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『S&Mスナイパー』1988年6月号 読者投稿小説
「母なる夜」
「母なる夜」
ある夜、一人の受験生と彼の美貌の母の前に現われた恐るべき訪問者。平和な家庭を崩壊させる恥辱行為の数々は徐々にエスカレートし、母と子の禁断の関係までも強制する――。確かな筆致でスピード感のある凌辱展開を愉しませる官能バイオレンス・ロマン。『S&Mスナイパー』1988年6月号に掲載された読者投稿小説を、再編集の上で全4回に分けてお届けしています。
その夜、宏は塾を途中で早退してきた。その日の講義の内容が、数日前、家庭教師の渋沢に徹底的に教えこまれたところだったからだ。
自宅に着いたのは午後十時少し過ぎ。早退しなければ帰りはいつも十二時近くになっている。都心に近い高級住宅街はすでに眠りかけているが、宏にとっては、これからが本格的に受験勉強をする時間である。
玄関の前に父の車はなく、かわりに渋沢の車が停めてある。
(親父は今日は帰ってこない日か。会社の重役ともなると大変だな。それにしても渋沢さん今夜はばかに早く来ているな……)
何気なくそう思いながら宏は、チャイムを鳴らした。が、しばらく待っても中から母の和子の出てくる気配がない。
(へんだな、お母さん、手が離せないのかな)
もう一度チャイムを、今度は連続的に鳴らすと、突然ドアが開いて中から渋沢が顔を出した。
「あっ、先生こんばんば」
「……今日は早かったな……」
渋沢はなぜか険しい目で宏を見た。
「……どうしたんですか?」
つい宏は、そう尋ねた。どこかいつもの渋沢と違っていた。妙な緊張感を漂わせているのを宏は感じた。
「いや……別に……」
そう答えて渋沢は宏を中に入れ、ドアの鍵をガチャリと閉めた。
(何か変だな)
と宏は思った。もともとこの渋沢という男は愛想がなくて冷たい感じのする男だ。国立M大の四年生だが、年よりも老けて見えるのはそのせいだ。しかし今夜はさらに冷たいものを漂わせ、非情という感じさえする。
(昼間いやなことでもあったのだろう。まあ、どんな顔をしていたってこの先生は勉強の教え方がうまいし、それに親父が大金を払って夜中に来てもらっているのだから、気にせず勉強を教わることだ)
そう考えながら手を洗おうとキッチンへ行った時、宏は心臓が止まりそうなほど驚いて立ちすくんだ。ダイニングキッチンの流し台の前に、母の和子が洗濯ヒモで両手両足を縛られ、手拭いで猿轡をされて倒れていた。
「おっ、お母さん……!」
宏は目をまん丸く見開いて叫んだ。和子は三十六歳の成熟し切った体を震わせ、額に羞恥と困惑の縦皺を寄せて、何かを叫ぶように呻いた。
「先生!」
宏が叫んで振り返った時、渋沢は宏と体がくっつくくらいそばにいた。渋沢は唇の端を妙に吊り上げて笑い顔を作りながら、
「おまえが帰ってくるまでに犯っちまおうと思っていたが、早退してきちまったんじゃしょうがねえ。可哀想だがお袋が犯られるところを見物してな」
(何をするんだ!)
そう叫ぼうとした時、渋沢の拳が宏の鳩尾にめり込んだ。ううっ、と呻いて宏は渋沢の腕の中に崩れこんだ。
「すまんな。暴力は嫌いだが、騒がれると困るんでな」
そう言って渋沢は宏の体をヒョイと担ぎ上げて肩に乗せた。そして息子が乱暴されたことに抗議するかのように首を打ち振って、くぐもった叫び声を上げた和子の両足のヒモを片手で器用に解いて引き起した。
「歩きな。宏の部屋へ行くんだ」
渋沢は宏を肩に乗せたまま、抵抗しようとする和子を引きずるようにして階段を登っていった。広い宏の勉強部屋には、机と、本棚と、ベッドしか置かれていない。机や畳の上に数え切れぬ程の参考書や問題集が積み上げられている。渋沢は和子をベッドの上に突き倒すと、肩から宏を降ろし、洗濯ヒモで両腕を後ろに廻して縛り上げ、さらに両足も縛った。
「う……ん」
息もできないほど苦しい痛みがようやく柔らいできた宏は、呻きながら渋沢を見た。その目が怒りに燃えている。そんな宏を見下ろしながら渋沢は和子に近寄った。和子のふくよかな頬が歪んで強ばった。
「奥さん、息子の前でやることになっちまったが悪く思わんで下さいよ」
そう言って渋沢が和子の猿轡を解くと、ハアーと大きく息を吸いこんだ和子が、うわずった叫び声を上げた。
「やっ、やめて下さい!いっ、今なら間に合います。考えなおして下さい!」
「ここまできて、そうはいきませんよ」
渋沢は非情な笑いを浮かべて、和子のブラウスのボタンを外し始めた。
「いっ、いやっ、やめて下さい!宏だって見ているじゃないですか!」
和子は激しく体を振りたくって抵抗した。それを見た宏の体は怒りで火のように熱くなった。
「何するんだ。やめろー!」
宏はありったけの声で叫んだ。
(洗濯ヒモで縛られてさえいなければ……)
自分の母親が目の前で裸にされる――そう思っただけで宏の胸は張り裂けそうになった。
「やめろ、手を離せ!」
必死で叫ぶ宏だが、体をイモ虫のようにくねらせるのが精一杯の自分が情けなかった。
「お……お願い、やめて下さい。お金なら好きなだけ差し上げます」
ブラウスのボタンを外されながら、美しい顔を困惑に歪めて叫んだ和子を渋沢は、ジッと見詰めた。
「お金なんかいらねえよ。俺は初めて奥さんを見た時から犯したいと思っていたんだ。今まで旦那の帰らない夜を調べながら機会を狙っていたんだよ」
「!」
和子は絶句した。宏も信じられないという顔で渋沢を見た。何と恐ろしい家庭教師を雇ってしまったのだろう――二人は同時にそう思った。
渋沢は宏の父が大金を積んで来てもらった家庭教師であった。大金を積んだのは、宏が塾から帰ってきた後で、午前零時から三時までの特殊な時間に勉強を見てもらうためだ。
暗い男だが、渋沢の教え方は上手で、もともと成績のよい宏の中学校での順位が短期間でグンと上がったので、よい家庭教師にめぐりあったものだと和子は喜んでいたものだ。
その渋沢が宏の目の前で和子を犯そうとしている。今まで本性を隠して自分達をあざむいてきたのだ――和子はそう思った。
「ひどい奴を雇ってしまった、そんな顔をしてるな二人とも。はは、確かに俺はひどい奴だよ」
そう言って渋沢は乱暴にブラウスの前をはだけ、叫び声を上げて身をよじった和子の頬をビシリッと平手で殴りつけた。
「ひいっ……やめてえ!」
驚きと痛さに叫び声を噴き上げた和子は、殴りつけられた恐怖のために、美しい顔を暗く歪めた。
「やめて下さい、殴るなんて酷いじゃないですか!」
宏が噛みつきそうな顔で叫んだ。
(続く)
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