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Scene01. 竜二と竜也


【1】

竜二は醜い男だった。
小学生時代からのあだ名は「蝦蟇(ガマ)」。資産家の長男であり、中にはすり寄ってくる者もいないではなかったが、多くは竜二のネチネチとした性格に恐れをなしてすぐに去っていった。
ひとたび竜二の機嫌を損ねた者は、必ず何らかの厄災に遭う。
竜二が小学校六年生の頃、クラスの担任だった三十代の女性教師は、トイレでの排泄姿を一カ月にわたって盗撮された挙句、その写真を学校中にバラまかれた。
理由は理科の授業中にカエルについての質問を竜二にしたからだとクラスメイトのうち何人かは疑っていたが、告げ口をする勇気のある者はいなかった。
竜二の報復を予感し、恐れていたからである。

たとえ証拠はなくとも、「あれは竜二の仕業に違いない」という事件がそれまでに何度も起きていた。
竜二と口論をした少年が学校帰りに何者かの手で用水路に突き落とされ、危うく命を落としそうになったこともある。また、竜二に好意を持たれた女子生徒は何らかの盗難に遭うという噂もクラスメイトの間ではほぼ事実として語り継がれていた。
盗まれる物はたいていスクール水着やパンティ、時には使用済みの生理用ナプキンなど、性が絡んだ恥ずかしいものばかりである。
なぜ汚物入れに捨てたナプキンが「盗まれた」と騒がれるのかと言えば、その現物が、しばしば透明な精液の付着した状態で本人宅の玄関先に投げ込まれていたからだ。






いずれの場合も竜二には完璧なアリバイがあり、「子供のすることではない」という先入観からも大人たちの追及の目が彼に向けられることはなかった。
ただ、竜二の周囲の子供たちだけが鋭い直感を働かせて、噂話のレベルで彼の正体を叫び続けていたのである。「蝦蟇」という悪意のこもったあだ名が自然発生的に生まれたのも、竜二のルックスより以前に、彼から滲む粘着性や不気味さが周囲の少年少女たちを本能的に怯えさせていたからに違いない。

ここからは、彼がその後に起こした、ある深刻な事件の具体的な検証になる。
どこからを始まりとするかは意見の分かれるところだと思われるが、筆者は竜二が先天的に人間性を欠いた怪物だったという説を推したいがため、さわりとして彼の小学生時代のエピソードをまず記した。
しかし、有識者の中には彼が中学二年生の時に両親を交通事故で亡くし、若くして莫大な遺産を手にしたことを事件の発端とする者もいる。
確かに、まったく働く必要のない環境は、彼を世間の規範から決定的に切り離した。それが彼の人生から更生の機会を失わせたことは事実だろう。
だが、この説を推す有識者の多くは、彼だって好んで忌み嫌われていたのではなく、むしろ健全なコミュニケーションの仕方を学ぶ機会を得られなかった悲劇の犠牲者なのだと、彼を庇う。
筆者はそこに無責任な傍観者の甘さを感じずにはいられない。

彼が一度も傷ついたことがないかと言えば、もちろんそんなことはないだろう。
40年間、一人の友達もなく、恋人もなく生きてきた彼が、寂しさに涙をこぼしたことがなかったかと言えば、そんなこともないだろう。
しかし、世の中にいる傷つきやすくて寂しい人間が、皆このような事件を起こすのだろうか。
一般論だけで彼を語り、事件を忘れ去ってしまうことは危険であり、事実を伝えたことにもならないというのが筆者の考えである。

さて、早速事件を振り返ってみたいと思うが、その前にもう一人、紹介しておかなければならない人物がいる。


【2】

竜二とは三つ歳の離れた、竜也という男がいる。
顔は似ていなかったが竜二の実の弟である。
彼は一見、人畜無害で大人しい人間に見える。子供のころからそうであり、周囲の大人は誰ひとり、彼を問題児として見たことがなかった。
そればかりか「もっと自己主張すべき」「存在感が薄い」というのが当時の通信簿に記載された彼のおおむねの評価であり、竜二とは別の意味でクラスから浮いていたようである。

この二人の違いはどこから来るのか。
竜二の弟である以上、育った環境は竜也も同じと考えられるのだが、強烈な個性を持つわがまま放題の兄が弟に対しても独裁者として君臨し、支配下に置いてきたと考えれば辻褄は合う。
言うなれば、彼は竜二の第一の犠牲者だったのではないか。
クラスメイトの口を恐怖で黙らせてきた兄である。最も身近にいる弱者に対して、どうふるまっていたかは想像に難くない。
事実、竜也はこの後に語られる事件にも密接に関係しているのだか、それは兄・竜二の命令によるものであった。幼少期から竜二の支配下に置かれてきた彼には、「逆らう」という概念すら持ち得なかったのではないかと筆者は考えるのである。






ここで、小学生時代に竜二が関与していたと噂される幾つかの事件を思い出してもらいたい。
被害に遭ったのは竜二の機嫌を損ねた者たち、竜二に好意を持たれた女子生徒たちである。
そして竜二には常に完璧なアリバイがあり、実行は不可能だったとされている。
しかし、当時の大人たちは考えてもみなかったことだが、もしも彼に共犯者がいたとしたらどうだろう。つまり指示を出したのが兄の竜二で、実行に移したのが弟の竜也だったとしたら……。

筆者はもはや、証明の必要性すら感じていない。
なぜならば今回の事件がそれとまったく同様の形で起きており、且つ、その結末が竜二と竜也の関係性のすべてを物語っているからである。

ここではただ、事件の始まりが竜二という怪物の誕生にあり、彼が竜也という傀儡を得たことで深刻化したのだとする筆者の立場を改めて強調するにとどめておきたい。
以下は警察の調べと被害女性の証言、また、竜二・竜也兄弟の住む屋敷で見つかった竜也の日記から、今回の事件のあらましを組立て直したものである。

日付は去る8月2日、記憶にも新しいあの嵐の夜から書きだすことにする。
時刻は午前3時20分。
竜二40歳、竜也37歳の夏であった。


(続く)

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『生贄おさな妻〜収集家の奴隷〜』

発売:9月26日
出演:渚
収録時間:120分
品番:KNSD-03
メーカー:大洋図書
ジャンル:SM・緊縛・凌辱
レーベル:キネマ浪漫
定価:5,040円

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junichirou.jpg 芽撫純一郎 1960年和歌山県生まれ。プロポーラーとして活躍後、セミリタイアして現在は飲食店経営。趣味として、凌辱系エンターテインメントAVの鑑賞と批評、文章作品の創作を行なう。尊敬する人は一休宗純。
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08.09.12更新 | WEBスナイパー  >  官能小説