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2011ゴールデンウィーク特別企画
戦後の焼け跡を生きたWEBスナイパーの著者たちが、かつてと現在をクロスオーバーさせて自分の今を見詰める特別寄稿シリーズ。他者や周囲の状況から人や物事を語るのではなく、個人の立ち位置から発せられる言葉によって結果として状況を批評する、エロティシズムのクリエイターならではの直裁なメッセージとは……。個、それぞれの中から立ち上がり、放出される「生きる力=エロス」をテーマにした臨時コラム。第2弾は「調教ファンタジーノベル 懲役奴隷くみ子」を連載中、異端の作家・浜不二夫さんです。
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「鞭でしつけられた銃後の少国民」

「軍艦、沈没、ハワイ」

私たちが国民学校(今の小学校)に入った頃のジャンケンの掛け声である。軍艦がグー、沈没はチョキ、ハワイがパーを表わしている。

ハワイの真珠湾に集結していたアメリカの太平洋艦隊を、日本の海軍航空隊が壊滅させた真珠湾攻撃に始まった太平洋戦争(日本側は大東亜戦争と呼んだ)が激化の一途をたどり、大日本帝国を挙げて戦時一色に塗りつぶされていた時代である。

当時、日本国民に求められていた人間像は、男なら「国家、上官の命令に服従して、戦場で命を捧げる兵士」であり、女なら「親、夫に実直に従ってよく働き、子供をたくさん産む嫁」であった。こんな時代、学校での児童教育の理念が、「従順で健康な少国民(子供をこう呼んだ)を育成すること」となるのは当然のことであった。

命令に従う習慣をつけさせるには、反抗や実行遅れが罰を招くことを体に教え込むのが一番である。当時の教師は全員「教鞭」を持っていた。私たちの担任はSという名の小柄な女教師であったが、彼女は明らかにかなりヒステリックなサディスティンで、常に手放さない竹の鞭で、男女を問わず、問題の答を出せなかった児童や、忘れ物など失敗をした児童の背中やお尻をピシピシと打ち据えるのだった。

平牙人氏の描く「教室での尻打ち」さながらの光景であるが、残念ながら生け贄の男女児がお尻をハダカにされていたという記録はない。

しかし、

「勉強を怠けたことを天皇陛下にお詫びしなさい!」

と、皇居の方角を向いて最敬礼させられ、自然と突き出されるお尻を鞭で力一杯叩かれて、

「ギャッ」

と飛び上がるのは、惨めで恥ずかしいものであった。S先生は辱しめの懲罰が大好きだったようで、

「あなたの頭は犬なみです」

と、みんなの前でグルグルと三遍回って、

「ワン!」

と吠えさせたり、

「答が出来なければ降参しなさい」

と、白旗を背負わせて立たせたり、

「あなたは半人前だから、椅子も半分しか掛けてはいけない」

と、お尻の山の片方を椅子から外して腰掛けさせたり、といった罰が行なわれていた。この罰は、お尻の谷間に椅子の角が当たって痛く、常に股間を意識させられて、恥ずかしく奇妙な感覚を味わわされるものだった。

健康について、教師たちは、

「寒暑に負けぬ頑健な体を作るためには、平素からハダカにしておけばよい」

と考えたようである。

毎朝の朝礼で、全校の児童が校庭に集合し、号令一下、全員パンツ一枚になるのである。上半身ハダカでラジオ体操をし、その後、持参した乾いた布で体を擦る「乾布摩擦」を行なう。当時の風習として、男児はもちろん、低学年女児が校庭で上半身ハダカになるのはさして奇異ではなかった。

しかし、胸が明らかに膨らんでくる高学年女児や、今の中学生に相当する高学小学校の女性がパンツ(当時はズロースと呼ばれ、太腿に裾ゴムが入ったフックラ生地の女児用下穿き)一枚で、立派に発育している乳房を朝日に晒して、

「イチ、ニッ、イチ、ニッ」

と黄色い声を張り上げながら素肌を擦るのは男性教師や色気付き始めた男子生徒の目を奪う壮観だった。地域によっては、体育はもちろん他の教科でも、男女ともに上半身ハダカで受けさせたという記録写真が残っている。

毎月一回行なわれる児童の身体検査では「兵隊さんと同じに」全児童が一糸纏わぬ全裸にされた。当時、男子が成年に達すると、国民の義務として一人残らず受けさせられた「徴兵検査」では、性病や疾患の検査のために全員性器も臀部も露出した全裸にされることが知られていた。兵士予備軍の男子少国民たちは、それを見習って、毎月一回オチンチン丸出しで身長や体重の測定を受け、ことのついでに女児たちもズロースを脱がされて、可愛いワレメ丸出しで身体測定をされたというわけである。

小学校低学年でも男女の性の意識はある。ちょっと気になっている女の子の前にオチンチン丸出しで立たされるのは、やはり恥ずかしかったし、その子がズロースを脱いで、可愛い、もちろんまだ無毛のワレメを見せる姿がまぶしかったものである。

余談だが、男子の徴兵検査に相当する、女子が成人になった時にその肉体の状況を把握する身体検査が計画され、一部地域で試験的に実施された記録がある。

国民の肉体は国家の重要な資源であるという当時の考えからすれば当然の発想であろうが、「たくさん子供を産むことが女のご奉公」とされた時代でのこの検査がどんな内容のものだったか、想像出来るというものである。

こうして日本は戦い続け、「沖縄戦」「大空襲」「広島・長崎」を経て、国土が焼け野原と化した敗戦に至るのである。しかし日本は奇跡の復興をとげる。餓死者さえ出た戦後からほんの数十年で、食物から電器、自家用車まで溢れた、経済大国日本を作り上げたのである。

そこに起こった今度の大震災、大津波。テレビに映る被災地の惨状は、まさに目を覆いたくなる有り様であり、被災者の方々のご苦難は察するに余りある。

しかし、日本は、この「国難」を乗り切って、再び国民皆が繁栄を喜べる日が来ることを信じている。「一億一心」「欲しがりません、勝つまでは」、心を合わせて明日のために今の不自由を耐える日本人の心がある限りは。

それにしても今の「草食男子」の頼りなさは、いささか心許ない。「大和撫子」(日本女性の当時の呼び方)のほうが鍛え甲斐がありそうである。もちろん、「鞭」とハダカで!

文=浜不二夫

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調教ファンタジーノベル 懲役奴隷くみ子

浜不二夫
異端の作家。インテリジェンス+イマジネーション+ユーモアで描く羞美の世界は甘く、厳しく、エロティック。
「 悪者に捕らわれた女性は、白馬の騎士に助けてもらえますが、罪を償う女囚は誰にも助けてもらえません。刑罰として自由を奪われ、羞恥心が許されない女性の絶望と屈辱を描きたかったのです。死刑の代わりに奴隷刑を採用した社会も書いてみたいのですが――」
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