The decision to fight against the world which cannot be finished.
“終われない世界”に、立ち向かう決意を。 |
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前回の最後には銃声が、そして今回は大地ごと吹っ飛ぶ爆発で終わりましたが、この調子でどんどんアクションシーンを増やしてもらいたい! しかし、不快な回でしたね今回は。第4回の時に「今後はあのおかっぱの嫌らしいザビエルに期待!」なんて言ってましたが、ここまで不快な役回りとは思わなかった。リアルタイムで観てたらもう電話してますよ。「お宅の局は何考えてるんですか? 今回の『フラクタル』ですよ! ナウシカガールにあんなことするなんて、ふざけている! こんな不快な放送は初めてです。即刻、放映を取りやめてもらいたい! デモも辞さないつもりです!」なんてね。いや、あそこで天真らんまんドッペル少女が突入して来てくれてよかった。あのまま「調べて」たら、もうどこに怒りをぶつけていいか分からない。セックス・ピストルズが初めてお茶の間に登場した時、「FUCK」って発言して大騒動を起こしたんですが、その時に思わずTVの画面にケリを入れて新聞記事になった人がいた。トラック運転手のジェイムス・ホームズさんていうんですけど、僕もホームズさんみたいになっていたかもしれない! あぶないところです。
ちなみにそれを聞いてセックス・ピストルズのジョン・ライドンは「スイッチを切るってこと、聞いたことなかったのかな」とコメントしたらしいですね。ジョン・ライドンって冷静な人なんですね。
さて、いきなり撃たれて「どうなるの!?」と思っていた主人公は結局死んでいなかったんですが、やっぱり重傷なのか?という訳でもなくもう、あっさり治っちゃうんですね。それもフラクタル技術のおかげでしょう! けどここまであっさり治ると撃たれる必要あったの?って気もしますね。ただ単に拉致されるだけでいいんじゃないの、山本監督。あんなに驚いた僕の気持ちに対してどう落とし前をつけてくれるんだ! デモも辞さない!ってもうそれはいいんですけど、今回ナウシカ少女と主人公は、撃たれた直後に出現した変態神父によって連れ去られて、どこかの秘密基地に監禁されています。
そこで、まず変態神父がナウシカガールに「父さま」って呼ばれてる。後に判明するのは血は繋がっていないが育ての親的存在であるってことなんですが、こいつが主人公の治療をカタにナウシカガールを脅すんですね。もうこれがほんと最悪な訳ですよ! まずその汚い顔をナウシカガールの腹にべたべたなすりつける!「良い匂いだ〜」とか言って、ほんとに良い匂いなんだろうな〜なんて思っちゃいましたけど。しかもここが、胸に顔を押し付けた変態神父目線で作画されている! だから、ほのかに暖かいんだろうな〜なんて、一緒に思っちゃいましたけど。そして、侮蔑の表情で見下ろすナウシカ少女との間には近親相姦的関係性がぷんぷんな訳です。ゲスな男なんですけど、ナウシカ少女は逆らえないという厳然とした力関係があるんですね。だからまあ少し興奮もしてしまった訳です。
そしてこの男が、イスラム教もキリスト教も神道もそういうとこありますが、女性は汚れた存在だ!みたいな。それで「お前が鍵として有効かどうか調べる」って言って、産婦人科の足開くような器具の前に連れていくんですよ。『フラクタル』がこんな悪趣味なアニメだったとはね〜。昔『ゲルマニウムの夜』(大森立嗣監督、2005)って石橋蓮司演じる救護院の神父が少年にフェラさせまくってる映画があったんですけど、それ以来の不快神父No.1の座を奪い取った!今回最後に大爆発する建物の中にいたんですけど死んでないでしょう、この人にはもっといい死に場所があるはずです。
今回は、ドッペル少女のそしてナウシカ少女の出生の秘密が明かされます。というか実はよく分からなかったんですが。なんか深刻そうに話してたけど、あんまり頭に入ってこなかった……。どうも、地下室に行くと少女が大量に瓶詰めされていて「みんなフリュネ(ナウシカ少女)よ」とか言われちゃうんですが、かといって電子的存在でも、クローンでもないと。となると、ナウシカ少女は大量生産されている人工の人間なのかもしれませんね。
しかし重要なのは、彼女たちが「目的」を持って作られてるということで、それが「世界の鍵」だということですが、それが嫌でナウシカ少女は僧院を飛び出したんだと。つまり、ナウシカ少女は不良だった!「アタイは、あんたらの押し付けた役割なんか知らないよ!生まれて来たからには勝手にやるんだ!」心根としてはこういうことでしょう。
60年代アメリカでカウンターカルチャーが花開いた。何に対するカウンターかっていったら「目的」に対するカウンターです。「俺は兵士になるために生まれて来た訳じゃねえ!ベトナム戦争はいかねえ!」とか、それがやがて「俺は経済単位になるために生まれて来た訳じゃねえ!ハッキングしてやる!」とか言って、電話タダがけとか、コミューンで自活とか、オープンソース運動とかになる訳です。生まれてくる人間に「目的」を予め設定してる社会は全体主義です。それに反抗するには不良になるかテロリストになるかハッカーになるしかない。でもだとするとこの娘は何を目指してるんでしょうか。世界をどうこうする明確なプランがあって、逃げてるのかと思ってましたが、ただ気に入らないから逃げ出しただけなのかな。それじゃ『俺たちに明日はない』(アーサー・ペン監督,1967)になっちゃうぜ!でも天真らんまんドッペル少女を連れ出してるからやっぱりハッカーなのかもしれません。
そして、ここではそんな大量生産ガールズと主人公の出会いもありました。主人公を見張ってるのがそんなガールズの1人なんですが、彼女がケガをすると主人公が「これで、君を見分け易くなるね」と言うんですね。そうすると彼女はもういきなり自己の唯一性に目覚めて、主人公の見方になっちゃう。なんか随分カンタンな感じもしましたけど。
主人公は後半、たとえ出自が大量生産だとして、見分けのつかない製品だとして、それでも誰かとの関係性において特別な唯一の存在になるんだ!ということを主張します。スヌーピーに出てくる、ライナスが手放すことが出来ない毛布はそうですよね。Nintendoの一時流行った美談もそうです。ゲームボーイの修理を頼んだら新品交換されて返って来たけど、なんと子供が貼っていたシールが全く同じ位置にもう1度貼り直してあった!みたいな奴ですけど、これもNintendoは「その関係性における特別な唯一性」に気づいた対応をした訳です。
でもナウシカ少女が主人公の特別な存在だとして、このフラクタルの世界でそれはどういう意味を持っていくんでしょうか。今回の話で、目の前にいるナウシカ少女は、ぼくの特別なナウシカ少女なんだ!ってなりましたけど、じゃあその娘と電話で話すのはどうなんでしょうか。skypeで顔を見ながら話すのは。じゃあナウシカ少女が操作するナウシカ少女そっくりのアバターと暮らすのはどうでしょう。とまた第1話に戻っていく気がするんですが…。いややっぱりそこで触れたい、ということなのかな…。うーん。と悩んでいると、場所を嗅ぎ付けたテロリスト(第6話に出て来た語尾延ばし軍団)が盛大にこの秘密基地を爆破して今回は終わります。
文=ターHELL穴トミヤ
フラクタル オリジナル・サウンドトラック(エピックレコードジャパン)
関連リンク
フラクタル - FRACTALE - 公式サイト
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12.02.12更新 |
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