毎週土曜日更新! The dancing girls are in full bloom at their best.
咲きほころぶ踊り子たちの肖像 舞姫爛漫 第6回 「七雪ニコ」 【1】
写真・文・インタビュー=インベカヲリ★
モデル=七雪ニコ
ストリップ劇場でのストリップショー。黄金時代は過ぎたといえ、根強いファンはいまも劇場に通っています。そして踊り子たちもまた踊り続けているのです。そんな彼女たちの姿を追う「舞姫爛漫」、第6回は七雪ニコさんです!
卒業制作を出したくなかった。出せなかった
大学出てますみたいなのが、いらないっていうか、それは金で買えるんだよなって
大学出てますみたいなのが、いらないっていうか、それは金で買えるんだよなって
七雪ニコという人
客席は“呆気に取られている”という様子だった。七雪ニコは、「ザ・ブルーハーツ」の曲にあわせて、ノリノリでピアニカを吹いている。上着を放り投げ、引きちぎるようにネクタイを外し、勢いよくブラウスを脱いだ。オモチャ箱をひっくり返したように暴れ踊り、“してやったり”とばかりに遠慮ぎみな客に向かって股を広げた。強烈な自我をそのままストリップショーにしたような彼女のパフォーマンスは、華々しくエネルギッシュで、会場の雰囲気をどんどん自分のほうへと引き込んでいく。客席が一瞬戸惑ったふうを見せるのは、彼女の個性的過ぎるキャラクターに、どうリアクションしていいかわからないからだろう。七雪ニコのステージはとにかく元気だった。
ショーの時間が終わり、近くの喫茶店で七雪ニコを待つ。どれだけ明るい人間なんだろう、と思っていたが、席につくなり豪快にテーブルへ突っ伏すと、「もう嫌だ!!」といきなり愚痴を言い始めた。
「もう最悪なんだよ、なんかさ〜」
どうやら色々悩み事を抱えていて、絶望的な気分らしい。落ち着く間もなく、次から次へと言葉が出てくる。
「でも元気を与えられるステージでしたよ」と、感想を述べると、彼女はすごい勢いで否定した。
「えー!? スゴイ暗かったよ今日。もう全然元気じゃない。私、言いたいこと言えない性格なんですね。だからいっつもこうして落ち込むんです」
そうつぶやいた数秒後には、ふと顔を上げ、さきほどから観察するような目で眺めていた編集者に向って「目が怖いですね」と、キッパリ言い放った。
なんだかわからないポップなメチャクチャさに、私は一瞬で引き込まれてしまった。七雪ニコは一体何者なんだろう。
日を改めてインタビューに向かった先は、彼女の自宅。木造の一軒家を、友達5人とシェアしているという。自分のテリトリーに入って安心したのか、七雪ニコは座椅子にふんぞり返り、リラックスした様子だった。あまり女っぽさをアピールしない性質と、ストリッパーという職業はほんの少し違和感を覚える。踊り子というよりはパフォーマーのような気質に、きっと彼女は「表現をしたい人」なんだろうと感じた。大学時代は、芸術学部で映像の勉強をしていたという。
「専攻していたゼミは、映像専門ってわけではなくて、ゲームのソフトとかインスタレーションとか、幅広いんです。だからメディアアートですね。当時は、紙芝居と実写を合わせたような映像作品を作ったり、漫画を描いたりしてました。でも実は、卒業制作を出さないで中退したんですよ」
大学4年生のとき、七雪ニコは自主退学している。
「簡潔に言うと、卒業制作を出したくなかった。出せなかった。大学出てますみたいなのが、いらないっていうか、それは金で買えるんだよなって……青臭くて恥かしいんだけど。なんだろうね、たとえて言うなら尾崎豊みたいな気分? そういうのって普通は思春期にあるんでしょ? でも私は大学のときだったんだよね」
支払った学費も、輝かしい学歴も全てパー。当然、周囲は反対したが、「……でも、辞めるんですよ」の一点張りだったという。
「当時は漫画家を目指してて、それも理由だったのかもしれない。漫画雑誌に応募してて、自分の努力次第ではデビューできるかもって感じだったので。でもそれも描いてたらやる気なくなっちゃって、今は全然描いてないんですけど」
そう言うと、七雪ニコはしょんぼりしてしまった。
(続く)
七雪ニコ
新宿TSミュージック所属。2004年2月21日シアター上野にてデビュー。新潟出身、B型、双子座。好きな言葉は「楽しんでくれよ、さもきゃくたばっちまえ!」。ステージ上ではピアニカを用いるなどPOPな演目を披露、また積極的にタッチショーも行なっている。劇場以外でもパフォーマンスを観ることができる数少ないストリッパーのひとり。
香盤情報
東京・新宿TSミュージック
5月11日-20日
福井・芦原ミュージック劇場
6月11日-20日 撮影=インベカヲリ★
モデル=七雪ニコ
取材協力=シアター上野
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インベカヲリ★ 東京生まれ。編集プロダクション、映像制作会社勤務を経てフリー。写真、文筆、映像など多方面で活動中。著書に「取り扱い注意な女たち」。趣味は裁判傍聴。ホームページでは写真作品を随時アップ中。 インベカヲリ★ http://www.inbekawori.com/ |
08.05.10更新 |
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