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1983年パンティプレゼント読者応募作品
「恭子ちゃんの淫らな散歩」
「恭子ちゃんの淫らな散歩」
『S&Mスナイパー』誌に登場したグラビアモデルをヒロインにして描く「パンティプレゼント応募小説」。1983年に何度か行なわれたこの懸賞企画の当選作品とは……。本作はモデル・石田恭子嬢をイメージしてファンタジックなプレイ模様を展開させたポップで楽しいSM小説。1983年8月号に掲載された全編を再編集の上で全四回に分けて掲載しています。
駒込駅。改札を抜けると、すぐ階段。
一段、二段、恭子は全神経を足に集中させている。
「恭子。あんまり、股、ひらくなよ。こけしがまた落ちるからな」
ボクが一声かけたら、恭子は緊張の糸を切らせてしまい、そのまま足を拡げられなくなってしまった。腰を捩るようにして、次の段に足を運ぶ。
こうなったらもう、身体障害者と同じ。傍の手すりに身をもたせかけて、体を捩って段を踏む。
階段を昇降する人たちが、好奇の目や、憐れみの目で恭子を見る。気を取り直して、しゃきっ、と、背筋を伸ばして歩き始める。
階段の下から強い風が吹き上げて来る。コートの裾が翻える。手で押さえることが出来ないので、思わず腰を低くする。そうすると、前と後ろの粘膜に強い刺激が加わる。
そればかりか、体を低くすることによって、胸元のロープが覗かれてしまう。
恭子、恨めしそうに、階段の反対側に居るボクを見る。ボクはそ知らぬ顔で、微妙な動きの彼女を楽しく見つめているのみ。
恭子はやっとホームに立ったが、なよなよとしたその腰つきは、何とも言えず艶めかしい。
人間、置かれている環境、状態によって、こうも変わるものなのか……。
大学生らしい若い男が、興味深そうに恭子を見返る。その視線を意識した恭子は、頬を紅潮させて恥ずかしげにうつむく。
ヌード撮影されている時にさえ見せたことのない、淫らがましい恥じらいである。隠そうとする意識、見られまいとする意識が、こうも、女を淫らに見せるのだろうか。
内回りの電車が来た。残念ながら空いている。ラッシュアワーにはまだ早い。
まばらに空いている座席へ恭子だけを座らせたが、恭子は次の駅で停車した時に立ち上ってしまった。
ボタン一つで止められているだけのコートの裾が開き気味で、反対側の座席の視線が気になって、落ちついて座っていられないというのだ。それに、立っている人からは胸の中を覗かれそうで、とても座っている気になれないと言う。
恭子は、通路の真ん中で危な気に立っている。勿論、吊り皮に掴まることもできないので、電車が発着したり加速減速する度に前後に傾き、ポイント通過の都度左右に揺れるのを足と腰でバランスをとっている。
チョットでもバランスを崩したら、パチンコ店の二の舞である。かと言って、あまり足を拡げて踏んばる訳にはいかない。異物を秘所に挿入したまま公衆の面前に立つ女性の本能だろうか、内股をしっかり摺り合わせるようにして、不安定な形で動揺に耐えている。
ボクは、一歩離れてそんな彼女の様子を楽しみながら、かつ、注意深く見守っているだけで、手を貸そうともしない。
恭子の額にはじっとりと汗が滲んでいる。羞恥に堪え、苦痛に耐えている汗である。
三つ四つと駅を過ぎていく内に、恭子の体のバランスのとりほうがリズミカルになったかと思うと、時々、目をつむって、じわり、と内股を締め付けるようにし始めた。
「痛いのか?」
ボクは、近づいて訊いてみた。
「ううん。え? ええ、ちょっと」
鼻声で一旦否定した恭子は、すぐに肯定し直した。
ポクはその答え方に、恭子の複雑な心と体の反応を見たような気がした。
不安定の中で安定を保つ為の努カが、埋め込んだ二つのものの刺激となって、痛さを通り越して快感となって恭子の身心を襲っているのではなかろうか?
羞恥の中の苦痛が慢性化して、快感に変化したということは多いに考えられる。
ボクは恭子の耳元で囁いてみた。
「気持いいのか?」
「いや。先生の意地悪」
恭子は、腰を捻ってボクの腰にぶつけてきた。
その途端、電車が、ガタン、と、揺れた。
危うく倒れそうになった恭子を、ボクは辛うじて支えた。
「大丈夫か?」
「うん」
「こけし、はまっているか?」
「……」
恭子の顔に血がのぼった。まっ赤になって一段と股をすぼめた。混むのを待って、山手線をほぼ一周したところで、夕方のラッシュアワーになった。朝ほどではないが、相当な混み方である。
ボクらも押されたり、突かれたりして、離れ離れになりそうになる。離れたら大変。恭子の目が、必死にボクにすがりつく。
恭子のコートが剥ぎ取られそうだ。予期していたこととは言え、気が気ではない。ボクでさえそうなんだから、本人の恭子はどんなにか、はらはらしていることだろう。恐らく、生きた心地もないのではないか。
ボクは、恭子の腰に手を廻してやった。ようやく彼女は安堵したようである。
そうこうしている内に、若い男が恭子と向い合いになった。痴漢行為を誘発させようと、ボクは恭子の脇腹をくすぐる。彼女は堪えきれずに、うずうずと身を捩る。
男は、怪訝な目で恭子を見る。
恭子は男と目を合わせないようにして、ボクのほうを振り返って話しかける。
「先生。随分、混みますわね」
せっかく、興味を持ち始めた若い男、視線をそらすと体を斜めにしてしまった。
うまく恭子に逃げられてしまったが、これは彼女のせいではない。向かい合ったまま痴漢行為をするほどの勇気を、男は持っていなかったであろうから……。
次の駅でひとしきり客が降りて、また、どっと、大挙して先を争いながら乗り込んでくる。ひと揉みしてからでないと落ちつかない。
揉まれている内に、恭子のコートの裾が何回もはだけそうになる。襟元が拡がりかける。その都度、彼女の顔が強張り、吐息が洩れる。
そうでなくても、人いきれで蒸し暑い車内で、羞恥と苦痛による緊張で発汗が促され、しかも、防水加工をした通気性の悪い厚手のコートを着ているのだ。はだけた胸に汗の玉が出来、それが流れて、ロープに泌み込んでいる。恐らく、恭子の全身が汗でヌラヌラ濡れていることだろう。
時々、恭子は顔をしかめる。人混みに揉まれる度に、水糸が乳首を引っぱるようだ。
「痛いか?」
「うん。でも、我慢するわ」
恭子は、しかめた顔を笑顔に戻した。
好色そうな中年男が恭子の後ろに居る。またもや、痴漢行為挑発にチャレンジ。
ボクは恭子のコートの合わせ目に手を差し入れると、アヌスバンドを小さく揺すった。揺するのは小さくても、感じ方は大きい。恭子は思わず尻をくねらす。中年男、反応なし。
さらに、ボクは、アヌスバンドに掛けてある電動こけしのスイッチボックスを探り当てると、スイッチを入れた。
ぶるん、ぶるん、と、こけしはこもった回転音を出してヴァギナを震動させているはずだけれども、電車の騒音でその音はかき消されてしまっている。しかしその代わりに、恭子の太腿から妖しい震動が伝わってくる。
――先生。ダメッ。
恭子の目がボクをたしなめる。
恭子の顔は紅潮し、艶めかしい襟足にはべっとりと汗が滲んでいる。
ひと揺れして、電車が停まった。
中年男は、そ知らぬ顔で降りてしまった。努力の甲斐もなく、ボクはパイプレーターのスイッチを切った。電車の中には痴漢が多いという話なのに、どうしたことか恭子に仕掛けてくる奴は居ない。待ちくたびれてボクは自らの手を出した。
まず、横から尻を撫でてみた。びく、ぴくっ、と、うごめく。
電車の揺れを利用して前へ廻った。
左足を恭子の足の間へ入れた。
コートの裾が割れる。
ズボンを透かして湿っぽい熱気が感じられる。まるで、蒸し風呂へ片足を入れたようである。防水コートの中で、恭子の体は蒸れていた。
入れた足を摺り上げる。股の付け根で行き止まる。そこの疼きが、ボクの膝に伝わってくる。
ぐいぐいと、こじり上げると、きゅっきゅっ、と、両の太腿で締めつけて、恭子が反応している。
やがて、ボクは膝に異様な感じを受けた。じっとりとした熱い感覚は最初からあったが、それよりも水っぽい感じである。
膝を引き出して、窮屈な格好で膝小僧の上あたりを見て驚いた。長さ十センチ、幅五センチくらいのスペースが、びっしょりと濡れているのである。
ぷうん、と、女陰の匂いがたちのぼってくる。その後から、汗ばんだ女の体臭が、むせかえるように迫って来る。
恭子は、しとどに濡れそぼっていたのである。それに、汗が追い打ちをかけて、この調子だとパンティをつけていないからストレートに溢れ出して、腿の内側を伝ってストッキングまで濡らしているかも知れない。
そのことを恭子に教えて、恥ずかしがらせてやろうと彼女の顔を見たら、口を半ば開けて恍惚の表情である。コートは元に戻したにも拘わらず、また、あの、むせかえるような女の匂いが鼻をついてくる。
よく見ると、コートが動いている。さらに、よく見ると、恭子の後ろに居る三十歳前後のセールスマン風の男が、彼女のコートを捲くり上げて、尻の割れ目に手を差し込んでいる。
男も、恭子がとっぷりと濡れていることを指先で感じとったであろう。にんまりとほくそ笑むと、さらに大胆に迫っていく。
ボクは、にわかに、この男に嫉妬を感じた。待望の痴漢が現われたというのに、こんな男にポクの恭子をこねまわされてたまるかと反発する感情が湧いてきた。
ボクは、恭子の後ろへ手を回すと、彼女の手首の緊縛が見えるまでコートの裾をたくし上げた。男は、目の前にそれを見ると、あわてて恭子の股倉から手を引き抜いた。裸。こけし。縛り……男の驚きが、明らかに顔に出た。
ボクと目が合った。男は目をそらした。次に停まった駅で、人波に押されながら、その男は、そそくさと降りて行ってしまった。
それはどこの駅か判らなかったが、ここで一気に乗客が減って車内はがらりと空いてしまった。混雑から解放されたボクと恭子は、互いに顔を見合わせて、ほっと、ため息をついた。
「先生じゃなかったんですか?」
照れ隠しのように恭子がとぼけて訊く。
「前に居るボクが、後ろからできるはずないだろ」
そう言いながら、ボクは、膝小僧を恭子に見せた。
「あらっ」
恭子は即座に理解した。股をぴったり合わせた。
「匂うだろう? あそこのにおい……」
ボクが囁くと、彼女の全身が固くなった。
ボクは、恭子のコートのボタンを外した。
「いけません。先生」
恭子が、顔を強く左右に振っている。
ボクは、コートをすばやく煽ると、また、ボタンをかけた。前の座席に座って雑誌を読んでいた眼鏡の紳士が、鼻をうごめかしながら、怪訝そうに左右を見回した。
(続く)
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