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『S&Mスナイパー』1986年4月号読者投稿小説
「SM快楽図鑑 花咲けるオンナ教師」
作= 牧場由美
少女時代にバレエ講演を見たことによって被虐願望を目覚めさせた槇村真樹は妖艶な女教師へと成長した。男子生徒たちを悩ませる露出癖、パートナーと密かに繰り広げる過激な痴態……。教師にあるまじき行為に惑溺し、背徳感を覚えながらも欲望に逆らうことができない真樹は、次第に妄想と現実との境界を見失っていく――。アブノーマルプレイの魅力と魔力をスタイリッシュに描いた傑作。『S&Mスナイパー』1986年4月号に掲載された読者投稿小説を、再編集の上で全5回に分けてお届けしています。
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【5】どこまでも堕ちていく

水上秀之の声は聞こえなくなったが、真樹の心のなかに住む悪魔が、彼にかわって指示をあたえていた。自分がなにをすべきか、真樹は誰にも聞かないでもわかった。マリンバ会館の前の舗装された歩道に、彼女は、あおむけに横たわった。

すけベな群衆は、たちまち真樹をとりかこむようにして、ひとがきをつくった。真樹は、眼に涙をうかべながら、腕を乳房の前で交叉させて、性感帯をさぐった。

(ああ、見られている。ああ、真樹が気持ちいいことしてるところを、見られちゃってるんだわ)

真樹のヴァギナのなかで、タイミングよくバイブレーターが律動を開始した。彼女は、歯を喰いしばって声をださないようにがまんしながら、ボリショイ・バレー団公演で見た『眠れる森の美女』のオーロラ姫のように、路上を転がった。

赤いロープで菱形にボディを緊縛されたオーロラ姫である。大学時代から、ずっとジャズダンスを続けている真樹だから、8ビートや16ビートの演奏がなくても、リズムにのって躯は柔軟に動く。群衆から、どよめきとともに、拍手がわき起こった。

高電圧を発する衝撃棒にもなるバイブレーターは、真樹のヴァギナのなかで律動を強くし、快感よりも苦痛を感じるほどだった。

風と、舗道の冷たさは真樹の肌に鳥肌をたたせた。赤い強靭なロープは、真樹の股間の割れ目に強く喰いこみ、彼女が躯を動かすたびに、陰唇やクリトリスがロープの目によってこすられた。

真樹の陰部に当たったロープの部分には、ねっとりとした彼女の分泌物がしみこんで、女の芳香をただよわせているはずだった。

そのロープは、ヴァギナのなかに充填されたパイブレークーを彼女が取りだそうとしたり、また自然にそれが抜け落ちたりしないようにする、蓋の役割をはたしていた。

(ああ、ロープにこすられて、真樹の粘膜が……い、痛い)

擦過傷を起しているのだ。爛れかかった真樹の女の粘膜に分泌液がなすりつけられ、ロープによってむれて、痛みとともに耐えられないほどの掻痒感がわき起こりはじめていた。

「あぁんっ、だ、誰か、この赤い縄をほどいて」

両膝を立てるようにして、あおむけに寝たままで、真樹は下腹部に、マニキュアをした綺麗な指をのばした。せめて、ヴァギナのなかから湧出してくる液体だけでもとめようとして、真樹は縄をわきによけて充填されたバイブを取りだそうとした。

だが、縄は強靭すぎた。

(ああ、だ、駄目)

真樹は、全身を、気が遠くなるほどのアクメで痙墾させながら、絶望的に呻いた。

「だ、駄目よ。ま、真樹、このまま、駄目になってしまう……」



約一時間後、魔王カラッポスの実験室のような、数々の責め道具が装置してあるBDルーム『惨』。青いシーツのダブルベッドに顔をうめて、うつぶせのかっこうで、真樹はしくしくと泣いていた。

白い肌に、自動車が通ったあとのように、真っ赤な縄のあとがついている。

水上のトヨタ・ニュー・ブリザードに乗せられ、彼に抱きかかえられるようにして、道玄坂のラブホテルのBDルーム『惨』にかえってきた。彼がドアをロックし、手ばやく彼女の躯の縄をほどくやいなや、彼女はよろめくようにベッドに倒れてしまったのだ。

痛々しい赤い縄目のあとを、水上秀之は慈愛のこもった目でじっとながめながら、背広を脱ぎ、ネクタイをゆるめた。

「痛かったか、真樹?」

ズボンのベルトを外しながら、水上は聞いた。真樹は、顔をあげ、寒さのために紫色に変わった唇をふるわせた。なにかを言おうとしているのだが、歯がガチガチと鳴って、言葉が出てこないのだ。

漆黒の瞳が潤み、新しい涙が、憂いをひめた麗しい顔に、一筋、流れた。

「痛かったんだね」
「う、うん」

頭をふる。

「かわいそうに。もう、心配ないよ」

残忍な強姦魔に拉致された令嬢を救出した探偵のように、水上秀之は、やさしくいった。

「ヒーターを強くしたからね。すぐに、躯もあたたまると思うよ」

水上秀之は、ズボンを脱ぎ、ブリーフを下げた。

真っ赤な硬化プラスチックでできたペニスサックを外すと、彼のペニスがいきおいよくそそり立った。

彼は、素っ裸になり、自分のペニスを右手で握って数回しごいてから、そっと真樹の肩に手をかけた。

「あおむけになりなさい、真樹」

真樹がじっとしていると、強い力でねじられ、強引にあおむけにされた。死んだように動かない真樹の紫色の唇に、水上秀之の熱い唇が重ねられた。

唇が吸われると、真樹のなかで、安堵の気持ちが強くなる。

水上を、王子様と思うことで、真樹はふたたび、秘裂が潤みはじめ、燃えつきたはずの情熱が蘇ってくるのを感じた。あくまでもやさしく、水上はのしかかってきた。真樹の両脚を開いて、躯をわりとませてきた。

硬くなったペニスの先端を真樹の秘裂にあてがい、ゆっくりとやさしく力をこめて侵入してくると、真樹は、彼が数回スライド運動をしただけで、激しいアクメが体内を通過するのを感じた。

異常なほどの嗜虐と被虐のあとだから、水上のほうも頂点に達するのが早かった。

「うううっ」

と、全身の筋肉に力をこめて、彼が吠えるような声をあげながら、真樹のヴアギナに多量のザーメンを放ったのは、挿入から十数秒後のことだった。

ボクサーあがりの筋肉質の男は、放出が終わっても、冷たい女教師の躯から離れずに、ふたたびゆっくりと下半身を動かしはじめた。

真樹の体内で膨脹がはじまり、彼女の豊満な躯が茫漠としはじめると、彼女は、筋肉男の背中に腕をまわして、「ああっ、あああっ……」と、つつしみぶかい姫君のような声をあげはじめたのだった……。

(続く)

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