web sniper's book review
視点がユニークでパワフルな
アニメ&特撮徹底開設ガイドブック!!
50年代における懐かしの名曲からゼロ年代の最新作まで、
アニメ&特撮の主題歌・挿入歌を作品トリビアや映像ネタを交えて解説。1958年から2010年まで48年分のアニメ・特撮ソングを1年間365日におけるアニメ界の出来事にちなんで掲載するなど、アニソンの歴史やジャンル的変遷の紹介にとどまらない、アニソンファンによるアニソンファンのためのディープな1冊。アニメ&特撮徹底開設ガイドブック!!
『アニソンバカ一代』では「1年365日にちなんだアニメ&特撮ソングを徹底紹介!」という煽りの通り、1年365日をアニメソングに関わる出来事と共に紹介している。1963年1月1日の「鉄腕アトム放送開始」という日本アニメ史の出発点とも言える出来事から始まり、声優や作曲家、漫画家やアニメ監督の誕生日など三次元の出来事にとどまらずアニメキャラクターの誕生日や命日などアニメに関わる記念日をあげながら、最終日12月31日は「機動戦士ガンダム」の一年戦争終戦記念日に完結する。楽曲について云々よりも、アニメ作品の概要と、作品への思い入れと共に紹介される楽曲レヴューから想起される著者の姿はまさに「アニソンバカ」である。2月27日が田村ゆかり姫の誕生日でなくポケモンに割り当てられているのは極めて遺憾と言わざるを得ないが。
本文中でも触れられているが、著者の趣味傾向がヒーローや特撮の主題歌である「燃え」に偏っているため現在のアニメ主流である「萌え」を補完するために「萌える vs 燃える」と称して五十音順に楽曲を紹介する「あいうえお対談」も用意されている。アニソンを享受する側でなく、作り、歌ってきた小林亜星、串田アキラ、山本正之という三大大御所のインタビューは当時のアニソンという仕事がどのようなものであったかを知ることができる。あとなにげに表紙が水玉螢之丞である。
アニソンの紹介が、時間軸でもジャンル別でもなく365日の記念日や五十音というランダムな構成で選ばれているのは、この本が語ろうとしているのがアニソンの歴史でもアニソンのジャンル的変遷でもなく、アニソンがどれだけ拡散してもなぜアニソンという括りの中にいられるのか、という疑問に対して「カラオケ」という回答を立てているためだろう。楽曲におけるジャンル付けとして「燃え」と「萌え」、「女性が歌うと目立てる」「一般ウケも狙える」「合唱推奨」などのタグ付けが施されていたり、ナレーションは歌の一部と称して音源には収録されていない、テレビ放送のみのナレーションを紹介し続けるコラムなど、本全体がカラオケで楽しむことを推奨した作りになっている。ディスクガイドとは言うものの、楽曲の収録された音源についての情報が記載されていないことを疑問に思ったが、カラオケを前提にしているのなら納得がいく。カラオケボックスの最低単位はディスクではなく楽曲だ。
ニコニコ動画で流行した楽曲や、「初音ミク」の楽曲。「東方Project」のアレンジ曲がカラオケで配信されていることを、オタクの輪の外にいる人はあまり知らないかもしれない。盆と正月、コミケ終了後のパセラはいつでも満員でどの部屋からもアニメソングが漏れ聞こえてくる。「アニソン」とは歌い継がれるものである、そして歌え、さあ歌え!とこの本は激しく歌い上げている。
文=四日市
『アニソンバカ一代〜アニメ&特撮ソング史上最多555曲濃縮読本 (K&Bパブリッシャーズ)』
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