WEB SNIPER Cinema Review!!
『第7鉱区』ハ・ジウォン&『空気人形』ペ・ドゥナが共演!!
スター選手ヒョン・ジョンファ(ハ・ジウォン)の活躍により空前の卓球ブームが巻き起こった韓国。しかし、強豪・中国を倒すことができない。そんな折、日本で開催される世界選手権を前に韓国と北朝鮮が史上初の南北統一チームを結成。北朝鮮代表のカリスマ選手リ・プニ(ペ・ドゥナ)も交え、南北の選手たちは合同練習を始めるが――。オーディトリウム渋谷(5/17金まで)、Garden Theater in 虎ノ門四丁目(新館)にて公開中、5/25~千葉劇場にて公開 他、全国順次公開!!
マッシュルームカットのペ・ドゥナ(『空気人形』『アトラス』)は北朝鮮選手! 90年代っぽいカット(シースルーバングといって韓国で今流行っているらしい)のハ・ジウォン(『第7鉱区』『TSUNAMI -ツナミ-』)は韓国選手! 2人は世界選手権でぶつかるたびに火花を散らしあうライバル同士。しかし結局どちらが勝っても、最後は中国に負けてしまうセヨ~! 中国は「万里の長城」と呼ばれ、卓球界で不敗を誇っているのだセヨ~! ヒュンデポンガルチョジョセヨ~(携帯教えてくださいという意味)。
ところが1991年に開かれた第41回世界卓球選手権大会。そこに南北両政府はついに朝鮮統一チームで出場することを決定したのだ! その会場は、千葉。
というわけで「最強の敵を前にして、宿命のライバル同士が手を取り合う」という、いきなり最終回間近の大詰めスポ根展開っぽい状況から始まってしまう本作。しかし手を取り合ったのは両国政府というのがミソで、両国チームはバリバリ打ち解けてなかった! 合同チーム発足によって一瞬でコーチに格下げされてしまった韓国チームの監督(どことなく佐藤二朗に似ている)は、まだ道化役っぽさもあっていいとしても、選手同士は出会った瞬間から一触即発。そもそも、選手数が倍になるということは、出場できる確率が半分に減るということ、もう相手は自分のポジションを奪いに来たライバルにしか見えていない。
さらに、両国は敵国同士。そこに加えて北朝鮮選手団にはなぜか、「みなさんをお守りするためにやってまいりました」という集団が随行しており、韓国人選手団まで監視対象になってしまう。
初顔合わせに際して、韓国は「俺らなんたって自由主義陣営、GDPが違います」という余裕を感じさせる、学園ドラマ的なノリを押し出してくる。対する北朝鮮チームは、ホテルのチェックイン時から整列待機! 移動は駆け足! ギャグが通じるような雰囲気では全くなく、ペ・ドゥナとハ・ジウォンもさっそく険悪ムード。挙げ句の果てにはチームメイトを呼び捨てする韓国人選手に(なんとその選手の名前はイルソン!)、「神聖なる『イルソン』のあとには様をつけろ! 殺すぞ!」とマジ切れする北朝鮮男子まで出る始末。
そんな分断チームが果たして打ち解けられるのか、というのが当面の見どころになるんですが、イルソンマジ切れの「全体主義系男子」に「男らしい!」と惚れちゃうチェ・ユニュンの恋が38度線を超えちゃうセヨ~!
コッソリ屋上に呼び出され、チェ・ユニュンに言い寄られる全体主義系男子。まさにハニートラップ!?という状況なんですが、若い2人はいい感じになり、それをきっかけに両陣営も急速に距離を縮めていく。そして立ちはだかる中国チーム! この中国チームのブス具合がすごい。さらに、嫌みったらしさが半端じゃない。当時の実際の試合映像を観てみると、どっちかというと中国人選手のほうがかわいい気もしないではないんだけど、そこは演出でしょう! ええ、いいと思いますよ!
ところがついに決勝まですすんだところで、最大のピンチ! まさかの身内、北朝鮮監視団から茶々が入るんですね。ここで韓国チーム、抗議の地面に正座が炸裂する!(突然の豪雨付き)彼らは一体どうなってしまうのか!?って帰国するワケないんですが、修学旅行で夜騒いでいるのを見つかってしまい、廊下で座らされた記憶がよみがえりましたね。これこそ、アジア圏のみそぎっていうんでしょうか。
そしてやっと最終決戦に突入するんですが、ここからがまた長い。これでもかの韓国映画、テムジン川の河原に波が打ち寄せるように、危機が次々と襲ってきます。ここで北朝鮮選手のルーキー(ハン・イェリ)の成長が描かれていくのがよかった!(ブスなところがまたいい! かえって応援したくなる!)。
暑苦しいまでのスポ根映画、それでも分かっていながらほろっと来ちゃうのはこの裏にある南北分断がいまでも続いている事実だから。同じく、民族が分断されていた東西ベルリンは89年に統一を果たしました。そしてそのあと、『グッバイ・レーニン』『ゾンネンアレー』(日本未公開)など「旧東ベルリン」あるある映画がいくつも公開された。本作も実は結構、北朝鮮あるあるネタが使われていて笑えるんですが、でも、こちらの分断はまだ続いていますからね。そのギャグで笑ったあとは、生き別れが待っている。彼らが、実際その後会うことは2度となかったということが映画の最後で明かされますが(いやまだこれから分からないですけど)、そのときに、心のつながりを言葉を介さないで示すさりげない演出が、この映画には加えられている。いやーほろっと来ちゃいました。早く、南北朝鮮が統一する日がきて、全体主義系男子がオタ芸とかで盛り上がる日がくるといいよね!
文=ターHELL穴トミヤ
世界卓球選手権大会を前に結成された実在の南北統一チーム
「コリア」の46日間の軌跡
『ハナ~奇跡の46日間』
オーディトリウム渋谷(5/17金まで)、Garden Theater in 虎ノ門四丁目(新館)にて公開中、5/25~千葉劇場にて公開 他、全国順次公開!!
関連リンク
映画『ハナ~奇跡の46日間』公式サイト
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