毎週土曜日更新! The dancing girls are in full bloom at their best.
咲きほころぶ踊り子たちの肖像 舞姫爛漫 第6回 「七雪ニコ」 【4】
写真・文・インタビュー=インベカヲリ★
モデル=七雪ニコ
ストリップ劇場でのストリップショー。黄金時代は過ぎたといえ、根強いファンはいまも劇場に通っています。そして踊り子たちもまた踊り続けているのです。そんな彼女たちの姿を追う「舞姫爛漫」第6回七雪ニコさん、いよいよ最終回です!
私、すごい自分の顔とか好きなんだけど、なんかブスとか言われる顔してんじゃん
なんで生きてるだけで文句つけられてんの?みたいな
なんで生きてるだけで文句つけられてんの?みたいな
絶望を片手にストリップ
「なんでストリッパーだったんですかねえ?」
素朴な疑問を投げかけてみる。どちらかというとステージは豪快で、七雪ニコ自身は、男に囲まれてセクシーさをアピールするような、女っぽいタイプではない。 ウ〜ンと考え、自分の頭の中を探るように話し始めた。
「なんかストリップってすごいナチュラルなことだと思う。『こんなに大公表していいんだあ』みたいな感じ。ダイレクトに『アタシってこうなんです』みたいな。表現のものすごい頂点だと思う。それはストリップの持ってる要素すべてに感じますよね。どの部分って聞かれると難しいなあ。まず、人前に立つことでしょ、踊ることでしょ、脱ぐことでしょ、そこからワタクシの世界に入るってことがあると思う。これはストリップ劇場ってことに関してだけど、大多数のお客さんっていうのは男性で、イヤラシイ気分になりたくて来てるわけだから、自分をアピールして誰かを挑発するっていうのが、表現っていうことで頂点だと思う。自己表現ってわかりやすく言うと『ワタクシはあ』だと思うんだけどさ、漫画とか映像とかより、『ワタクシはあ』なんだよね。服を選ぶ、音楽を選ぶ、全部がそうだと思うし。さらに可能性のある表現の仕方だと思う。夢を持たせることができるっていうか。夢っていうのはワクワク、ドキドキさせる、何かをやりたいと思ったり、もっと何かを見たいと思ったり、自分にも何かできると思ったり、そういうことを人に思わせることのできる表現手段の一つ」
しかしストリップのステージは、男が持つ「可愛い女の子」のイメージを一方的に求められる場でもある。女の考えるセクシーさと、男が感じるエロさは、必ずしも一致しない。特に自己表現が前面に出ると、そのギャップも広くなる。七雪ニコは、男が苦手だと言った。
自分がいいと思ってるものを、男の一方的な価値基準で否定されるのは辛い。 そのことにステージ上でも振り回されることになったら、もっと大変だ。
「だってもう死ぬしかないみたいな感じ。観客が私のこと悪く思ってるーって思いながら踊ってたら、いじめ、いじめられの関係でしかなくなるよね。私が深刻な状況になれば観客にも伝わるし、『あれ、これは楽しんでいいのか悪いのか? どんな目でみればいいんだ』とか。そんな状況で踊ってても、私が追い詰められるだけだから。誤解だよね。殺し合いなわけじゃないのに、私は死んでしまいたくなる」
七雪ニコは、心の動きに敏感だ。ステージという特殊な他者との関係性の中でも自分を正しく出し切るために、必死で頭を使う。
「絶望とかよくするんだよね。性格が暗いから、ステージがドロドロしがちなところがある。集中してその先に絶望がある。何かに集中すると気が狂いそうになるんだよね。だからステージはあらかじめ楽しいものを用意しておくわけよ。私自身が絶望の塊でも、音楽とか衣装とか構成というものが明るければ、なんかトントンみたいになるじゃん」
ステージでの七雪ニコは、人を巻き込んでいくパワーがある。七雪ニコが全世界、という空気が会場を覆う。だからこそそこへ到達するまでに、たくさんの思考を巡らしているのだ。
「理想を言えば、フラットな感覚ってよく言うんだけど、平べったい、こっから何かを始めたいっていうのがあって、それは気にしてない状態なんだよね。何を言われても『ふーん、そうか』っていう。それがステージに立ちたい状態」
複雑な感情の持ち主だった。あらゆる方向に屈折していて、ひとつひとつを理解することはとても難しい。七雪ニコはそんな難解な自分と向き合って、それを世界に知らしめるようにして生きているのかもしれない。踊りだったり、言葉だったりを使って。
「なんかあんまりわかんないよね。でもどうでもいいんじゃない私、みたいな。でもやれることはやりたいねえ。世界の終わる日には踊りたいと思うね(笑)」
最後は放り投げるようにそう言った。七雪ニコはやはり表現者だった。
七雪ニコ
新宿TSミュージック所属。2004年2月21日シアター上野にてデビュー。新潟出身、B型、双子座。好きな言葉は「楽しんでくれよ、さもきゃくたばっちまえ!」。ステージ上ではピアニカを用いるなどPOPな演目を披露、また積極的にタッチショーも行なっている。劇場以外でもパフォーマンスを観ることができる数少ないストリッパーのひとり。
香盤情報
福井・芦原ミュージック劇場
6月11日-20日 撮影=インベカヲリ★
モデル=七雪ニコ
取材協力=シアター上野
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インベカヲリ★ 東京生まれ。編集プロダクション、映像制作会社勤務を経てフリー。写真、文筆、映像など多方面で活動中。著書に「取り扱い注意な女たち」。趣味は裁判傍聴。ホームページでは写真作品を随時アップ中。 インベカヲリ★ http://www.inbekawori.com/ |
08.05.31更新 |
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