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2012.9.29 Sat at Shinjyuku FACE
2012年9月29日(土) 新宿FACEにて開催
「大人の禁じられたサーカス・巨大な見世物小屋」をコンセプトに据え、身体芸術の祭典として2002年以来ほぼ毎年開催されてきたエンターテイメントイベント「サディスティックサーカス」。今年は「10年目の大逆襲!」を表題とし、約20組もの出演者による数年ぶりのオールナイト興行となりました。世界中から結集した「魑魅魍魎」たちによるスペシャルなパーティー。その過激な全貌を早川舞さんにレポートしてもらいます!!

取材協力=サディスティックサーカス運営事務局
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「大人のトラウマ」をテーマに2002年から始まったサディスティックサーカス(以下・SC)。サーカスというだけあって、ショーの観覧がメインの一風変わったフェティッシュイベントです。
2012年の今年は10周年ということで、一回目にも参戦していたわたくし、「そうか~、10年か。そりゃ年もとるわ」と、口まわりの皺を気にしつつ、感慨深い思いで足を運びました。

会場となったのは新宿FACEというプロレス会場です。SCはショーがメイン、というよりショーしかないわけですが、今回はその「どこまでも見世物」なカラーをさらに徹底したということでしょうか。リング上は360度すべてが真っ正面で、より見世物色が強くなったように感じました。

新宿FACEがあるのは歌舞伎町のド真ん中。大きくはないエレベーターでは一度に何人も運ぶことはできないので、自然、建物の外側に行列ができたのですが、お客さんからしてゴスゴス・フェチフェチした格好の方が多く、歌舞伎町に一種異様な毒気をまき散らしていましたね。

オールナイトでのイベントで、予定されたショーの数は16ステージ。これはヘタをしたらダレるのでは......という懸念もありましたが、数本を除いてどれも15~30分前後の短さで、クライマックスの直後にスパッと終わる感じ。テンションを維持したままで次が始まるので、むしろ興奮度は一定して高めでした。

出演者は以下の方々。

紫ベビードール/くるくるシルク/Midori/レ・ロマネスク/浅草駒太夫/フープ東京 AYUMI/ペインソリューション/ゴキブリコンビナート/浅葱アゲハ/黒心ガールズ(ジーナ&リタ)/首くくり栲象+ルドルフEb.er+ガスマスクレディス/黒岩安紀子+東方力丸/早乙女宏美/奈加あきら/灰野敬二/司会進行:山田広野

読者の皆様におかれましても、誰ソレ?という出演者もいれば、まさかのあの人が!という出演者もいるでしょう。そんな彼らのパフォーマンスを、来場者の胸を掻きたててやまなかったプログラムの紹介文(毎回絶妙なんですよこれが)とともに、1ステージずつピックアップしていきたいと思います。

■山田広野
当代一! 魅惑の見世物活弁士、至極の色男話芸!


活弁士・山田広野さんの軽快なトークで始まるオープニングはもはやおなじみの感。これから始まるショーへの期待とともに、「あぁ、またここに帰ってきたな」という安堵も湧き上がります。



↑活弁士・山田広野さん。こぶしを握り、常に肩幅に足を広げた独特の立ち姿と声、そしてトークはもはやSCの名物といえるのでは。


■紫ベビードール
コケティッシュな娘達のバーレスクダンスショウ!


オープニングアクトは、紫ベビードールによるバーレスクダンス(ストリップまではいかないけどセクシーで、エンターテインメント性を強調したダンス)。カラフルなウィッグとベビードールの女の子たちが踊る姿は、オープニングにふさわしい華やかさでした。
ダンス自体はアップテンポだったのですが、小動物めいたかわいらしさもあり、ほんわかした気分で見ていたら、途中でベビードールを脱いで上半身はニップルカバーのみに。やー、さすがバーレスク。隣にいた男子二人組が「来て大正解だよ!」とさっそく喜んでいました。

■くるくるシルク
炎、跳、廻、驚異の男衆、本物のサーカス曲芸団!


続いては、10年前から一貫して出演のくるくるシルク。世界で活躍する大道芸集団です。集団といっても構成人数は3名。しかし3名いれば十分だぜ!といわんばかりに息もつかせぬ大道芸を見せてくれました。
まずは股間から光る玉(これはボールじゃなくて玉っていうべきなんだと思う)を出して投げ合い、受け取り合います。そのうちに難易度がどんどん上がってボールの数を増やしたり、3人が場所を入れ替えたり。去年同様観客も巻きこんで、借りた靴とピコピコハンマーでジャギングしたり、お客さん真ん中に立たせて、ナイフを投げ合おうとしてみたり(結局やりませんでした)。大道芸の楽しさを満喫しました!
そういえば去年は終始無言でしたが、今年は喋っていましたね。


↑壮大なクラシック音楽とともにした後、股間から玉を取りだし大道芸を披露。このギャップが楽しい。


■Midori
リング狭しと暴れ回るキンバクアート生花ショウ!


三番手はアメリカと日本のハーフのボンデージ・アーティストであるMidori。
以前、緊縛イベント「冬縛」で彼女のショーを見たのですが、緊縛と、独特の視点で捉えた日本文化の融合が何ともグロテスク&エロティックで、SCでもその方向性は健在でした。
明転した舞台に響くのは犬の遠吠えと虫や蛙の声。そこに白塗り&着崩れた遊女(たぶん)装束のMidoriさんが現われる。
続いて出てきたのは駆け落ちと思しき男女。衣装や背景からして明治時代? でも東南アジアのような雰囲気も。Midoriさんは二人を縛りあげ、大量の草花で飾りたて......そう、これはまさにイケバナ。二人はまるで、羽のかわりに植物を生やした天使か怪物のように見えました。あるいは、植物に侵食されていくようにも......。
最後は体に縄を絡ませたままの二人を引きずって退場。終わってみれば極彩色の悪夢から目覚めたよう。思わず厨二用語を連発してしまう、耽美なショーでした。


↑白塗りのMidoriさんは地縛霊? 怨霊? はたまた生身の人間? 設定なんてどうでもいいんだぜ。とにかく不気味(褒めてますよ)。

↑Midoriさんにじわじわと縛られていく男女。草花で埋もれるほど飾られた後、とつぜんナイフで縄を切られるというエンディングへ。


■レ・ロマネスク
パリ発、レ・ロマネスク経由、あなた~行き♪♪♪


レ・ロマネスクは、とにかく笑いました。爆笑しました。ジャンルでいうとポップ・デュオということになるようなのですが、音楽という型にはめられない楽しさでした。エセっぽいフランス語を織り交ぜたMC、軽快ながらも微妙にバタくさい振付、見るからにお笑い色の強い衣装とメイク。しかし何といっても、やっぱり音楽が最高でした。
ストーキングする侍の心情を和風なメロディで歌いあげた「拙者サムライダンディ」、どこかで聞いたフォークソングのフレーズが連発される「俺たち」、観客にも参加も促してノリノリで踊り歌われた「YOKOZUNA -The king of sumotori-」......
ちなみに、山田広野さんに「フランスでもっとも有名な日本人」と紹介されていて、絶対ギャグだろうと思っていたのですが、後でググってみたら本当でした。フランスを中心としたヨーロッパでの活動歴もかなり長いようなので、エセっぽいフランス語もエセっぽいけど実際にはばっちり通じちゃうんだと思います。


↑ついリズムをとってしまいたくなる、きれいなメロディのダンスミュージック(「俺たち」以外)でしたが、歌詞が、あぁ歌詞が......。


■浅草駒太夫
齢71歳、昭和を代表する伝説のストリッパーが降臨!


この方は一昨年から3回目の続投、日本最高齢の現役ストリッパー・浅草駒太夫。「一枚脱げば昭和が滲んで見える」とは司会の山田広野さんの言ですが、まさに昭和の一空間がそのまま新宿のプロレスリングの上に出現したかのような雰囲気と、ご本人の佇まいでした。
行燈を片手にした花魁衣装の駒太夫さんは、まずは早いテンポの曲で衣装を脱ぎ、続いての歌謡曲調の曲で長襦袢を......脱ぎそうで脱がない。71歳の「脱ぎそうで脱がない」は、スゴイですよ。エロいかエロくないかっていうよりも、確立された芸として見てしまいます。そういう意味では駒太夫さんの舞台って、男子が女子と見に行けるストリップなんじゃないでしょうか。

■フープ東京 AYUMI
胸騒ぎの腰つき! フラフープ腰振りNo.1娘!


こちらはフラフープのショーです。
パフォーマーは一見性別不明な馬マスク&全身キャットスーツの人物。馬マスクが銀の棒を手に持ってフープを器用に回す姿は、何やら呪術めいても見えました。
やがて馬マスクはマスクをはずし、全身タイツも上半身のみですが脱いで、ここでやっと女性だと判明。いや、娘というからにはそりゃ女子なんだろうけど、主役はもっと後にやってくるのかなとか......もしかしてみんなわかってた? 私はわからなかったんですよ! 体が鍛えられているためなのか、タイツごしでは判別しにくかったんです。でも、それがまた無性的な雰囲気で妖しくて、よかったんですけど。
銀の棒はただの飾りじゃありませんでした。元・馬マスクさんはそれを両乳首に通して、その姿でフラフープを! 乳首を貫通した棒にフープが当たりそうで、痛がっていいのやらハラハラしていいのやら......フープを見て持つとは思わなかった感想でした。


↑ラストに向かうにつれ、かわいらしい風船や電飾つきのフープなどが飛びだし、ハデでポップになっていきました。


■ペインソリューション
世界のショック! 空前絶後のサイドショウ登場!


前回トリを務めた、ノルウェーの激痛集団・ペインソリューション。今年は「まずは軽くジャブ」的なpart1セクションと、「本格的に痛がりまっせ」なpart2セクションの2本だて。
まずはpart1ですが、ジャブでも気合は入れとるで!とばかりに工具用ドリルを鼻に刺したり、口から鼻に貫通させた風船を膨らませたりしていました。


↑団長・イズ・バック。ノルウェーだけあって知的なヴァイキングといった風貌ですが、やってることもやらせることも変態じみてます。


■ゴキブリコンビナート
綺麗は汚い、汚いは綺麗! フリークス歌劇団!


ゴキブリコンビナートは安定の不謹慎。今回の主役は結合双生児ならぬ結合三つ子、ですが、ゴキブリコンビナート方式で、ガムテープでぐるぐる巻きにしてムリヤリくっつけているので、当然足もとがおぼつかないです。就職できないことに憤慨しているうちに全員でもんどりうって倒れて、何とか起き上がって、仲直りの握手をしようとして、また倒れて......これって笑っていいの?と引け腰になってしまうけどやっぱり笑ってしまう、陰か陽かでいったらぶっちぎりで陰のお笑いです。この腰が引ける感覚には、癖になる何かがあります。サーカスとか見世物小屋って、もともとはこういう陰の笑いに満ちていた場所だったんじゃないでしょうか。
途中からプリマドンナを目指すバレリーナが出てきて毒リンゴで死ぬわ、三つ子はゲロ(口から蕎麦)を吐くわ......と、脈絡のなさや、「とりあえず死ぬ」「とりあえずゲロ」な小学生マインドもたまりません。


↑ガッチリ結合されているのでいったん転ぶとなかなか起き上がれません。ラストではガムテープをスタッフに剥がされていました。


■浅葱アゲハ
入方興行でも舞った、空中廻転美少女A-GEHA!


元祖という意味でも実力でも、エアリアル界の大元締めといっても過言ではない浅葱アゲハ。
舞台上でまず幻想的な白いドレスを脱ぐと、パフォーマンスに必要になる以外のいっさいの脂肪や筋肉すらも削ぎ落とした、ストイックとしかいえない肉体があらわれました。
中央の吊り代を軸に、ロープや布を使って逆さになり横になり、開脚し回転し、もう「重力ってナニ?」な状態。空中でダンスしている、といえば近いところを想像していただけるかと思います。あまりにも軽やかに宙を舞う様はこの世の摂理から外れているようで、場内には何か崇高なものが漂ったような気さえしました。


↑一見華麗ながらも、強靭な筋力が必要になるパフォーマンス。特に腹筋の鍛えられ方はすさまじく、観客も驚きの目で見ていました。

↑じっと見ているとこちらの平衡感覚まで失われていきそうに......。もはやどちらが床でどちらが天井なのかわからない。


■黒心ガールズショートショウ(ジーナ&リタ)
銀座のバーレスクダンサー!


黒心ガールズショートショウは、SCを主催するフェティッシュバー・銀座ブラックハートとタブー所属のジーナ嬢とリタ嬢によるショート・バーレスクダンス。ミリタリー風のハードなファッションで、同じバーレスクとはいってもオープニングの紫ベビードールとはまた違った雰囲気でした。
その後はブラックハート、タブー、そして系列店のヴァニラマニアに所属するスタッフのお披露目&ご挨拶が。彼女たちは会場整理や受付など、当日のスタッフ業にもたずさわっていたのですが、このときは全員がリング上に勢ぞろいし、各店舗の代表が来場のお礼とお店の紹介を述べていました。
フェティッシュな贅と工夫を凝らした衣装の彼女たちが並ぶ様子は、ショーとしても十分に見ごたえがありました。

■首くくり栲象
死をポケットに入れ深夜徘徊する生きた都市伝説!


■ルドルフEb.er
あの壮絶ゲロオーケストラ指揮者がソロで登場!


■ガスマスクレディス
フェチィなアイコンと装置の謎のユニット


首くくり栲象(たくぞう)は自ら首を吊る様を芸として見せる、首吊りパフォーマーとでもいうべき老人。ルドルフ Eb.erはスイス人DJで、かつて彼のDJにあわせて少女たちがゲロを吐くパフォーマンスをしたそうで、それが紹介文に使われているわけですが、すいません、見てませんので何とも......。ガスマスクレディスはその名の通り、ガスマスクをかぶった女性2人組です。
ガスマスクのルドルフ Eb.erが、下水道音さながらのノイズ系の音楽を流す中、白フンドシ姿の老人・首くくり栲象が登場。どこか舞踏っぽくもある、静かなのに狂気じみた歩き方で中央まで進み、そこにあった台に上るとおもむろに......首吊り......。
周囲ではガスマスク姿の少女2人が金魚鉢からドライアイスやら羽毛やらを掻きだし狂乱の態を見せ、ルドルフ Eb.erの横では小柄なガスマスク少年が虫っぽい動きで跳ね回り、何でしょう、この空間。荘厳、トリッキー、グロテスク、はかなさ、そんな混じりあうはずのないものがないまぜになって観客にぶちまけられたような、そんなショーでした。


↑この格好のまま、ひたすら時間が流れる。終始ぴくりとも動かず、ただ揺れているだけ。ノイズ系の音響が不思議な静けさを醸し出す。


■ペインソリューション

さて、いよいよ本領発揮だぜ!ということでペインソリューションpart2! まずはマニアック(男性)が唇に貫通させた穴にバケツを吊るし、団長がバケツに液体を満たしていく痛芸からスタート。さらに針だらけの板に1人、2人......え、3人いっちゃうの?! 3人重なって寝転んだり、今度はその針を少しずつ抜いていったり。
ボディサスペンション(皮膚に直接針を通して吊り下げるパフォーマンス)もあったのですが、普通の(って何が普通なのかよくわからないけど)ボディサスペンションと違い、重心が腕や足にもバッチリかかるスタイルだったから、相当つらかったんじゃないかなと。しかも下ろすのに、吊り上げられたままで少しずつ針を抜かれてるし(最後は背中だけになっていました)。
同時進行で、アドレナリンが大量漏れしたみたいな目になった団長が、腕やら口やらにぶっとい針を連続でセルフ刺し→血まみれ。
すっげぇ痛そうなのに終始なごやかなムードでショーは終わったのでした。


↑重心が少しでも狂ったらブスっといきそう。いつもにこやかな彼らも、さすがにこのときばかりは全員真剣な表情です。

↑皮膚に直接ピアスを刺したプリンセス・オブ・スカーが涼しい顔してダンスを踊る。これが序の口に見えるから怖ろしい。


■黒岩安紀子
団鬼六夫人が死者を弔う、大和精神の演歌と哀歌!


■東方力丸
下北沢の街頭漫画朗読士が絶唱する炎のリサイタル!


続いては下北沢の街頭で漫画を朗読する「漫画弁士」、東方力丸。おととしも出演した彼ですが、今回は黒岩安紀子との共演。黒岩安紀子さんとは故・団鬼六氏の奥様で、演歌歌手として活躍されています。......知らなかった。
東方さんが選んだ漫画は、佐藤秀峰の『特攻の島』。戦争漫画であります。SCでなぜそれを、と思ったら、その後にモンペ姿に日の丸を持った黒岩さんが出てきて、持ち歌である『知覧の母』を熱唱。この歌、母が特攻隊の息子を見送った歌なので、コラボレートしたのですね。
その次の素材に選んだのは『花と蛇』。あぁ、やっぱりSCでした。カラミの擬音までもリアルに表現してしまうところはさすがこの道の匠。黒岩さんのほうは今度は着物姿になり(着替え早い!)、花と蛇をモチーフにした曲『乳房』を披露してくれました。


↑東方さんの漫画朗読でしんとした会場に、モンペにハチマキ、日本国旗を持って現われた黒岩さん。何が起こったのかと思いましたよ。

↑「乳房」では一転して艶やかな着物姿に。蜘蛛の巣模様でも団鬼六の世界を表現? というのは考えすぎかしら......。


■早乙女宏美
切腹無惨、壮絶地獄絵、大和撫子ハラキリショウ再び!


続いては、切腹研究家にして実践(もちろんショーとして)者、早乙女宏美。彼女はどんな素材をベースにしても最後は必ず切腹に落としこみます。まさに安定の切腹。そんなわけで、どんな切り口で切腹を見せてくれるのかが毎回楽しみなのですが、おととしの会津戦争の娘子軍、去年の葛の葉狐に続いて、今年は道成寺でした!
道成寺は美形のお坊さん・安珍にホレた娘・清姫がソデにされ、恨みで蛇になる話。下半身に蛇の......着ぐるみ......?をつけた早乙女さんが吊り代を利用して宙を舞うところは、歌舞伎なんかも彷彿とさせました。
クライマックスは「道成寺といったらコレ!」的マストアイテム・鐘の上で切腹を。道成寺は能や歌舞伎、文楽などジャンルを横断して表現される古典説話ですが、切腹ショーという新たなジャンルが加わったわけですね。


↑下半身が蛇になった早乙女さんが宙を舞う。後ろは蛇の尻尾をうねらせる黒子です。

↑体が蛇に変わるほど深く安珍を恨んでいたことを恥じた清姫は、説話だと入水するのですが、早乙女バージョンでは切腹です。


■奈加あきら
縄擦れと溜息と、耽美と官能の伝統緊縛ショウ!


以前別件でインタビューしたとき、奈加さんは自らの緊縛ショーについて、「ショーをしているつもりはない」と語っていました。モデルさんとの距離感があまりにもプライベートなものになりすぎて、見せるためにあえてするような内容にはならないと言うのです。
奈加さんのショーからは風情だとか情感、情念といったものが溢れ出していますが、同時に男女の秘め事を覗き見てしまったような背徳感も覚えるのは、そのせいかもしれません。
じっくり見つめ合ってから始められたショーは、スピード感もハラハラ感も一切ありません。そういう意味ではショーとしては不親切なのかもしれませんが、一方で「ナマ」を見られる以上に贅沢なショーはない、ともいえるでしょう。すべて終わった後に散らばった縄までエロティックな、そんなショーでした。


↑二人だけの「語らい」を見せるショーではBGMも特別に派手にする必要はなく、流れたのは静かなピアノ曲。

↑モデルさんの息遣いまで聞こえてきそうな静けさの中、淡々と情念をぶつけるように縛る奈加さん。会場も静まり返っていました。

↑縛っている間だけではなく、終わって解いている最中、そしてすべて終わって二人が去った後に残った縄まで抒情的。


■灰野敬二
泣く子も黙るサディスティックギター爆音ショウ! 注意!


トリを務めた灰野敬二は日本有数のノイズ系ミュージシャン。名前は知っていても音楽は聴いたことがなかったので、何が「注意!」なのかわかりませんでしたが、えーと、聴いてみてすごくよくわかりました。「聴く」というか、「ぶつけられる」感じですね。あるいは「攻撃される」とか。たしかにサディスティックでした。
積み重ねられたアンプから流れ出る、いや奔出する轟音。音階もリズムもなく、たぶん意味もないのでしょう。とにかく、あらゆることを超越した「うるさい」という現象だけがあり、「それってじつはすごいことなんじゃないのかな」と、15演目を見た後のぼんやりした頭で考えたりしました。観客の半分ぐらいは耳を塞いで出て行きましたが、残った人たちはみんなで妙なテンションの高さを共有していたんじゃないかな。朝だったし。

10年目の節目にふさわしいセットリストで、最初から最後まで観客に息を呑ませ、場内をクレイジーな興奮に包んでくれた2012年のSC。退屈するかも......という懸念は杞憂でした。
一演目が短いことによるテンポのよさと、ひとつひとつのパフォーマンスの濃さがうまく化学反応を起こし、ずっと「もっと見たい!」という気持ちのいい飢餓状態が続いていたんですね。個人的には今までのSCの中でいちばん楽しめました。
2ケタ台のファーストステージとなる来年はどんなショーが見られるのでしょうか。期待しております!

文=早川舞

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「SADISTIC CIRCUS」公式サイト

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早川舞
早川舞 世界、特にヨーロッパのフェティッシュ・カルチャー関係者との交流も深い、元SM女王様フリーライター。だが取材&執筆はエロはもとよりサブカルからお笑い、健康関係まで幅広く?こなす。SMの女王様で構成されたフェミ系女権ラウドロックバンド「SEXLESS」ではボーカルとパフォーマンスを担当。
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12.10.28更新 | WEBスナイパー  >  イベントレポート
早川舞 |