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青山正明の世界 第24回


永山薫インタビュー part1
取材・構成・文=ばるぼら


21世紀を迎えてはや幾年、はたして僕たちは旧世紀よりも未来への準備が整っているだろうか。乱脈と積み上げられる情報の波を乗り切るために、かつてないほどの敬愛をもって著者が書き下ろす21世紀の青山正明アーカイヴス、今週からは永山薫氏のインタビューを掲載いたします。
『月刊ボディプレス』1980年10月号
1985年10月1日発行/白夜書房
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青山正明が出版業界に入っていくきっかけは、ミニコミを見た白夜書房の編集者からのアプローチがきっかけだったというのは前に書いたとおりだが、では白夜書房でライター仕事をしていた時期の青山正明について知っている人物はというと、もはや数人しか思い当たらない。今回話を伺った永山薫氏はそのうちの一人だ。

青山と永山氏の関わりは古く、表舞台では雑誌『クラッシュ』創刊号(1985年12月/白夜書房)や『別冊宝島345 雑誌狂時代!』(1997年11月/宝島社)での対談、『エロ本のほん』(1997年12月/ワニマガジン社)の出版記念イベントのトークショーでの共演、などに二人の名前を見つけることができる。

永山氏は近年、エロマンガという文化を俯瞰した『エロマンガ・スタディーズ 「快楽装置」としての漫画入門』(2006年11月/イースト・プレス)や、昨今の規制問題に取り組んだ昼間たかし氏との共著『2007-2008 マンガ論争勃発』(2007年12月/マイクロマガジン社)など、マンガ評論家としての顔が知られていると思うが、ここでは80年代から90年代にかけての、オルタナティヴな側面にスポットを当てる形となった。

「遊塾」に通うために上京して

──永山さんは1954年生まれで、青山さんは1960年生まれです。永山さんの方がだいぶ年上ですね。私の印象では青山さんのファンというのは青山さんよりも年下が多く見えるんですが、逆に年上から見た青山さんという視点はなかなかありませんし、さらに駆け出しの時期の青山さんを見ていた人となると、それだけでも貴重な話が聞けるのではないかと思っています。

永山:たいして話すことはないんだよ、正直な話。青山とは白夜書房で会ったんですね。あいつが『Hey!Buddy』のライター、僕が『Billy』のライター。『Hey!Buddy』と『Billy』の編集部は非常に近くて、編集長同士も仲いいし、その時に知り合った感じですね。細かいことはもう覚えてないけど。

──80年代中期に出ていた『ボディ・プレス』という、やはり白夜書房から出ていたエロ本に、永山さんの半自伝「ビリー・ザ・ストーリー」(1985年10月号〜)が連載されていました。それによると最初は大阪の印刷会社に勤めていて、そこを辞めて上京し、工作舎の「遊塾」に参加していたそうですね。

永山:松岡正剛さんは今でも尊敬してますよ。唯一の師匠ですから。

──雑誌の『遊』は科学に化学、アカデミックや冗談、神秘思想にホモエロスなど、編集という作業を通して文化の突然変異を促進させた奇妙なオブジェ雑誌でしたが、「遊塾」は具体的にどんな授業をやっていたんですか。

永山:すごかったですよ、例えば田中泯さんの暗黒舞踏をみんなで観るという授業。僕は当時は22、3歳で、暗黒舞踏も名前くらいは知っていたけど観たことはなかった。そうしたら全身を墨で塗ったおじさんがチンコに包帯をまいて出てきて、「……とんでもないとこに来たな」って。みんな真剣な顔で観てるから「笑っちゃいけないんだ」と。松岡さんが「みんな目をつぶって、どういう踊りか気配で判断しろ」って言うから目をつぶる。「ようし目を開けろ」って言うから目を開けたら、田中泯さんのお尻が目の前にあるんだよ(笑)。必死で吹きだしそうになるのをこらえました。編集の実務的なことよりも、編集者としてのセンスを磨くという感じ。まあ、そこ来てる人は半分くらいはもとからできる人たちで、もう半分くらいはファンかな。同期で名前が出た人というと、京都の後藤繁雄さん(「独特編集」で知られる著名な編集者)。別の日には山崎春美がいたりとかね。

──テキスト片手に読解、というものではないんですね。月謝は?

永山:ないです。無料。松岡さんのカリスマ性で成り立ってた。そばにいると「この人に一生ついていこう」ってなるんですよ。オーラ、引力が全然違う。死ねと言われれば死ぬ(笑)。僕は半年くらいで逃げましたけどね(笑)。

──(笑)なぜですか?

永山:仕事やりながらだったから。当時は神保町の写植屋に勤めてたんです。写植屋は当時は忙しかったんですよ。

『宝島』と白夜書房は若いライターの拠点だった

──永山さんはその後、「遊塾」で知り合った方と編集チーム「ビニール・ハウス」を結成して、『別冊宝島20 センス・パワー!』(1980年10月/JICC出版局)の編集に参加していますよね。これが商業媒体でのライター・デビューですか?

永山:無署名では、ビニ本のポエムってわかります? 女の子の横に意味のないコピーが入ってるでしょ、5行ぐらいキザっちい言葉が並べてあるような。あれを書いてました。他には自販機本の実話誌で、告白「女子高生金属バットオナニー」とか(笑)。

──『センス・パワー!』に参加するきっかけは?

永山:『宝島』を出してるJICC出版局(現・宝島社)に出入りしてたら、「こういう本やるんだけど参加しない? 高杉弾さんとかも加わってるんだけど」って言われて。だから名前を出したのは『センス・パワー!』や当時の『宝島』ですよ。当時、若いライターが書けるメディアっていうのが、自販機本、エロ本系、宝島。この3つくらいでしたね。あと音楽関係もあるけど、専門誌を抜くとそんな感じ。そういうところで集まってると、いつのまにか知り合いになってるんだよ。だから当時の白夜書房や『宝島』は、サロンじゃないけど拠点みたいだった。そこに行くと誰かいる。カメラマンもライターも。

──今ではちょっとありえない風景ですね。

永山:僕らが始めた頃ってまだムチャクチャでしたからね。でも白夜も宝島もどんどん会社になっていった……もとから会社だけど(笑)。当時はまだのし上がっていく途中の感覚だから。白夜は僕や青山くんがやってた一方で、『写真時代』をやってたんだよね。そっちは末井(昭。現・白夜書房取締役編集局長)さんたちで、僕らは中沢(慎一。現・コアマガジン社長)班から仕事をもらってました。末井班と中沢班が、そのまま白夜書房とコアマガジンに分かれていったね。今はどうなってるかわからないけども。

──宝島に書いてらっしゃったのはいつ頃ですか。

永山:YMO全盛期で、ビートたけしが出てきた頃。書評や、あと僕は音楽には詳しくなかったけど、宝島でライターやってるんだって言ったら「取材に来てください」ってなったり。行ってみたらシスターM、カトゥラ・トゥラーナ……今でいうインディーズの人達ですね。

──覚えてるバンドは?

永山:いちばん仲良かったのはLibido(79年結成、80年代のポジティヴ・パンクを代表するバンドの一つ)。ボーカルの成田(弥宇)くんが近所だったんですよ。そしたら突然、成田くんたちが「酒飲みましょうよ」って家に来て、「今度ライブやるんですけどカメラマンがいないんですよ。カメラマンで入ってくれないですか?」って頼まれたりしてね。Libidoの銀色のジャケットのシングル(『低く飛んでゆく』)あるでしょ、あのモヤモヤとしたの、僕が撮ったんだよ。だからしばらくLibidoにくっついて写真を撮ってた。その頃のフィルムは全部渡してるんで、一枚も残ってないけど。1990年に成田君が亡くなった時はびっくりしましたね。江戸アケミ(ファンクバンド「じゃがたら」のボーカリスト)が亡くなったのとたしか同じ年ですよね。

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『別冊宝島20 センス・パワー!』 1980年10月25日初版発行/JICC出版局
左/初版の表紙 右/再販後の表紙

『別冊宝島20 センス・パワー!』 1980年10月25日初版発行/JICC出版局 初版の表紙
『別冊宝島20 センス・パワー!』 1980年10月25日初版発行/JICC出版局 再販後の表紙

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man.gif ばるぼら ネットワーカー。周辺文化研究家&古雑誌収集家。著書に『教科書には載らないニッポンのインターネットの歴史教科書』『ウェブアニメーション大百科』など。なんともいえないミニコミを制作中。

「www.jarchive.org」 http://www.jarchive.org/

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08.09.14更新 | WEBスナイパー  >  天災編集者! 青山正明の世界