WEB SNIPER Cinema Review!!
『私の奴隷になりなさい』待望のシリーズ映画化!!
支配と隷属、その特別な関係が作り出す魅惑の人間模様――サタミシュウの官能小説を原作とした壇蜜主演作『私の奴隷になりなさい』に続編となるシリーズ第2弾&第3弾が登場! 日常の裏側で深まる主従関係の行く先とは。『私の奴隷になりなさい第2章 ご主人様と呼ばせてください』 9月29日(土)2W限定!池袋シネマ・ロサほか全国順次公開!
『私の奴隷になりなさい第3章 おまえ次第』 10月13日(土)2W限定!池袋シネマ・ロサほか全国順次公開
覆面官能作家・サタミシュウのヒット作『スモールワールド』を当時のエロミューズ・壇蜜主演で映画化し話題を呼んだ『私の奴隷になりなさい』。
この映画が2012年に公開されたとき、筆者はここでレビューを書いた。ある日出会ったご主人様によってSMというスモールワールドに足を踏み入れ、一瞬の恍惚の中で生きるヒロイン。それは気持ちいいけれど同時に危険なことでもあるのではないか、というようなことを書いたと思う。
その続編となるのが本作だ。
シリーズ2作目の『ご主人様と呼ばせてください(「リモート」から改題)』と3作目の『おまえ次第』。原作1冊が映画1本というように作られているので、映画館で観るにしてもDVDで観るにしても2本分のお金と手間がかかるのだが、願わくばここは2作品続けて観て欲しい。なぜなら、どちらか1本だけ観るのと両方観るのとでは、印象が全然違ったものになるからだ(なんなら1作目もDVD借りて一緒に見ることをお勧めしたい。旧作だからもう100円で観られます!)。
主人公は大手広告会社勤務に勤める勝ち組男・目黒(毎熊克哉)。
彼は婚約者のいる身でありながら、不思議な魅力を持つ人妻・明乃(行平あい佳)に出会い強引に関係を持ってしまう。最初は保守的だったが、逢瀬を重ねるうちにどんどん積極的になり女としての魅力を増していく明乃。刺激的な関係に溺れる2人。
しかしある日突然、目黒の会社に突然明乃の夫・瀬尾(三浦誠己)が訪ねてくる。「社会的制裁を受けたくないのなら、このまま妻との関係を続け、調教し、その詳細を逐一私に報告しなさい」
目黒は瀬尾の監視のもと彼女を調教し、やがて「ご主人様」と呼ばれるようになるのだが――。
第2章である『ご主人様と呼ばせてください』は、前作同様、一見地味だけど実はエロい人妻、彼女と不倫する小器用なヤリチン男、自分の女を寝取らせようとするクールな男......という、ちょっと歪んだ関係性が軸になっている。
美人の婚約者がいるくせに人妻をたらしこむ目黒は、女の目から見るとヤな奴に他ならないのだが、明乃を強引に口説いたり羞恥を煽って調教したりするご主人様っぷりは大変エロくてジュンとくる(恥かしい恰好で街中を歩かせたりするときは「大丈夫だよ、ちゃんと見てるから」と言うといいらしい。ああ、言われたい!)。
しかしそんな彼も、瀬尾の前に出ると一気に小物に見えてしまうのだ。妻と間男の関係を公認し、涼しい顔で「タブーのない女に調教してほしい」と言う彼の得体の知れなさは、まさにラスボス。
隷属することによってどんどん美しく花開いていく明乃。婚約者に浮気がバレ、奇妙な関係に憔悴していく目黒。真のご主人様は一体誰なのか......。
3人のパワーバランスは入れ替わり、やがて終わりを告げる。
第3章『おまえ次第』も引き続き目黒が主人公。だが、ミステリアスで官能的なムードの第2章に比べると若干コメディ寄りだ。
明乃との関係が終わってから2年。よりを戻した婚約者と結婚し「いい夫」になったかのように見えた彼だが、実はSMバーに出入りし、ご主人様として何人もの奴隷を持つようになっている。そんなある日、彼は一見地味だが強烈な調教願望を持つ日繭子(杉山未央)と出会い、調教してM女へと変身させていく。
本作の見どころは、なんといっても目黒に代表されるご主人様たちの滑稽さだろう。
SMバーで飲み仲間と互いの武勇伝を話し合ったり、奴隷を調教に行く前に妊娠中の奥さんへのアリバイ作りを手伝ってもらったり。ピンクのベビードール姿でやる気満々の奴隷に、ついげんなりしたりなんてシーンもある。
2人きりの主従関係にどんなに恍惚となっても、一歩スモールワールドの外に出たらそれだけじゃいられないのだ。
美しく花開いていく繭子と、不満を募らせる奴隷たち。目黒が目指した主従関係にも次第にほころびが出始める――。
毛色は違うものの、第2章・第3章に共通しているのは濡れ場のエロさ。そして隷属する側であるはずの女の生命力だ。
保守的な人妻だった明乃も地味で冴えない女だった日繭子も、性愛の世界に身を投じ奴隷になることで自信をつけ、美しく花開く。そして目黒との主従関係が終わりを迎えても、次の一歩を選んでいく。
いや、2人のヒロインだけじゃない。目黒の妻で身重の希美も、奴隷たちも、最後には目黒よりもずっと肝のすわった強さを見せるのだ。けして一瞬の恍惚の中に沈んでしまったりしない。これはピンク映画からキャリアをスタートさせた城定秀夫監督ならではの女性讃歌でもあるのだろう。
そういえば本作を観終わってから知ったのだが、原作によると第2章に登場する明乃の夫・瀬尾は、前作『私の奴隷になりなさい』で壇蜜演じる人妻奴隷に恋して人生を変えられてしまった"ボク"の未来の姿らしい。
つまり瀬尾は、自分がしたのと同じ経験を目黒にさせることで、壇蜜が隷属していた「先生」と同じキング・オブ・ご主人様になったのだ。
瀬尾に人生変えられた目黒もご主人様を目指しているし、もしかしたらご主人様の遺伝子ってのは、こんなふうに経験と憧れを媒介にして代々受け継がれていくのかもしれない。ちばあきおの『キャプテン』みたいに。
文=遠藤遊佐
『私の奴隷になりなさい第2章 ご主人様と呼ばせてください』 『私の奴隷になりなさい第3章 おまえ次第』
『私の奴隷になりなさい第2章 ご主人様と呼ばせてください』
9月29日(土)2W限定!池袋シネマ・ロサほか全国順次公開!
『私の奴隷になりなさい第3章 おまえ次第』
10月13日(土)2W限定!池袋シネマ・ロサほか全国順次公開
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映画『私の奴隷になりなさい』公式サイト
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