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(C)2017 Twentieth Century Fox

WEB SNIPER Cinema Review!!
サンダンス発世界が熱狂!喝采!感涙!
掃き溜めのような地元ニュージャージーで、呑んだくれの元ロック歌手だった母と車椅子の祖母と3人暮らしをしているパティ。23歳の彼女は、憧れのラップで名声を手に入れて地元を出ることを夢みていた......。

4月27日(金)より、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国ロードショー
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(C)2017 Twentieth Century Fox

本作の最大の問題点は、主人公パティ・ケイクスの作る曲がダサいことだと思うんだよな。いまどきサンプルを連打(パ、パ、パ、パティ、ケイクスみたいな)する曲とかあるのかよ!?「私は実家暮らし、分かっているわよ負け犬女」みたいなラップ内容も、エミネム『8 Mile』(カーティス・ハンソン監督)を子供向けにシュガー・コーティングしたようにしか聴こえない! それより、男グセが悪いお母さん(ブリジット・エヴァレット)がバーで警官バンドと一緒に歌う、リタ・フォードの「Kiss Me Deadly」のスーサイドっぽいカバーのほうが心に響いてくる......。さらに、地元のクソさにうんざりしたパティが、クソボロい車に乗ったときに流れて来る、ジェファーソン・エアプレインの「The Time that Never Was」のほうが魂を溶かしてくるじゃないですか......。または私の音楽趣味がおっさん化しているだけなんですか......。

(C)2017 Twentieth Century Fox

主人公パティ・ケイクス(ダニエル・マクドナルド)は、アメリカのクソ田舎に住む23歳の白人女性。彼女は「ダンボ」というあだ名で馬鹿にされ、バーでバイトをしながら実家で暮らしている。携帯にかかってくるのは、未払い医療費の督促ばかり。母親(ブリジット・エヴァレット)は呑んだくれで、ばあちゃん(キャシー・モリアーティ)は関節を痛めて車椅子。かなりどん詰まっている人生ではあったが、彼女には夢がある。ラップで成り上がるのだ。
とはいえ特に展望もない。ドラッグストアで働く友達に会いに行けば、店内でラップをしてアジア系の店員に注意され、街角のサイファーに参加すれば、対戦相手に頭突きをかまされて鼻血を出す。そんなある日、彼女は、高速デジタルビートにのせてギターをかき鳴らす、内気な黒人青年(キャシー・モリアーティ)に出会った。やがて二人は仲良くなり、秘密のスタジオでセッションを迎える瞬間がやってくる。しかし片やギャングスタ・ラップ、片やゴス系デジタル・ハードコア、その音楽性のギャップを、この映画どうやって埋めていくのか!? と注目したら単純に「曲のピッチは半分にしてね」と、スイッチをいじって解決していた。そこにラップが乗って、ついに無敵のヒップホップバンドが誕生する!

(C)2017 Twentieth Century Fox

というわけで彼女らの挑戦が始まっていくのだけれど、『ハッスル&フロウ』(クレイグ・ブリュワー監督)などの黒人成り上がりものが描く恐怖が逮捕やギャングの襲撃だとすれば、本作が描くのは医療費による破産だというのが渋い。家族への愛と、愛ゆえに自分が破滅においこまれる恐怖。それこそが、本作の選んだ白人貧困層におけるリアルなのだ。
主人公パティは、夢と家族のためダブル・ワークで稼ぎだす。それでも一度は彼女の心が折れてしまう瞬間、それはバイト中に書き溜めているラップを、客のジジイによって勝手に読み上げられてしまったとき、というのが意地悪ながら、いかにもクソ田舎でよかった。「あたしはキラーP まじでやばい ビッチな女......」みたい内容を、いつの間にかカラオケマイクで朗読してるジジイ。そいつがよりにもよって全く似合っていないドレッドヘアのラスタかぶれ白人という微妙さが、ますます自分の人生のショボさへの悲しみをさそうのだ。

(C)2017 Twentieth Century Fox

監督は本作がデビュー作となるジェレミー・ギャスパー。ネオン・カラーが効果的に使われた画面は、ニコラス・レフン監督の『ドライヴ』にはじまり、アカデミー賞を受賞した『ムーンライト』や、ライアン・ゴズリングが監督した『ロスト・リバー』、ターHELL 穴トミヤ2017年Best10に入る『グッド・タイム』にいたるまで、2010年代の映画に特徴的なスタイルだ。また音の繋ぎ方も変わっていて、音楽から急に静かになったり、逆に急に曲が入ってきたり、酩酊感がありおもしろかった。

(C)2017 Twentieth Century Fox

っつーわけで本作 惜しいのは音楽
そこにない感覚 腰にクるカクカク
でも避けたいよ悶着 ですね。そこは置いとく
魚屋の地下で セッション
そこはおもしろい 演出
そういや銀座の地下に中華料理
帝里加 テイクアウトいっとく?
劇場でなぜか定食 匂いで意識混濁
上映にメシを持ち込む それはマナー違反言っとく
医療費高い マジでやばい!皆保険 ありがたい!
ラップで稼ぐ行数? 違う違う!とにかく
夢を持とうでっかく!
ではたのしもうゴールデンウィ~ク!
¥ay!¥ay!¥ay!

(C)2017 Twentieth Century Fox

文=ターHELL穴トミ¥ay

場末のバーから、荒んだストリートから、オリジナル楽曲で
魂をノックアウトする、最高に"ドープ"な音楽映画の傑作、誕生!


『パティ・ケイク$』
4月27日(金)より、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国ロードショー

(C)2017 Twentieth Century Fox
原題=『PATTI CAKE$』
監督・脚本・オリジナル音楽=ジェレミー・ジャスパー
出演=ダニエル・マクドナルド、ブリジット・エバレット、シッダルタ・ダナンジェイ、ママドゥ・アティエ、ワス・スティーブンスサー・ンガウジャ、MCライト、キャシー・モリアーティ
提供=フォックス・サーチライト・ピクチャーズ
配給・宣伝=カルチャヴィル×GEM Partners

2017年│アメリカ│109分│カラー│シネスコ│5.1chデジタル│PG12│字幕翻訳:田村紀子

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ターHELL 穴トミヤ  ライター。マイノリティー・リポーター。ヒーマニスト。PARTYでPARTY中に新聞を出してしまう「フロアー新聞」編集部を主催(1人)。他にミニコミ「気刊ソーサー」を制作しつつヒーマニティー溢れる毎日を送っている。
http://sites.google.com/site/tahellanatomiya/
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