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シリーズ羞恥の教室
蒼き悪魔
【2】

著者=
小林電人


堂々完結した"官能羞恥小説"羞恥の教室。気になるキャラクターたちのその後は、過去は......。今作では謎多きあの男の少年時代が明らかに!
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蒼き悪魔【2】


それからしばらくの間、慎治は真理恵とつきあっていた。正しく言うなら、真理恵が慎治にぞっこんになっていたのだ。

慎治の高校の授業が終わってから、自分が遅番でイメクラに出勤するまでの時間、真理恵は毎日のように慎治と会うことを望んだ。ほんの数時間しかないのだが、とりあえず真理恵はラブホテルに慎治を連れ込んで、ひたすら奴隷として尽くした。言われるがままに痴態を晒し、そして慎治の身体を隅々まで舐め回した。時にはテイクアウトした高級惣菜を慎治に食べさせながら、下半身に奉仕するなんてこともした。もちろん、すべての費用は真理恵持ちだ。親がかなりの資産家である慎治は、自分から金をせびるようなことはしなかったが、真理恵が強引にお小遣いを渡すことも度々あった。売れっ子イメクラ嬢である真理恵は、それなりの稼ぎがあったのだ。

「お休みが一緒の時があればいいのにね」

真理恵はよく、そう言った。

表面的には、少なくとも親に対しては優等生を気取っていた慎治は、学校をさぼることはしなかったし、真理恵が仕事を終える深夜に会うこともしなかった。真理恵自身も仕事に対しては真面目で、勝手に店を休むことはしなかったし、指名客の多い週末は必ず店に出ていた。

生理と重なって週末を休んだ時、真理恵の希望で朝から夜までラブホテルにこもったことがあった。その時は、真理恵は何時間も無心に慎治の身体を愛撫し、そして肛門で慎治を受け入れた。真理恵は肛門の性感まで、すっかり慎治に開発されていたのだ。

慎治には、それ以前から関係の続いている女性が何人かいた。たまに連絡をして、お互いに性欲をぶちまけあう、いわゆるセフレ的な関係だ。

彼女たちも最初は慎治を独占したい、恋愛関係を持ちたいと思うのだが、慎治には独占欲というものが全くといっていいほどなかった。女たちが望めば、慎治はそれに応え、支配的なセックスを与えてくれるのだが、プライベートでは彼女たちを縛る気は全く見せなかった。

幼い頃から女性に迫られてきた慎治には、人を愛するという感情が欠如していた。女は寄ってくるものであり、そして去っていくものだという認識。来る者は拒まず、去る者は追わず、だ。

だから慎治のそうした性格がわかると女たちは離れていった。彼に惹かれるのは、みんなマゾヒスティックな性癖を持つ女だったが、彼女たちは支配されたいという欲望を持っていたからだ。支配してくれないご主人様には、尽くせない。そうして多くの女は慎治から離れていき、その中でもたまに遊びとして慎治との刺激的な時間を楽しみたい時だけ連絡してくる女もいるのだ。そして慎治はそうした女も拒まなかった。

真理恵は、慎治にそうした関係の女がいることには気づいていたが、それを問いただすことはなかった。それを言って、慎治に面倒くさい女だと思われるのが怖かったのだ。

その日、真理恵は両腕を背中に回されて拘束され、手を使うことを一切禁じられた。芋虫のようにはいずり回って慎治の全身を舐め、立ったまま肉壺へバイブを含まされ、決して落としてはいけないと命じられ、何度も絶頂を迎えさせられながらも、必死に命令を守った。床に這いつくばって、尻を高くあげて、ソファに座っている慎治のペニスを後ろから受け入れ、前後に身体を動かした。こうすると慎治は一切動くことなく、快楽を得ることができるのだ。真理恵がお気に入りの、奉仕の方法だった。

「ほら、もっとちゃんと動かして。それじゃ、全然気持ちよくないよ、真理恵」

慎治はそう言いながら真理恵の小ぶりな尻肉をぴしゃぴしゃと叩いた。

「はい、すいません慎治様」

普通ならば、女にとってたまらなく屈辱的なシチュエーションではあるが、真理恵は興奮していた。奴隷のように慎治に扱われるのは、真理恵にとって最高の快楽なのだ。

「おい、口」

慎治がそう言うと、真理恵は慌てて尻を引いて、彼のペニスを抜き出し、くるりと向きを変えると、それを口に含んだ。舌を亀頭にからめるようにして、舐め回す。

しばらくすると、ペニスは大きく膨らんで、青臭い白い液体を真理恵の口の中にぶちまけた。真理恵は、それを一滴も逃すまいと、丁寧に吸っていく。そしてうっとりとした表情で、飲み干した。妊娠を恐れているのか、慎治は決して膣内射精をすることはない。いつも発射寸前にフェラチオをさせ、口内で発射させる。今日は安全日だと言っても、慎治は頑として口内射精にこだわる。そこに、真理恵は少しだけ寂しさを感じる時もある。

精液を飲み干した後、真理恵は再び射精後の柔らかくなった慎治のペニスに舌を這わせ、綺麗に掃除をする。それで再び、硬度を取り戻したりもするのだが、そのまま二回戦ということは、まずない。

行為が終わった後は、だいたい二人でベッドに横になり、真理恵は慎治に腕枕をしてもらう。射精してしまってからの慎治は人が変わったように優しくなる。プレイの最中のご主人様としての態度は陰を潜め、優しく真理恵を甘えさせてくれる。また時には実際には二歳年下であるということを思い出させるような幼い素顔がかいま見えることもある。

「気持ちよかった、慎治君?」

「うん、すごく。ありがとう、真理恵」

プレイの時は慎治様と呼ぶが、それ以外の時は慎治君と呼ぶように言われている。普段の二人は、ごく普通のカップルのようだ。真理恵も年齢より幼い顔立ちなので、高校生同士の可愛らしいカップルにも見えるだろう。

しかし、真理恵にはそれが不満だった。もっと慎治に支配されたかった。普段も奴隷のように扱われたいという思いが日に日に強くなってきていた。

自分のやっている仕事に対して、慎治がまったく気にとめていないのも不満だった。以前、つきあっていた彼氏は、真理恵が風俗で働いていることを、ひどく嫌がった。おれがその分、稼ぐから早く止めてくれと何度も言っていた。ただしロクに仕事もしていない半ばフリーターのミュージシャン崩れの男だったため、それは口だけではあったが。真理恵自身は客が喜んでくれるイメクラの仕事にはやりがいを見つけていたし、続けたいと思っていたので、結局その男とは喧嘩の末に別れた。その点、慎治は仕事に対しては全く口を出さないので、ある意味で理想の彼氏だと思っていた。

しかし、慎治に夢中になってしまった今、仕事で他の男に身体を弄ばれるのは、辛いと感じてしまう。もともとS気の強い常連客が多い真理恵だ。客たちは、真理恵を言葉責めや羞恥責めをしてくる。以前は、それなりに楽しめたのだが、今は「慎治様なら、そんなこと言わない」「これが慎治様にされるんだったらいいのに」と、つい考えてしまう。時には肌に客の指が触れることすら、苦痛になることもあった。

それなのに真理恵が「風俗、止めちゃおうかなぁ」と言っても、慎治は気のない返事をするだけだった。

「真理恵が止めたいなら止めなよ」
「慎治君は、私が風俗やってること、全然気にならないの? 私が他の男とエッチしてるの、イヤじゃないの?」
「だって仕事だろ? 真理恵の中でおれが一番だったら、他の奴のことは全然気にならないよ」

以前の彼みたいに仕事を止めろと言われれば反発したくせに、仕事をやってもいいと言われると、それはそれで悲しい気持ちになってしまう。自分でも身勝手すぎると真理恵は思っている。しかし、それは正直な気持ちだった。

何か用事がない限り、慎治から連絡があることはない。デートをせがむのはいつも真理恵からだ。

真理恵は売れっ子のイメクラ嬢であり、お客からの誘いは日常茶飯事だ。店の後に、食事に誘われてご馳走になることだってある。本気で交際を申し込まれることも珍しくない。いや、一般的に見ても十分な美少女である彼女は、街で声をかけられることも多いのだ。

真理恵にだって、自分はそこそこ可愛いのだというプライドがある。慎治がもっと自分に夢中になってくれないのは、彼女にとっては極めて不満なことなのだ。



ある日、フリーライターの吉田から連絡があった。もともとは吉田が「いい子がいるから」と慎治に真理恵を紹介したのだ。いわば恋のキューピッドなのだが、慎治からは二人の仲は吉田には言わないように口止めされている。「恥ずかしいから」という理由だけではなく、18歳未満である自分とつきあってることが発覚すると面倒くさいことになる可能性もあるからと、慎治は言っていた。

「あのさー、紹介したい人がいるんだけど、ちょっと会えないかな。お店が終わった後でいいからさぁ」

まさか慎治とつきあっているとは知らずに、吉田は言ってきた。

「芸能人なんだけどさ、真理恵ちゃんのこと、なんか気に入ってる人がいてね」

前に週刊誌の風俗ページに真理恵のグラビアが出たことがあり、それを見たその芸能人が気に入ったというのだ。

「一度飲んでくれるだけでいいよ。気に入らなかったら、そのまま帰っちゃっていいからさ。頼む、おれの顔、立ててくれないかな」

これまでにも芸能人やスポーツ選手の合コンに呼ばれたことは何度もあった。AV女優の友人などに誘われるのだ。風俗嬢やAV女優ならノリも腰も軽いだろうと思われているようだ。実際、友人のAV女優などは、酔っぱらい始めると胸は露出するは、男の膝の上に乗るわと、彼らの期待通りの乱れっぷりを見せ、そのままお持ち帰りされていた。

真理恵は、その勢いに押されてしまったように、ほとんどしゃべれず、黙っていた。男たちからのアプローチもあったが、丁寧に辞退して、早々に逃げ出した。

風俗嬢ではあるが、真理恵は浮気はしない主義なのだ。彼がいる時は、他の男と寝たことはない。風俗の仕事はあくまでも別なのだ。

「私、今、彼氏いるから、エッチはしないですよ。それでもいいですか」
「いい、いい。来てくれるだけで向こうも満足するからさ。ほら、真理恵ちゃんって、すごく清純そうじゃん。こんな子がイメクラで働いているなんてって驚いたから、話を聞いてみたいんだって。実は、その人って、平口道夫なんだよね」

吉田は、人気絶頂のお笑い芸人の名前をあげた。お笑いにとどまらず、ドラマや映画への出演、そしてエッセイや小説などの執筆活動でも評価の高い文化人的な面もある大物だ。芸能人には疎い真理恵でも、さすがにその名前には驚いた。

「なかなか平口さんに会える機会なんてないぜ。どう?」

有名人の名前に興味を持たなかったと言えば嘘になる。テレビで見る平口も嫌いじゃない。S趣味があるという噂も聞いたこともあった。確かにどこかサディスティックなムードも感じさせる。

真理恵は「行きます」と返事をした。今日も出勤まで、慎治と過ごしていた。その時間はとろけるような快楽だった。

慎治を裏切るわけじゃない。話をするだけだし、それに慎治も、自分も束縛されたくないし、真理恵を束縛したくないと、いつも言っていた。何も後ろめたく思うことはないのだ。

12時を少し回って、最後の客が帰り、今日の分の給料をもらってから、真理恵はタクシーで池袋から六本木へと向かった。

タクシーのラジオで、宇多田ヒカルの曲が流れていた。

「この子、まだ16歳とかなんでしょ。すごいねぇ。アタシの子供よりも全然若いのに、何億円も稼いじゃってるんでしょ」

運転手が羨ましそうに呟いた。

慎治君よりもひとつ年下なのか......。真理恵は心の中で呟く。

平日なのに深夜の六本木は賑やかで、たくさんのネオンとヘッドライドが輝きを競っていた。

(つづく)




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