WEB SNIPER Cinema Review!!
壇蜜がみせるエロス+特撮のニュー・ワールド
突如、三角諸島に飛来した謎の隕石から宇宙怪獣ベムラスが出現。緊迫した地域だけに日本政府も中国政府も手を出せないでいる中、ベムラスは日本本土に上陸を果たし、某発電所に居座る。意を決した地球防衛軍JAPが怪獣掃討に乗り出すが、なんとベムラスは使用済み核燃料を食べはじめて――。壇蜜演じるJAP所属のダン隊員は、果たしてこの危機にどう立ち向かうのか!?2014年2月8日(土)角川シネマ新宿他全国順次公開
この映画を観るまで「テレビでは国民のオモチャだけど映画にはシリアスかつ体当たりでエロに取り組む、それが壇蜜イズム!」と勝手に思っていたのだが、その思い込みは綺麗に裏切られた。
というのも、女優として大事な時期であろう三作目にもってきたのは、なんとバキバキのB級特撮パロディ。ウルト○マンにセクシー未亡人と原発問題をからめたという問題作なのだ。
ちなみにキャッチコピーは"今、SMからSFへ......。ニュー特撮ヒロイン ダン隊員、世紀のお・も・て・な・し"。いやあ、もう最高としか言いようがないでしょう!
案外、仕事はオファーが来た順に受けると決めてるのかも。
さてオープニングからして往年の特撮モノそのままという"ザ・パロディ"な本作。内容は適当なんじゃないかと若干舐めていたのだが、いざ観始めてみると実は結構エッジの効いたストーリーだった。
ある日突如三角諸島(尖閣諸島のパロディですね)に飛来した隕石から現われた宇宙怪獣ベムラス。日本政府と中国政府がにらみ合っているうちにベムラスは日本本土に上陸し、今問題になっている某発電所に居座って使用済み核燃料をバクバクと食べ始めてしまう。
一方、地球防衛軍きってのエースパイロット・ダン隊員(壇蜜)は、なかなかベムラスへの攻撃命令が出ないことに地団太を踏んでいた。何を隠そう、彼女には3年前に愛するフィアンセをベムラスに殺された過去があったのだ――。
まず感動したのが、壇蜜の一分の隙もない仕事っぷりだ。
未亡人であるダン隊員は3年前は向島で芸者をしており、そこで客だった彼と出会ったという設定になっているのだが、回想シーンはまさに壇蜜コスプレ独演会。妖艶な芸者姿で日本舞踊を踊ったり(実はこの踊りはラストへの微妙な伏線になっている)、純白のウエディング姿になったり、ちょっと無理あるおさげのセーラー服高校生に扮したり。喪服姿が拝めるのはもちろんで、よくわからないけどなんとなく得した気分になれてしまう。
さらに話が進むにつれて、ダン隊員が32歳になる今でも処女だとか(結ばれる前にフィアンセが殺されてしまったらしい)、ベムラスを攻撃すると今まで感じたことのないエクスタシーを感じる体質だとか、ちょいエロ要素がバンバン出てくるから素晴らしい。
精神科医役のモト冬樹に「あなたは立派な変態です!」と太鼓判を押されたり、「処女? 32歳ですよね?」と言われて「いけませんか!?(キッ)」と答えるシーンなんて、もう世のオヤジ総立ちって感じである(かくいう私も2回観返した)。
そしてもう一つ目が離せないのは、次から次へと押し寄せてくる皮肉たっぷりのブラックユーモア。
三角諸島(尖閣諸島)に宇宙怪獣が現われたくらいまではあまり気にもとめずに観ていたのだが、ベムラスが核燃料を食べ始め、ザ・ニュースペーパーの福本ヒデ演じる宇部総理が出てきたあたりから止まらなくなってくる。
段取りばかりではっきりモノを言わない電力会社のエライさん、ベムラスが核を食べてくれるとわかった途端所有権を主張しだす日本と中国、そこになぜか「竹島と交換しろ」としゃしゃり出てくる韓国政府。最後にはオスプレイやホワイトハウスにいるオバマ(ノッチ)まで出てきて、いやー、笑えるやらドキドキするやら。
くそぅ、壇蜜だけだと思って安心してたらこう来たか。っていうか、エンタメ作品でこんなのよく撮れたな......。
と思ったら、監督(『地球防衛軍イコちゃん』『いかレスラー』『ヅラ刑事』など、数々の昭和的おバカ映画を世に送り出してきた河崎実)曰く、この過激なパロディのせいで本作は制作費・配給・ロケ場所とすべてにおいて断わられ続けすごい苦労をしたんだとか。
それでも「事なかれ主義の建前がまかり通る現代ニッポンを徹底的に風刺したかった」という心意気や良し! それがノッチのオバマだっていうのもかっこいいじゃあないか!!
未亡人・ダン隊員に思いを寄せる謎の年下男、核燃料を食べてどんどん成長していくべムラス、ダン隊員の出生の秘密。「あったら面白いな」というベタな展開がどんどん盛り込まれ、いよいよ物語はクライマックスを迎える。
地球防衛軍長官(ウルトラマンでダン隊員やってた森次晃嗣)のはからいで、一人ベムラスとの戦いに向かうダン隊員。どうしようもなくなった事態を解決する地球防衛未亡人の必殺技とは......。
調子に乗ってストーリーをほとんどバラしてしまったが、腰くだけ必至のこのラストシーンだけは是非映画館で観てほしい。そして日本が誇るセクシーアイコン・壇蜜の素晴らしさを再認識してほしい(あと、ノッチのオバマも)。
ユニフォームデザインが漫画家の藤原カムイだったり、ベムラスに入ってるのが平成ゴジラシリーズのスーツアクター・破李拳竜だったり、B級という言葉ではくくれない一本。
観終わって「とりあえず2014年も壇蜜推しで行こう」と決めました。はい。
文=遠藤遊佐
尖閣諸島、原発事故、オスプレイ、TPP――
現代ニッポンの直面する諸問題に鋭く切り込む!?
『地球防衛未亡人』
2014年2月8日(土)角川シネマ新宿他全国順次公開
関連リンク
映画『地球防衛未亡人』公式サイト
関連記事
スペイン人女性はセックスのとき「アレー! アレアレアレ、アレー(闘牛場の観客たちのイントネーション)」とあえぐことがわかった 映画『アイム・ソー・エキサイテッド!』公開!!