩をしないとねぇ、麻紀ちゃん嬉しいでしょう」

麻紀には聞こえなかったが、周囲の人間には実感のこもった温かい言葉として伝わった。

電車が来てドアが開いた。麻紀1人では乗れず、駅員が踏み板を持ってきてホームと車両に渡した。アヤカが麻紀の背中を後ろから力一杯押すと、歩行器はスムーズに車内に入った。アヤカはそのまま車椅子専用のスペースに歩行器を誘導し、車輪にロックを掛けたが、それだけでは済まさなかった。麻紀の体が窓ガラスを背に、車内に向くように歩行器を回し、歩行器のパイプと手すりをロープで繋ぎ、さらに、ヘッドギアの上部にある金具も車両上部に作られた手すりとロープで繋いだ。

そこまでの作業が終了するのを待って、ドアが閉められた。

電車が動き始め、経験したことのない揺れによって、やっと麻紀は電車に乗っていることに気が付いた。視力も明暗程度しか分からないし、音もほとんど聞こえない状態の麻紀にとって、周囲の状況はよほどのことが起こらない限り分からなかった。しかも、誰一人として麻紀に教えてくれる人はいなかった。

後ろ姿を見れば、ヨチヨチ歩きの障害者でしかなかったが、正面に回れば、視線を釘付けにしてしまう顔の刺青と止め処もなく口元から流れ落ちるよだれが視界に入り、介助しようとする者の心を躊躇させた。麻紀自身、細かい説明を受けていなかった。ただ、指示通り歩けるように調教されていたのだった。

何線に乗って、どこに行こうとしているのか全く判らなかった。10分以上乗っていたことだけは確かだった。足の踏ん張りが利かない麻紀は、電車が揺れるたびによろめいたが、歩行器自体が固定されていたので、体全体は正面を向いたままだった。麻紀はオムツに何度もお漏らしをしていた。車内の騒音が排泄する音を消していたが、ユカもアヤカも匂いで気付いていた。

車内は学校帰りの学生や買い物帰りの主婦や老人が多く、立っている人も何人かいた。歩行器に乗せられ、よだれ掛けをした麻紀は好奇の視線を浴び、晒し者になっていたが、そうした空気さえ麻紀には伝わらなかった。

「こんな大きな子がよだれ掛けなんて、大変ですわねぇ」

水田静江が、初対面を装ってユカに話し掛けてきた。

「一人では何にもできませんので……下は、オムツなんですのよ」
「まあー、オムツもしているんですか」
「はい、もうだいぶお漏らしをしたみたいですけど」
「それでは、赤ちゃんと同じですわねぇ」
「はい、歩行器がないと歩けませんし……」

驚いたような表情をして、静江は麻紀の体の下から上までゆっくりと視線を走らせた。

「顔の黒いのは何かしら」
「自分で悪戯したみたいです」

さすがに、電車内で「刺青」という言葉を使うのははばかられ、ユカは、曖昧な言葉で濁した。

麻紀が降りた駅にはエレベーターがなかった。階段の手すりに沿って上り下りする昇降機が準備されるまで10分程待たされ、その間、麻紀は刺青の顔とよだれで下顎をベトベトにしながら、よだれ掛けの上によだれを流し続ける姿を何人もの乗客に見られた。

しかし、その中に水田静江の姿はなかった。静江は、麻紀が降りた電車の中でも、エレベーターのときと同じように、乗客の脳裏に麻紀の醜態を焼き付けようとしていた。

昇降機には歩行器ごと乗せられ、車輪がロックされ、動かないことが確認されると、階段に沿ってゆっくりと上っていった。

「いやー、車椅子は月に何回かありますが、歩行器のまま乗せるのは初めてです」

そう言いながら、駅員は奇妙な麻紀の上半身をチラチラ見ていた。

「すみませんねぇー、こんなお願いを聞いていただいて」
「いえ、仕事ですから」

改札を抜けると緩やかな下りのスロープになっていた。そしてスロープの先は国道につながっていて、ユミの運転する車が3人を待っていた。

(続く)

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Mみどり 「おばかな写真を公開しておりますが、すべてセルフで撮ったものです。キャミと猿轡と拘束が大好きですので、趣味が合うという方がおられましたら、一声掛けてください。『奇譚クラブ』に体験小説 (カットは、室井亜砂路さん)を発表したのが、私の出発点、いえ、プチ自慢です。昔の話ですけどね」(「スナイパーSNS」Mみどり自己紹介欄より抜粋)
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