毎週土曜日更新! The dancing girls are in full bloom at their best.
咲きほころぶ踊り子たちの肖像 舞姫爛漫
番外編 船橋ストリップシアター若松劇場 【2】
写真・文・インタビュー=インベカヲリ★
ストリップ劇場でのストリップショー。黄金時代は過ぎたといえ、根強いファンはいまも劇場に通っています。そして踊り子たちもまた踊り続けているのです。そんな彼女たちの姿を追う「舞姫爛漫」、番外編として、踊り子たちを陰で支えるストリップ劇場をご紹介です!
劇場の表側へまわると、ロビーに大量のリボンが置いてあった。近くにリボンさんがいる。しばらく待ち伏せすると、30歳を少し過ぎたくらいの男性が現れた。
「リボン歴は2年半くらいですかね。それまでは一ストリップファンでしたよ。フラっと観にいって、こういう世界もあるんだって知って、気付けばこんな風になってました。最初に追いかけてた姐さんが引退するときに、何かしてあげたいなって思って、リボンをやったんですよ。それがきっかけですね」
ストリップ劇場に行くと、一度は目にするのが、このリボンさんだ。踊り子がポーズを切るタイミングに合わせて客席からリボンを投げる。たいがいは踊り子のファンだ。
「練習はしましたね。リボンを掴むときはこう、投げるときはこうって大まかに師匠に伝授されて。師匠とは劇場で知り合いました」
そういってリボンを掴んでみせる。いっぺんに片手で9本。反対の手でリボンの先を掴む。まるで野球選手のように素早く投げるポーズをキメてくれた。カッコイイですね。
「12本投げする人も結構いますよ。私は本当に未熟者ですから、9本が限界です」
投げ終わったリボンは、また元の形に巻き直す。機械を使うと、あっという間に元に戻った。
以下、リボンさんとの一問一答。
――すごいすごい! この“リボン巻き機”は自分で作るんですか?
「これはスターバックスで売ってるミルクフォーマーなんですよ。ヘッド部分を外して軸を差して円盤を入れる。関西に住んでるストリップファンの方がこの軸部分を開発したんですね。日本で使われてるこの軸の7割8割がその人から買ったものじゃないかな」
――それはどこで買えるんですか?
「委託販売してるのを買うか、知人から譲り受けるかしてね。これはちなみに貰ったやつ」
リボン巻き機を使えば、数秒で元通り
先端に軸と円盤を挿して使う
――いろんな色のリボンが並んでますが、これは決まってるんですか?
「ベッドショーのときに投げるのは基本的に白。これは暗黙の了解ですね。ベッドショーでは踊り子さんの近くで投げることが多いので、目立ち過ぎないほうがいいんですよ。逆にオープンショーのときは賑やかしなので、華やかな色を添えるんです」
――銘柄は決まっていたりするんですか?
「定番なのはGラインってやつですね。今日持ってきてるやつがそうです。包装用品で売ってます。でもこれ、買ってすぐに使えるわけじゃないんですよ。新しいリボンだとカミソリみたいに皮膚が切れちゃうんです。だからハサミの背でしごいたり、定規に挟んでしごいたりして、表面を擦るんですね。それで柔らかくしてから初めて使える。手間はかかってますよ」
――リボンを投げるに当たって難しいことってなんですか?
「えっと、一番難しいのは、お客さんにかけないことですね」
――そこまで気を遣ってるんですか!
「基本的に踊り子さんにかけない、お客さんに被らないっていうのは、大事なんです。それでもどうしても場内が混んでるとか、引くのが失敗して被ったときなんかは、すみませんでしたって謝る。謝らない人もいるけど、そうすると、「誰々についてるリボンはマナーがなってない」とか陰口言われちゃうんで」
――タンバリンはやらないんですか?
「私はタンバはやらないですね。昔やってみたけど、リズム感があんまりよくないみたいで。リズム感がないと、踊り子さんがリズム外して迷惑かけるんですよ。調子狂うって人が結構いて。リボンよりタンバのほうが素質が必要ですね。リボンは練習すればなんとかなるけど、タンバはリズム感ないとね」
――リボンさんとして加わる魅力ってなんですか?
「参加してるって意識もありますし。リボンが飛んでると嬉しいっていう踊り子さんもいるんで、そういう意味で応援につながるかなっていうのもありますね。ただ、どうしても踊り子さんに付きまとっちゃうようなリボンさんも時々いるので、そういう風にならないように気をつけてます」
――好きな踊り子さんが引退しちゃったときってどんな気持ちなんですか?
「頭が真っ白になりますね」
――好きな踊り子さんってどんなタイプですか?
「『ここまで頑張ることないのに』ってくらい、頑張るところをみせられると、ああ応援したいなって思います。可愛いとか、肌が綺麗ってだけだと『いいね』で終わっちゃいますからね。やっぱり応援も、お金と時間が掛かるので」
――一番遠くだと、どこの劇場まで応援に行きました?
「福岡県。いや、大分の別府かな。東京のファンが、大阪に行くっていうのは、そんなに遠距離ってほどでもないんですよ。北は札幌から、西は北九州、別府まで」
――いろんな劇場を見てきた方からすると、若松劇場はどういう印象ですか?
「バラエティにとんだ踊り子さんが乗るので、そういう意味で楽しい劇場ですよね」
――ちょっと古めかしい雰囲気もいいし。
「ああ、やっぱりねえ、最新の設備っていうよりは、レトロな感じのほうがこの業界的には合ってると思いますね」
――ストリップ劇場がどんどん潰れていってる現状に対してはどう思います?
「残念ですね。ある意味、日本の文化だと思うんですよ。警察ももっと他に取り締まるべきものがあるだろうと思いますよ。あと、ぶっちゃけ摘発とか入ると、踊り子さんが親バレする可能性もあるので、それがすごく可哀相だと思いますね。他の踊り子さん達だって、いつ自分がガサ入れで引っ張られるかって不安を抱えながら過ごすわけだから、気の毒だなって思います」
饒舌なリボンさんは、最後まで丁寧に質問に答えてくれた。ファン同士が行きかう場内では、高度なコミュニケーション能力が必要なのだろう。ストリップの客席にも、一つのドラマがあるのだ。
リボンさんの道具一式
リボンを並べるトレーと、使用後に入れる洗濯ネット
Wakamatsu Theater x Inbe Kawori★
取材協力=船橋ストリップシアター若松劇場
千葉県船橋市本町2-17-27
\x87\x84047-432-0767
船橋駅より徒歩7分
座席100席
駐車場無料
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片瀬永遠 【1】>>>【2】>>>【3】>>>【4】>>>【5】
「リボン歴は2年半くらいですかね。それまでは一ストリップファンでしたよ。フラっと観にいって、こういう世界もあるんだって知って、気付けばこんな風になってました。最初に追いかけてた姐さんが引退するときに、何かしてあげたいなって思って、リボンをやったんですよ。それがきっかけですね」
ストリップ劇場に行くと、一度は目にするのが、このリボンさんだ。踊り子がポーズを切るタイミングに合わせて客席からリボンを投げる。たいがいは踊り子のファンだ。
「練習はしましたね。リボンを掴むときはこう、投げるときはこうって大まかに師匠に伝授されて。師匠とは劇場で知り合いました」
そういってリボンを掴んでみせる。いっぺんに片手で9本。反対の手でリボンの先を掴む。まるで野球選手のように素早く投げるポーズをキメてくれた。カッコイイですね。
「12本投げする人も結構いますよ。私は本当に未熟者ですから、9本が限界です」
リボンを投げるときのフォーム |
9本投げは、3本×3本を片手で持つ |
投げ終わったリボンは、また元の形に巻き直す。機械を使うと、あっという間に元に戻った。
以下、リボンさんとの一問一答。
――すごいすごい! この“リボン巻き機”は自分で作るんですか?
「これはスターバックスで売ってるミルクフォーマーなんですよ。ヘッド部分を外して軸を差して円盤を入れる。関西に住んでるストリップファンの方がこの軸部分を開発したんですね。日本で使われてるこの軸の7割8割がその人から買ったものじゃないかな」
――それはどこで買えるんですか?
「委託販売してるのを買うか、知人から譲り受けるかしてね。これはちなみに貰ったやつ」
リボン巻き機を使えば、数秒で元通り
先端に軸と円盤を挿して使う
――いろんな色のリボンが並んでますが、これは決まってるんですか?
「ベッドショーのときに投げるのは基本的に白。これは暗黙の了解ですね。ベッドショーでは踊り子さんの近くで投げることが多いので、目立ち過ぎないほうがいいんですよ。逆にオープンショーのときは賑やかしなので、華やかな色を添えるんです」
――銘柄は決まっていたりするんですか?
「定番なのはGラインってやつですね。今日持ってきてるやつがそうです。包装用品で売ってます。でもこれ、買ってすぐに使えるわけじゃないんですよ。新しいリボンだとカミソリみたいに皮膚が切れちゃうんです。だからハサミの背でしごいたり、定規に挟んでしごいたりして、表面を擦るんですね。それで柔らかくしてから初めて使える。手間はかかってますよ」
――リボンを投げるに当たって難しいことってなんですか?
「えっと、一番難しいのは、お客さんにかけないことですね」
――そこまで気を遣ってるんですか!
「基本的に踊り子さんにかけない、お客さんに被らないっていうのは、大事なんです。それでもどうしても場内が混んでるとか、引くのが失敗して被ったときなんかは、すみませんでしたって謝る。謝らない人もいるけど、そうすると、「誰々についてるリボンはマナーがなってない」とか陰口言われちゃうんで」
――タンバリンはやらないんですか?
「私はタンバはやらないですね。昔やってみたけど、リズム感があんまりよくないみたいで。リズム感がないと、踊り子さんがリズム外して迷惑かけるんですよ。調子狂うって人が結構いて。リボンよりタンバのほうが素質が必要ですね。リボンは練習すればなんとかなるけど、タンバはリズム感ないとね」
――リボンさんとして加わる魅力ってなんですか?
「参加してるって意識もありますし。リボンが飛んでると嬉しいっていう踊り子さんもいるんで、そういう意味で応援につながるかなっていうのもありますね。ただ、どうしても踊り子さんに付きまとっちゃうようなリボンさんも時々いるので、そういう風にならないように気をつけてます」
――好きな踊り子さんが引退しちゃったときってどんな気持ちなんですか?
「頭が真っ白になりますね」
――好きな踊り子さんってどんなタイプですか?
「『ここまで頑張ることないのに』ってくらい、頑張るところをみせられると、ああ応援したいなって思います。可愛いとか、肌が綺麗ってだけだと『いいね』で終わっちゃいますからね。やっぱり応援も、お金と時間が掛かるので」
――一番遠くだと、どこの劇場まで応援に行きました?
「福岡県。いや、大分の別府かな。東京のファンが、大阪に行くっていうのは、そんなに遠距離ってほどでもないんですよ。北は札幌から、西は北九州、別府まで」
――いろんな劇場を見てきた方からすると、若松劇場はどういう印象ですか?
「バラエティにとんだ踊り子さんが乗るので、そういう意味で楽しい劇場ですよね」
――ちょっと古めかしい雰囲気もいいし。
「ああ、やっぱりねえ、最新の設備っていうよりは、レトロな感じのほうがこの業界的には合ってると思いますね」
――ストリップ劇場がどんどん潰れていってる現状に対してはどう思います?
「残念ですね。ある意味、日本の文化だと思うんですよ。警察ももっと他に取り締まるべきものがあるだろうと思いますよ。あと、ぶっちゃけ摘発とか入ると、踊り子さんが親バレする可能性もあるので、それがすごく可哀相だと思いますね。他の踊り子さん達だって、いつ自分がガサ入れで引っ張られるかって不安を抱えながら過ごすわけだから、気の毒だなって思います」
饒舌なリボンさんは、最後まで丁寧に質問に答えてくれた。ファン同士が行きかう場内では、高度なコミュニケーション能力が必要なのだろう。ストリップの客席にも、一つのドラマがあるのだ。
リボンさんの道具一式
リボンを並べるトレーと、使用後に入れる洗濯ネット
(続く)
Wakamatsu Theater x Inbe Kawori★
取材協力=船橋ストリップシアター若松劇場
千葉県船橋市本町2-17-27
\x87\x84047-432-0767
船橋駅より徒歩7分
座席100席
駐車場無料
開演時間■11:30〜23:30 ※1日4回公演入れ替えなし 料金■平常5,000円/早朝13時まで3,500円 公演時間 1st 11:30〜14:30 2nd 14:35〜17:30 3rd 17:35〜20:30 4th 20:35〜23:30 |
4/21-30の出演予定 詩田笑子 一愛遥 蒼井夏恋 西園寺瞳 鈴木りん 麻吹ルキア ※出演者の詳細については 劇場までお問い合わせ下さい |
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インベカヲリ★ 東京生まれ。編集プロダクション、映像制作会社勤務を経てフリー。写真、文筆、映像など多方面で活動中。著書に「取り扱い注意な女たち」。趣味は裁判傍聴。ホームページでは写真作品を随時アップ中。 インベカヲリ★ http://www.inbekawori.com/ |
08.04.26更新 |
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