WEB SNIPER Cinema Review!!
世界を挑発する無敵のガールズムービー!
つまらない日常に飽き飽きしている女子大生4人組が、刺激を求めて春休みのフロリダ旅行を計画。レストラン強盗で手に入れた資金で計画を実現させると、旅先でエイリアンと名乗る男(ジェームズ・フランコ)と邂逅。徐々にダーク社会へと引き込まれていく――。『ガンモ』『KEN PARK ケン パーク』のハーモニー・コリン監督が放つ異色青春ドラマ。シネマライズ他、全国上映中!
ハーモニー・コリンといえば、ヴィンセント・ギャロ、ソフィア・コッポラなどと並ぶ、オシャレ☆キッズ御用達の監督。今回もスケボー片手にいい匂いの男女が大量にやってくるのは間違いナシなのだが、しかしボンクラのみんなも待ってほしい。本作、ビキニの女子大生4人組が主人公なうえに、オッパイがたくさん出て来てしまうのだ! それでも「いや、私はオッパイとかはちょっと......。アンドレイ・タルコフスキーとかそういうのが好きなので......」という映画マニアの人もいるだろう。しかし待ってほしい! 「カイエ・デュ・シネマ」2013年3月号の表紙は本作『スプリング・ブレイカーズ』なのだ! そして音楽はスクリレックス! オシャレ野郎もボンクラもビッチもシネフィルも音楽ファンも、みんな映画館に大集合だぜ! 水着オッパイもゆれゆれで、アガるしかない! OiOiOi~!
と観る前は前のめりになっていた本作、いざ始まってそのストーリーを追っていくと、意外なほどに真っ当な流れ。出てくる人間たちはみなあるべきところに収まっていって、もはや鎮静効果すらある、保守的な映画なのでした。
題名となった「スプリング・ブレイカーズ」というのは、米国で春休みにはっちゃける学生たちのこと。ビーチへ繰り出し、パーティーを楽しみ、ハメを外して、思い出づくり......。それにあこがれる4人の女子大生を、アシュレイ・ベンソン、セレーナ・ゴメス、ヴァネッサ・ハジェンズ、そしてハーモニー・コリンの妻でもあるレイチェル・コリンがそれぞれ「水着で」演じています。
映画の冒頭、彼女たちは田舎の大学寮暮らし。「こんなつまらない街、ぜったい抜け出すから!」などとお決まりの台詞をはいているんですが、先立つ金がない。しかしそこはナニして、ビーチへと繰り出すことに成功します。そしてキター! パーティー on the ビーチ!となったあとハメを外しすぎてさっそく逮捕。短すぎた「スプリング・ブレイク」の夢は、一気にさめてしまったのでした。で本来なら終わるところ、そんな彼女たちを見るからにアブないドレッドの白人が救い出してくれる。なんと彼は全員分の保釈金を支払ってくれていた! でも、その目的が分からないわけです。このあたりから映画に暗雲が立ちこめ始め、やがて男に深入りするかしないかで、4人の間には亀裂が生じはじめます。。
このジェームス・フランコ演じる、前歯が総銀歯の男が乗ってる車。これがまたダさすぎて最高ですね。ホイール4輪とも真っ赤な$マーク! 彼はこのパーティー・アイランドですべてを手に入れたハスラー、永遠のスプリング・ブレイカーズとして登場してくるんですが、そんな彼がプールサイドで白いピアノを弾く。ブリトニー・スピアーズの『エヴリタイム』を熱唱して、その歌詞がこれまたダサい、しかも音痴なのがすばらしい。
この映画、実は映ってるものが全部ショボいんですね。ハーモニー・コリン×スクリレックス、ブチアゲー!って思いますけど、よく考えたら車に乗って、カーステからスクリレックス流れて来たらダサいですよ。繰り広げられている大学生のパーティーも、冷静に考えたら最悪で、あげく騒音でふみこんできた警察に捕まっちゃうんだから、何から何までイタい田舎の若者でしかない。
それはこのハスラーも例外じゃなくて、出てきた瞬間こそ正体不明でめちゃくちゃ怖いこの男が、映画が進むにつれどんどん坊やになっていく。自分が手に入れた香水、手裏剣、銃器なんかを「これも、これも、これも、みんな俺のだぜ~!」と無邪気に自慢して喜びを爆発させる。そんな彼の前からやがて女の子たちが、1抜け、2抜けしていきます。こいつが保釈金を払ったのって、もしかしてただ単に友達が欲しかったからナンジャネーノ!?という衝撃的な気づきを前にして、ここはヤンキー風にいえば「気合いが入ってない」奴から順に抜けていってるわけです。逆に言うと、真っ当に育っている人は、やっぱり正しい判断をして、去っていくというだけの話でしかない。
ビールを漏斗で飲んで、マリファナ吸いまくって、コカインの女体盛りをして、EDMで大フィーバーという本作ですが、実はなにをやっても寂しい奴は寂しいままという映画なんですね。このハスラーをみてると『ジュリアン』『ケン パーク』のころから変わらない。そこにいるのは、いつものハーモニー・コリン映画の登場人物、両親がいない家の奥で寂しそうにしている、ほっぺたにそばかすのある白人のキッズでした。そんな彼に果たしてつきあってくれる奴はいるのかよ!という、見た目の派手さとは反対にけっこうトホホな展開が、この映画の後半を形作っていきます。
それにしても、敵対組織のストリップクラブにいったときに一瞬映る黒人のストリッパー、彼女の入れ乳感はすごかった。最初に出てくる、ビーチパーティーでのあの健康的なパイ乙シーンもなかなか。女体にビールをかけまくる、このとき当然オッパイはハイスピード撮影のスローモーション揺れです。ケツ! オッパイ! 蛍光ビキニが、頭から離れない! 本作を観れば、「あー! イビザに行って、乱痴気パーティーしたい!」という欲望がひとつ追体験できて、そしてどうでもいいのかもと思えてくる。最近レンタルが始まったもうひとつのEDM映画、こちらはハウスパーティーを描いた『PROJECT X』(ニマ・ヌリザデ監督)とあわせて、この梅雨を盛り上げるにはぴったりの1本なんじゃないでしょうか。
というか、まずは女の子を「『スプリング・ブレイカーズ』観に行こうよ!」と誘うわけですよ。そして観終わってから「おもしろかったねー」と言いつつ「あっそうだ!(ピンときた顔)似たような映画が、最近レンタル始まったんだよ、一緒に観ようよ『PROJECT X』!」と自宅にいざなうわけですよ! そしてセックス・ブレイカーズですよ! これできまりだOiOiOi~! 梅雨のじめじめぶっ飛び、オレの脳内スプリング・ブレイクぶちあげ~! 「『スプリング・ブレイカーズ』ごっこしない?」とか言って、水着プレイもできちゃう!? かもしれない!? 股間が梅雨だくで~す! あとは誘う女の子を見つけるだけなんですが、そういうのってグーグル検索でなんとかなりますか。
文=ターHELL穴トミヤ
春休みに犯罪に手を染めた女子大生4人組の
過激な青春を描くクライムドラマ
『スプリング・ブレイカーズ』
シネマライズ他、全国上映中!
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