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(C)2013 シネマ☆ インパクト 

WEB SNIPER Cinema Review!!
実践映画塾"シネマ☆インパクト"プロジェクト第3弾
2006年に上演された劇団ポツドールの三浦大輔による同名戯曲を、『モテキ』(2011)でブレイクした大根仁監督が映画化。部屋コンで知り合った男女9人が、本音と嘘、恋心と下心を交錯させ、"ゲスで! エロくて! DQN!!"な恋愛模様"を繰り広げる。

8月31日より、オーディトリウム渋谷にてロードショー他全国順次公開
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(C)2013 シネマ☆ インパクト

『モテキ』の監督、最・新・作! 原作、劇団ポツドール! 脚本やっぱりポツドール! やべー! しゃべー! 当てにきたー! ハイ!ハイハイ、ハイハイハイ!(セックスしようよ~) ところがまさかの低予算? なんと、撮影4日間? スタッフみなさん生徒さん? ワークショップで最新作!? 外してきたとこ、ニクいっしょ! あえてな感じ、ニクいっしょ~! ハイ!ハイハイ、ハイハイハイ! (しようよ~)

4つのワンルームを舞台として、そこに出入りする人間と携帯電話が繰り広げる、その場にいない人間への裏切りの生活。大根仁監督の最新作は、現役監督が講師となり応募者と映画を作り上げるというワークショップ、「シネマ☆インパクト」から生まれた一本だ。原作・脚本は劇団ポツドールの主宰、三浦大輔。『モテキ』の主人公が「提供:ヴィレッジヴァンガード」なら、本作の登場人物たちは「提供:ドンキホーテ」。『モテキ』が自意識の活火山でみせるなら、本作は内面への疑問ゼロメートル地帯の地層調査でみせていく。
出てくるのは同年代の男5人に女4人。彼らは4つのワンルームマンションにそれぞれ、同棲、ルームシェア、1人暮らしをしつつ、各々の部屋を行き交い、携帯の呼び出しを無視したり、メールの差出人をとぼけたりして暮らしている。みな二十代、童貞はいないが、しかしセックス・チャンスへの優劣は歴然と存在する......。

(C)2013 シネマ☆ インパクト 

映画の最初の場面は、もてない奴に彼女を紹介するというネタイベントなのだが、そこで登場するのがぶっちぎりにチャラい、ホスト系の男。こいつの「ふーわっ! ふーわっ!」というコール的な盛り上がりが、早速場の雰囲気をぶちこわす。観ていてイライラしてくるのと同期して、劇中の見るからに怖いオラオラ系の男のイラつきも急上昇。でこのオラオラ系男子がキレて大惨事になるのかと思いきや、キレないのだ。っていうか、こいつは最後まで直接本人に「お前ムカつく」とすら言わないのである。この映画に出てくる、オラオラ系もそれに準ずる、メンズエッギー、ナッキンな面々も、Jジェイティブな女も、みんな実は社会性があって、義務教育を受けた感じがあって、それは教養じゃなくて、空気の義務教育を卒業してる。だから、相手に対してかける言葉は『モテキ』とは正反対、全部正解の言葉しか言わないんだけど、その代わりどこにも真実がない。同時に、その場にいない人間がいつも軽んじられたり、裏切られたりして、砂漠っぽい人間関係が浮かび上がってくる。

(C)2013 シネマ☆ インパクト

一応スートリーらしきものを紹介すれば、サトミはナオキの浮気を疑ってる。コウジはトモコにイラついてる。タカシはカオリに片思い。それが、ああなってこうなって、うわーそんなこと普通しますかみたいなこともあって、しかし本質的な部分は最後まで変わらないという。空気の義務教育を修了したという自負、これこそが内面への疑問を抱かない人間の特徴なのだろうか。

おもしろかったのが、ウチとソトの感覚で、オラオラ系男なんかは彼女と2人きりになって言うことと、他人がその場にいるときに言うことが全く違う。本作の『モテキ』的立ち位置のメガネ男にしてからが、つきあいだすと急に今までとは態度が豹変。彼女へのエゴの噴出が始まるのだが、これぞまさにトラディショナル日本あるある! 本作はまったく接点がないと思っていた彼らと自分の間をつなぐ、隠れた地下水脈をあぶりしていくのだ。
などと重厚に語ってみましたが、本作はコメディなんで、乳首責めギャグ、ヤリチン卒論ギャグなどそのレベルは高い! DV気味の叱責を受ける彼女がいつしか、謝罪記者会見みたいになってるのもアホで最高!とこれを伝えられれば十分なのではないか!

(C)2013 シネマ☆ インパクト 

そしてもうひとつ、このまったく真心のない映画のなかで、唯一心の救いになるのが、冒頭のチャラ男と、そいつを居候させてやっている同郷の友達の間の友情でした。そこで一瞬燃え立つブロマンスの炎がよかったし、このチャラ男をみてると中国で最近バカにされているというサブカルチャー、「殺馬特」を思い出す(参考記事:http://kinbricksnow.com/archives/51847782.html)。主流になれずに失敗していて、バカにされてるのに、それに気づきもしない。彼は一番マヌケなんだけど、友達になる甲斐があるのはこいつだよ! これからはもう、ホスト系チャラ男を見ても前ほど嫌じゃない! 飛行機の中で突然コールを始められても、「もうやだ、降りる、飛び降りる!」と言わずに済むかもしれない。チャラ男への苦手意識をなくしてくれた『恋の渦』に感謝です! というわけで今回も冒頭で彼のノリを真似しみたんですが、どうでしたか!? うざかった? ナシだった? もしかしーて、サムかった!? つづいて、ふーわっ!ふーわっ! 当日、ふーわっ、ふーわっ! 上映後のトークショーの模様をお伝えしたいのだが、初日は監督と全出演者が登場。数々の裏話に花が咲き、オラオラ系を演じた新倉健太の胸には(映画には映らないが)『侍』と刺青が入っていたり、最初の全員集合しての部屋コンシーンは30テイク以上も繰り返されたことなどが明かされていました。出演者みんな仲良さそうでうらやましい! 『恋の渦』、今のところDVD化の予定はないそうです。

(C)2013 シネマ☆ インパクト

文=ターHELL穴トミヤ

部屋コンに集まった男女9人。イケてないオサムに、
カノジョを紹介するのが、今夜の隠れテーマだった――。





『恋の渦』
8月31日より、オーディトリウム渋谷にてロードショー他全国順次公開

(C)2013 シネマ☆ インパクト 

監督=大根仁
原作・脚本=三浦大輔(ポツドール)
制作=山本政志
出演=新倉健太、若井尚子、柴田千紘、後藤ユウミ、松澤匠

配給=シネマ☆インパクト
宣伝=スポッテッドプロダクションズ
2013年|カラー|HD|138分|日本

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「恋の渦』公式サイト

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ターHELL 穴トミヤ  ライター。マイノリティー・リポーター。ヒーマニスト。PARTYでPARTY中に新聞を出してしまう「フロアー新聞」編集部を主催(1人)。他にミニコミ「気刊ソーサー」を制作しつつヒーマニティー溢れる毎日を送っている。
http://sites.google.com/site/tahellanatomiya/
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