毎週土曜日更新! The dancing girls are in full bloom at their best.
咲きほころぶ踊り子たちの肖像 舞姫爛漫
番外編 船橋ストリップシアター若松劇場 【3】
写真・文・インタビュー=インベカヲリ★
ストリップ劇場でのストリップショー。黄金時代は過ぎたといえ、根強いファンはいまも劇場に通っています。そして踊り子たちもまた踊り続けているのです。そんな彼女たちの姿を追う「舞姫爛漫」番外編、本日最終回です!
「若松劇場」の望月社長は、今年で還暦だ。劇場の仕事を弟から引き継いで17年目。スタッフのいる部屋に入ると、社長はちょっとの合間にも従業員に声をかけ世間話をしていた。
私の前のソファに座る。まるでその延長のように、ゆっくりと話しはじめる。
「特殊だよね、この世界は。誰でも踊り子さんになれるわけじゃない。お金を稼ぎたくて入って来ても、すぐに辞めちゃうだろうしさ。要するに、頭を使って自分で出し物をつくっていかなきゃいけない仕事だから、お金ばっかじゃ続かない。それと一つはやはり、バカにはできない。そういう意味で、フーゾクといっても特殊な世界だと思いますよ」
そう言うと、「誰かいい子はいませんかね」と笑った。
劇場の受付
踊り子の写真が並ぶロビー
私がこの連載を始めて驚いたのは、踊り子たちの真剣さだ。時間とお金と頭を使い、毎回のステージを考えるのは並大抵の作業ではない。やる気と努力が必要なのは、ステージを観ているだけでも明らかだ。
「踊り子の仕事は、そこまでお金を残せるほど稼げませんからね。OLの給料よりはいいかもしれないけど、衣装代はかかるし、レッスン費もかかる。自分で振り付けのできない子は振り付け代もかかる。そういうのがありますから」
ラクだからストリップをやる、なんて人は一人もいない。社長の言う「特殊な世界」というのは、そういうことだろう。
「だから踊り子にはね、本当に楽しんでやってくれる子がいいんですよね。私はいつも『楽しんでやってますか?』って聞くんです。嫌々ながらじゃ絶対に続きません。難しい世界なんですよ。いくらやりたいと思っても、ついていけない子だっていますからね」
自分で曲を選び、衣装を考える。ストーリーを考える。踊りのセンスを磨く。やることはたくさんある。
「だから今度も、一旦休んでいた子が、やっぱりもう一度やりたいってことで戻ってくるんですよ。このままじゃ悔しいといって戻ってくるんですね。中にはそれでお断りする子もいますよ。でもその子には、『もう一度頑張りなさい』と、レッスンもし直して戻ってこさせました」
ただでさえ偏見の多い世界でもある。肉体的にはもちろん、精神的にもタフでないと続けられない。だから踊り子には強い人が多い。受付のTさんも同じことを言っていた。私もそう思った。
「ストリップといっても、おっぱいの形がどうこうとかって、そんなもの極端に違う人はいないわけで、皆さん同じなわけですよ。その中でどうかっていったら、お客さんが来て、癒されていくか、楽しんでいけるかなんですよね。売れてる子を見てても、ナイスボディとは限らない。みんな優しい子が多いです」
お客さんに夢を与え、そして楽しませるというのは、ただ脱ぐだけでは成立しない。
劇場に送られてくる踊り子の荷物
舞台袖
個人差はあれど、踊り子もいつか引退する。肉体を酷使し、美を売りにして精一杯頑張ったあと、彼女たちは新しい人生を歩んでいく。
「6年、7年やった子が、堅気に戻っていくわけですよ。中には保育士の免許を取って、保母さんになった子もいますからね。私達も、ここを辞めた後も幸せになって欲しいと思っていますから。結婚であったり、違う道を歩いていくことを決めたりね、そういうチャレンジ精神が出てきたときに、じゃあ自分でそう思うなら辞めたらいいって、引きとめずに送り出します。やっぱり彼女らは意思を強くもってやってますから、これでいいのかってことは本人たちが一番よくわかってる」
社長は踊り子のステージはあまり観ないと言う。かわりに見ているのはお客さんの反応だ。お客さんに話しかけたりもする。
「あるときにね、花電車の寿美さくらさんが来まして、花魁で踊ったんですね。そのときに若いお客さんが何人かいて、『どの踊り子さんが一番綺麗でした?』って聞いたら寿美さんって言いましたね。寿美さんはもう50歳くらいなんですよ。そのときは赤い長襦袢でベッドをやってくれたんですけど、私から見て魅力がすごいんですよ。若い人も同じことを思うんですよね」
女性のお客さんも来る。望月社長は見逃さない。
「50歳か60歳の年配の女性が3人くらいで来たことがあったんですよ。私なんかは、見た目からして何か煩い団体だろうかと思ってしまって、外へ出たときに『どういうアレでこちらに?』って聞いてみたんですよ。そしたらね、『娘が一度観てみなさいよ、すごく綺麗だからって言ったもんで』って言うんですよ。そのお母さん達も『すごく感動しました。今の子は本当に綺麗。私も若い頃にやってみたかったわ』っていうんですよね。人間誰しも、綺麗だなって思うものは同じなんですよね」
ステージ合間の牧瀬茜
若松は古い劇場だ。一時は、20人、30人といた専属の踊り子も、今では4人。それでも望月社長は言う。
「私は今年でちょうど60歳なんですけども、これから巻き返していかないとって思いますね」
Wakamatsu Theater x Inbe Kawori★
取材協力=船橋ストリップシアター若松劇場
千葉県船橋市本町2-17-27
\x87\x84047-432-0767
船橋駅より徒歩7分
座席100席
駐車場無料
「若松劇場」より御招待券を3名様にプレゼント!
ご希望の方は以下のメールアドレスまで、件名に『舞姫爛漫・若松劇場招待券希望』と必ず記入の上、ご招待券の送付先住所・氏名・年齢をご記入の上、ご応募下さいませ。
※当選は発送をもってかえさせていただきます。
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そう言うと、「誰かいい子はいませんかね」と笑った。
劇場の受付
踊り子の写真が並ぶロビー
私がこの連載を始めて驚いたのは、踊り子たちの真剣さだ。時間とお金と頭を使い、毎回のステージを考えるのは並大抵の作業ではない。やる気と努力が必要なのは、ステージを観ているだけでも明らかだ。
「踊り子の仕事は、そこまでお金を残せるほど稼げませんからね。OLの給料よりはいいかもしれないけど、衣装代はかかるし、レッスン費もかかる。自分で振り付けのできない子は振り付け代もかかる。そういうのがありますから」
ラクだからストリップをやる、なんて人は一人もいない。社長の言う「特殊な世界」というのは、そういうことだろう。
「だから踊り子にはね、本当に楽しんでやってくれる子がいいんですよね。私はいつも『楽しんでやってますか?』って聞くんです。嫌々ながらじゃ絶対に続きません。難しい世界なんですよ。いくらやりたいと思っても、ついていけない子だっていますからね」
自分で曲を選び、衣装を考える。ストーリーを考える。踊りのセンスを磨く。やることはたくさんある。
「だから今度も、一旦休んでいた子が、やっぱりもう一度やりたいってことで戻ってくるんですよ。このままじゃ悔しいといって戻ってくるんですね。中にはそれでお断りする子もいますよ。でもその子には、『もう一度頑張りなさい』と、レッスンもし直して戻ってこさせました」
ただでさえ偏見の多い世界でもある。肉体的にはもちろん、精神的にもタフでないと続けられない。だから踊り子には強い人が多い。受付のTさんも同じことを言っていた。私もそう思った。
「ストリップといっても、おっぱいの形がどうこうとかって、そんなもの極端に違う人はいないわけで、皆さん同じなわけですよ。その中でどうかっていったら、お客さんが来て、癒されていくか、楽しんでいけるかなんですよね。売れてる子を見てても、ナイスボディとは限らない。みんな優しい子が多いです」
お客さんに夢を与え、そして楽しませるというのは、ただ脱ぐだけでは成立しない。
劇場に送られてくる踊り子の荷物
舞台袖
個人差はあれど、踊り子もいつか引退する。肉体を酷使し、美を売りにして精一杯頑張ったあと、彼女たちは新しい人生を歩んでいく。
「6年、7年やった子が、堅気に戻っていくわけですよ。中には保育士の免許を取って、保母さんになった子もいますからね。私達も、ここを辞めた後も幸せになって欲しいと思っていますから。結婚であったり、違う道を歩いていくことを決めたりね、そういうチャレンジ精神が出てきたときに、じゃあ自分でそう思うなら辞めたらいいって、引きとめずに送り出します。やっぱり彼女らは意思を強くもってやってますから、これでいいのかってことは本人たちが一番よくわかってる」
社長は踊り子のステージはあまり観ないと言う。かわりに見ているのはお客さんの反応だ。お客さんに話しかけたりもする。
「あるときにね、花電車の寿美さくらさんが来まして、花魁で踊ったんですね。そのときに若いお客さんが何人かいて、『どの踊り子さんが一番綺麗でした?』って聞いたら寿美さんって言いましたね。寿美さんはもう50歳くらいなんですよ。そのときは赤い長襦袢でベッドをやってくれたんですけど、私から見て魅力がすごいんですよ。若い人も同じことを思うんですよね」
女性のお客さんも来る。望月社長は見逃さない。
「50歳か60歳の年配の女性が3人くらいで来たことがあったんですよ。私なんかは、見た目からして何か煩い団体だろうかと思ってしまって、外へ出たときに『どういうアレでこちらに?』って聞いてみたんですよ。そしたらね、『娘が一度観てみなさいよ、すごく綺麗だからって言ったもんで』って言うんですよ。そのお母さん達も『すごく感動しました。今の子は本当に綺麗。私も若い頃にやってみたかったわ』っていうんですよね。人間誰しも、綺麗だなって思うものは同じなんですよね」
ステージ合間の牧瀬茜
若松は古い劇場だ。一時は、20人、30人といた専属の踊り子も、今では4人。それでも望月社長は言う。
「私は今年でちょうど60歳なんですけども、これから巻き返していかないとって思いますね」
Wakamatsu Theater x Inbe Kawori★
取材協力=船橋ストリップシアター若松劇場
千葉県船橋市本町2-17-27
\x87\x84047-432-0767
船橋駅より徒歩7分
座席100席
駐車場無料
「若松劇場」より御招待券を3名様にプレゼント!
ご希望の方は以下のメールアドレスまで、件名に『舞姫爛漫・若松劇場招待券希望』と必ず記入の上、ご招待券の送付先住所・氏名・年齢をご記入の上、ご応募下さいませ。
※当選は発送をもってかえさせていただきます。
開演時間■11:30〜23:30 ※1日4回公演入れ替えなし 料金■平常5,000円/早朝13時まで3,500円 公演時間 1st 11:30〜14:30 2nd 14:35〜17:30 3rd 17:35〜20:30 4th 20:35〜23:30 |
5/1-10の出演予定 千葉なぎさ SAKURA 亜利沙 春乃はなみ 翔田真央 彩星舞 牧瀬茜 ※出演者の詳細については 劇場までお問い合わせ下さい |
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インベカヲリ★ 東京生まれ。編集プロダクション、映像制作会社勤務を経てフリー。写真、文筆、映像など多方面で活動中。著書に「取り扱い注意な女たち」。趣味は裁判傍聴。ホームページでは写真作品を随時アップ中。 インベカヲリ★ http://www.inbekawori.com/ |
08.05.03更新 |
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