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(C) 2015 Focus Features LLC, and Shedding Distribution, LLC.

WEB SNIPER Cinema Review!!
遺伝子操作で作り出した肉体に天才的頭脳を転送!
「NYを創った男」と称えられる建築家のダミアン(ベン・キングズレー)は、ガンのため余命半年と宣告される。そんな彼に科学者のオルブライト(マシュー・グード)が持ち掛けたのは、遺伝子操作で作り出した肉体にダミアンの頭脳を転送するという耳を疑う提案をだった――。驚愕のSFアクション・エンターテインメント!!

9月1日(木)より、TOHOシネマズ シャンテ他全国ロードショー!
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主人公はベン・キングスレー演ずる、NYを牛耳る不動産王。彼が暮らす家の、新興宗教の宮殿みたいな、金装飾ギラギラ、住んでるだけで視力が落ちてきそうな内装がすごいのだが、なんとこれトランプタワーなのだという。絶対セットだと思ったのに、実在してるなんて......。ということはもちろん、本作のエゴイスティックで年老いた主人公も、モデルはドナルド・トランプにちがいない。そう思うとこの映画は、「果たしてトランプの魂は、救うことができるのか」というNY版「蜘蛛の糸」にみえてくる。

冒頭、自分の地位を脅かす若手をサクッと潰したベン・キングスレー。末期ガンにより余命半年を告げられていた彼は、疎遠の娘(ミシェル・ドッカリー)と和解しようとするが、またもや喧嘩別れとなってしまう。死を受け入れられない彼は、やがて謎の科学者(マシュー・グード)が提供する、新しい人体への乗り換えサービスを受けることを決意する。
この人体乗り換えは秘密施設の中にある、CTスキャンが2台並んでいるみたいなマシーンによって行なわれる。そこに入ったベン・キングスレーが目を覚ました時の、一人称視点が面白かった。意識を失った彼が、ぱっと目をさますと、先ほどと同じ天井が見える。失敗か、失敗だな、とひとりごちつつ、名前を聞かれて答えると、技師がなぜか微笑む。自分の手を見るとなにかおかしい。そして横を見ると、自分が横たわっているのだ。自分の身体を、他人として見ること。今の我々には見ることのできない光景ながら、でもやがてこの視点がやってくるだろうな、という不思議な予感に満ちたシーンだった。

(C) 2015 Focus Features LLC, and Shedding Distribution, LLC.

映画の主人公はベン・キングスレーから、ライアン・レイノルズへと変わり、若返った不動産王による第二の人生がはじまる。ストリートバスケで汗を流したり、美女と久々のセックスを楽しんだり、当初は順風満帆に思えた新生活だったが、ある日強烈な幻覚を見てしまったところから全てが狂いだす。このライアン・レイノルズ、元は歳のいってるベン・キングスレーだった割に、ITリテラシーが高い。グーグル検索やwikipediaを使いこなして、あっという間にその幻覚で見た景色を探し当ててしまう展開が新しい。いかに秘密結社といえども、わずがなヒントから「特定しました!」されてしまう、げに恐ろしきは現代ネット社会かなである。このせいで主人公は追われる身となり、若い女性(ナタリー・マルティネス)とその娘を巻き込んで、逃亡劇が始まる。
ライアン・レイノルズになった主人公は、なぜか危機になると体が勝手に反応して相手を半殺しにしてしまう特殊アビリティを獲得していた。このアクションシーンが、流れるように相手の骨を折ったりしつつ、それに自分でもびっくりしているのが楽しい。最もよかったのは火炎放射器で、なんか炎が射手を起点としてブワーッと広がる感じがイイよね。やったるぜ感みたいのもあるし、武器としてのアホさを再確認しつつ、パーティームービー『プロジェクトX』(トッド・フォリップス監督)以来、久々に火炎放射器で大爆笑させてもらった。

そんな本作における最大の違和感は「あんなにクソ野郎だったベン・キングスレーが、ライアン・レイノルズになったとたん、なんかいきなりイイ奴になってない?」というもの。それに対する説明もとくにないのだが、やっぱり若い身体になってモテモテになれば、嫌な性格とかも自然と治るでしょということなのか!?いや、そこには最近にわかに注目されている「腸内細菌」が関係しているのではないか、というのが私の推測なのだ。
WIREDの記事でも紹介されているように、最近「腸内細菌」が性格に影響を及ぼすことが、動物実験によって明らかになってきた。マウスを使った実験では、糞便を腸から腸へと移植することで、その「性格」まで移植できたという報告がなされている。本作でベン・キングスレーがいきなりイイ奴になった理由も、この「腸内細菌」の変化によるものと考えれば、納得がいくのではないか。実際に、人間同士での糞便移植も、すでに臨床試験が行なわれているのだ。

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博士のマシーンで新しい身体に移動したベン・キングスレーは、一番最初にまず名前を聞かれる。これは意識の同一性を調べるためのチェックで、そこには、私=意識であるという唯脳的な思想が隠れていた。しかし意識できない部分はどうなのか? それこそが身体の記憶であり、腸の性格であり、実は「私」を司るのは脳だけではない、というのが本作の裏テーマなのではないだろうか。
以上を踏まえて、もう一度この映画をみてみると、そこにターセム・シン監督の真のメッセージを読み取ることができる。みなさんも、もうお分かりだろう。そう、それは「ドナルド・トランプの腸内に、徳の高そうな人から『糞便移植』を行なえば、彼もまたベン・キングスレーのように変わることができるんじゃないの......?」というもの。トランプの「蜘蛛の糸」は肛門から伸びていたのである。

文=ターHELL穴トミヤ

NYを支配した頭脳×特殊な戦闘能力を持つ肉体
彼らは脅威の"最終兵器"に変貌する――



『セルフレス/覚醒した記憶』
9月1日(木)より、TOHOシネマズ シャンテ他全国ロードショー!

(C) 2015 Focus Features LLC, and Shedding Distribution, LLC.

原題=Self/Less
監督=ターセム・シン
出演=ライアン・レイノルズ、ベン・キングズレー、マシュー・グードナタリー・マルティネス、ミシェル・ドッカリー

配給=キノフィルムズ

2015年│アメリカ│117分│5.1ch│シネスコ

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映画『セルフレス/覚醒した記憶』公式サイト

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ターHELL 穴トミヤ  ライター。マイノリティー・リポーター。ヒーマニスト。PARTYでPARTY中に新聞を出してしまう「フロアー新聞」編集部を主催(1人)。他にミニコミ「気刊ソーサー」を制作しつつヒーマニティー溢れる毎日を送っている。
http://sites.google.com/site/tahellanatomiya/
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