WEB SNIPER Cinema Review!!
緊縛、剃毛、二穴責め......シリーズ計40万部超のベストセラーが遂に映画化!!
出版社に転職した僕(真山明大)は、謎めいた色香を放つ先輩社員の香奈(壇蜜)に心を奪われるが、どうにか口説き落とそうとするもまったく相手にされない。そんなある日、「今夜、セックスしましょう」という香奈からの思いがけないメールが。一夜を共にした僕はその後も奇妙な関係を続けていくが、香奈の自宅で衝撃的なビデオを発見して......。29歳でグラビアデビューしたグラドル・壇蜜の演技にも期待が高まる話題作!!※記事の終わりにプレゼントコーナーがあります!!
11月3日(祝)銀座シネパトスほか全国公開
原作は、覆面SM作家・サタミシュウ("中の人"はベストセラーを連発する人気作家らしい)の10万部を超えるヒット小説。主演は"着エロ界の壇れい"と呼ばれる話題のエロミューズ・壇蜜。チラシの謳い文句は「緊縛、剃毛、二穴責め......調教の限りを尽くした奴隷ワールド!」。もちろん友情出演は、芸能界のエロス番長・杉本彩だ!
ここまで興味をそそるキーワードが揃ったら、SM世界を美意識たっぷりに描いた過激なエロがウリの映画だと思われても仕方ないだろう(実際、始まって1分で赤い縄に縛られたおっぱい丸出しの壇蜜が出てきた!)。
でも話が進み、壇蜜演じるヒロイン(単身赴任の夫がいる普通のOL)が"先生"と呼ばれる中年男(板尾創路)の奴隷で彼の言うことならなんでも聞く女なのだとわかったあたりから「こいつはヤバイぞ」と思いだした。これは、とんでもなくシリアスな映画なんじゃないか? 少なくともSMプレイに興味を持ったり、不倫に身をやつしたり、「今の自分は本当の自分じゃない」と思ったりしている女たちにとっては。
物語は、画家になりたいという希望を持ちながらも諦めている"僕"が、勤め始めた出版社でOL・香奈と出会うところから始まる。
彼は、地味でそっけないけれど明らかに他の女とは違う香奈に興味を持ち何かにつけて彼女にアタックするが、まったく相手にされない(だいたいこういう役まわりはウブでピュアなイケメンと相場が決まっているものだが、コイツは彼女持ちの小器用なヤリチンだから相手にされるわけがない)。
しかしそんなある日、突然香奈から携帯に「今夜、セックスしましょう」というメールが届く。いきなりのダイレクトな誘い。会社では今まで通りよそよそしいのに「あとで見ながらオナニーするから」という理由で毎回セックスをビデオに撮らされる。戸惑いながらも、不思議な魅力を放つ香奈に"僕"はどんどん惹かれていく。
勘のいい人ならすぐ気付くと思うが、これらは全部"先生"と呼ばれるご主人様の命令だった。"僕"もやがて彼女が奴隷であり、自分は完全な当て馬にすぎないと知ることになる――。
見どころはなんといっても板尾創路演じる"先生"のご主人様っぷり。
"僕"をバスの中に呼びつけて香奈とのとびっこプレイを見せたり、「私ならあの女を一週間で美しくしてみせる」と豪語してバーにいる普通のOLをその言葉通り奴隷にしてしまったり。このへんのくだりはダンディすぎてむしろ痛快だ。
一般世間においてはモテ男の勝ち組である"僕"が香奈という奴隷に恋し、その香奈は得体の知れない中年男である"先生"に身も心も捧げているという逆転の図式も面白い。3人の間のヒエラルキーを決めているのは一体何なのか。フェロモンか、美意識の高さか、それともただのハッタリか。
これが映画デビュー作となる壇蜜の演技も良かった。だいたいこの手の作品のヒロインというのは、カラミのシーンでも「さあ観て、セクシーでしょ」とでもいうようなキメ顔を作ってしまうものだが(杉本彩のことじゃないですよ!)彼女はすごく自然なのだ。地味で真面目なOLが、ご主人様の前に出ると肩の力の抜けたなんともいえない表情をする。声もロリっぽく甘くなり、普段セックスするときもこんな顔してんだろうなーと思わせる。
アラサー女がセーラー服にツインテールという姿で露出プレイをしたり、バーでいきなりブラウスのボタンをはずして緊縛されたオッパイを見せたり、SM映画というのはとかく別世界という感じがして感情移入しにくいものだけれど、リアリティがあるのは、壇蜜の大人っぽいんだか幼いんだかわからない地味な顔立ちと彼女が発する「それっぽさ」のおかげだろう。
後半になってやっと、香奈がなぜ"先生"の奴隷になったか、奴隷としてどんな生活をしてきたかが語られるのだけれど、個人的に一番ヤバかったのはこはのへんのくだりだ。
特に"先生"と香奈が初めて出会うシーンは衝撃だった。女友達とバーで愚痴っていた普通のOLが、初対面の中年男にいきなり「お前は本当につまらない女だな」と吐き捨てるように言われるのである。
ついさっきまでニコニコしながら「君は○○だろ」なんて言っていた男が急に「お前」呼ばわりに豹変し、「お前が私に一時間かけて話したのは、いかにこれまでつまらないセックスをしてきたかだ!」と貶める。いやあ、ご主人様スイッチが入った音が聞こえましたね。
そして「とりすまして欲望を抑え込むなんてくだらない。綺麗になりたいか?」とたたみかけると、女はぽわーんとして陥落。その足でホテル(ラブホじゃない高級っぽいホテル)にしけこみ、自分の手で全裸になるよう命じた後「もうこんな安い下着はつけさせない......」なんてシビれるセリフを吐くのである。ああ、いる! いるよ、こういう奴!!
本作の原作である『私の奴隷になりなさい』は、元は『スモールワールド』というタイトルだった(文庫化により変更された)。
原作を読んだときはなんの気なしだったけど、よく考えてみるとSMというのはまさしくスモールワールド(小さな世界)だ。ご主人様と奴隷、居心地のいい2人だけの世界。傍から見たら滑稽にしか見えない露出プレイや浣腸プレイも、そこでならできる。自分は特別だという甘い優越感を持つこともできるし、嫌なことやうまくいかないことから逃げ込むことだってできる。
でも、"先生"にビデオを送るために縄跡がくっきりついた身体で必死にオナニーしたり、昼間からカーテンを閉め切って思い出しオナニーをしたりしているのを見ると、なんだか切なくなってしまう。
自分を愛してくれない男の奴隷になり性愛の世界に身をやつすことで、望み通り年下のイケメンに恋焦がれられるほど「綺麗」になれた。でも、果たしてそれは幸せなことなのか。一瞬の恍惚があれば、あとの時間は不毛でもいいのだろうか。
SMに限らず、恋もセックスもつきつめれば中毒みたいなものなのだと思う。スモールワールドの中でだけ生きるのは、気持ちいいけれど危険だ。そして女は誰でも、嬉々としてスモールワールドに入ってしまう可能性を秘めている。
ふと、男性がこの映画を観たら、どういうふうに感じるのだろうと思った。得体のしれない中年男が小さな世界の頂点に立ち、人妻OLを奴隷にする姿を見て、スカッとしたり興奮したりするのだろうか。
原作を書いたサタミシュウも監督も男だってことを考えると、私がこの作品を観てどんよりするのは本来の見方じゃないのかもしれない。
でも、本作を観終わって一番心に残ったのは、生々しい剃毛シーンでも緊縛バイブ責めでもなく、このシリアスで身につまされる部分だった。
文=遠藤遊佐
ごく普通の生活を送る既婚OLが、
別の男性の奴隷と化し、美しく覚醒していく......。
『私の奴隷になりなさい』
11月3日(祝)銀座シネパトスほか全国公開
■映画『私の奴隷になりなさい』で、主演の壇蜜さんが身に着けていたSMアクセサリーをプレゼント!(拘束具とノンホールボディジュエリーショップ「sp-Love」の商品です)
■プレゼント応募要項
「sp-Love」さんからのご好意により、合計14名の方に上記商品の内から1点をプレゼント致します。プレゼントをご希望の方は「宛名」「送付先」「お電話番号」「希望する商品」を明記し、以下のアドレスへ「sp-Loveプレゼント」というタイトルのメールをお送りください。
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映画『私の奴隷になりなさい』公式サイト
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