毎週日曜日更新! あの日“アイツ”を追いかけた 全ての女子たちへ! 「腐った遺伝子」 第11回 文=早川舞 ←『にんタマ三人ぐみのこれぞにんじゃの大運動会だ!?』 発行:ポプラ社 著者:尼子騒兵衛 定価:1,050 円(税込) Copyright 1997-2007 POPLAR Publishing. All Rights Reserved. |
ついに私もニコニコ動画の常時開放の恩恵にあずかることができるようになりました! そんなわけで最近は寝ても覚めてもニコ動(見るほう)、しかも見ているのは腐女子製作のやおい臭漂う鼻血映像ばかりという、サブカルチャーのそのまたさらに末端部分をひたすら消費するだけという、世界のちんかすみたいな存在価値ゼロの肉袋に成り下がっています。
そんなちんかす生活を送っているうちに再燃してしまったのが……私もう30歳だし口にするのも恥ずかしいんですが、『忍たま乱太郎』……(トオイメ)。ニコ動だけでは足りず、ようつべにまで出張して見腐ってしまいました。いい時代になったなぁ。
それにしても10年以上ぶりに改めて見て驚いたのですが(というか10年以上やっているというのがすごい。まだ放送中)、お子様向けアニメでよくもここまで、というぐらい構図とテンポとセリフまわしが凝りに凝っています。時代考証もかなり綿密にされていて、見ているだけで室町時代の庶民の暮らしに詳しくなれます。室町時代に詳しくなって何かいいことがあるのかというとあまりないですけど、とりあえず歴史オタには快感です。
いや、本当はそんなことはどうでもいいのです。10歳から15歳までの少年たちがひとつ屋根の下で寮生活を送りながらほのぼのと忍者の勉強をするというシチュエーションがたまらんのです。ああもう! ほのぼのなわけないじゃん! 絶対ぐちょぐちょだったりべとべとだったりキツキツだったりするに違いねぇんですよ! 男塾が好きな人は好きかもしれない! ……いや、私だけかもしれないな。
(前回からの続きです)
こうして続いた綾波のコスプレは、一見、強すぎる自己顕示欲と自己愛を満たしてくれるかのように見えましたが、しかし、天国への階段は地獄のように厳しくつらいものでした。
理想の世界へと至る門はとても狭く、その世界の主であるはずの私自身にすら、厳しい掟を課すようになったのです。
常に、理想の世界の住人に相応しい容姿を維持すること。
当時、私は今よりは多少は肉づきがありましたが、別に太っているというほどでもなく、標準より多少痩せているぐらいでした。しかし、コスプレをするにはもっともっと痩せていたほうがいい。私がダイエットを決意するのに、それほど時間はかかりませんでした。
私のやるとなったら徹底的に、一気に突っ走るという性格はダイエットのときにもあらわれました。1日に摂取するカロリーが1000kcalというありえない低さ(通常20代女性の1日に摂取すべきカロリーは約1800kcal。1000kcalというのは医者に言ったら絶対に止められる数値です)にまで抑え、毎日ふらふらしながら学校に通っていました。当然、合気道なんかまともにできるわけがなく、稽古中に何度も道場の隅で休みました。毎日、いつでもおなかが空いていて、食べ物のことばかり考えていました。階段を上るのもしんどくなりました。
数ヶ月もしないうちに、身長159cmで体重は38kgまで落ちました。夏だったのに、いつも手足が冷たいままでした。手足がガリガリになり、生理が止まりました。完全な拒食症でした。
↑過激なダイエットに走ったツケは今でもまだ残っております。アタクシ、炭水化物が苦手です。最初は太るのがイヤだからってことで食べなかったんですが、ここ何年かで普通にイヤになってきました。人間の体って意志の力で変わるもんなんだなぁ。すごいなぁ。この勢いでまた何かしたら、今度は水の中で息だってできるようになる気がするよ(エラ呼吸)! 尻尾だって生やせる気がするよ(切られると大猿に)!
今でもカレーや丼ものは、ルーとか上にかかっているものをメインで食べてご飯は結構残します。それでルーだけおかわりしちゃったりするので結局カロリー的にはそう変わらない気がしますが。損をしているのか得をしているのかわからん……。
ちなみにこのカツカレー、1皿で約1000kcalです。なんかねー、もうねー。
自らの意志で食欲を抑え込むタイプの拒食症は、その過剰なストレスから一転して過食症になる場合が往々にしてあります。私もそうでした。ある日、どうにも我慢が効かなくなってコンビニで大量のジャンクフードを買い込み、部屋でひとりで貪り食いました。あのときは初号機がゼルエルを食ってるみたいな気持ち悪い光景だったと思います。何も考えられないまま全部食べ終わった後、罪悪感と後悔と太ってしまうという焦りに突き動かされて、トイレで食べたものを全部吐き出しました。
軽く流していいましたが、もちろん一度食べたものを吐くなんて簡単なことじゃありません。指を喉の奥まで突っ込み、苦しくて手の甲を噛んでしまいながら、顔を真っ赤にして涙を流しながら、それでも私は吐きました。太るのがとても怖かったから。太ったら、せっかく見つけた楽園を追放されてしまうから。
私は何とか、食べたものを吐き出しました。その日から私は拒食と過食(正確には過食嘔吐)を繰り返すようになりました。苦しくて噛んだ手の甲にはいくつもの傷跡がつき、顔は腫れぼったくなりあちこちに内出血の跡がありました。もしかしたら、わかる人にはわかっていたかもしれません。
それでもこの頃はまだよかったのです。うまく吐けない、吐こうとすると死ぬんじゃないかと思うぐらいに苦しいから、吐くのはあくまでも最終手段でした。学生だから、大量の食料を頻繁に買い込めるお金もなかったし。
しかし、季節が何度か巡り、大学を卒業し、過食嘔吐を何度か繰り返しているうちに私はだんだん吐き方のコツを覚えてきてしまいました。もちろん苦しいことは苦しいけれど、以前のようにトイレの前で頭の血管が切れて死ぬかもしれない、と本気で心配になるようなことはなくなりました。
吐くのが少しずつ楽になるにつれて過食嘔吐の回数は増え、この頃は週に1回か2回は吐いていたような気がします。そしてちょうどこの頃に、私はSMと出会いました。
↑度重なるゲロ生活の中で私はだんだん吐くコツを会得していきました。体勢は深くかがみすぎても浅すぎてもいけなくて、45度ジャストがベスト! 利き手を思いっきり喉の奥に突っ込むと同時に、もう片方の手で下っ腹を押すとスムーズです。食べるときは必ず水分も十分に摂取すること。じゃないと食道あたりで詰まってシャレじゃなく死にそうになります。ホント、トイレの前でゲロにまみれて死ななくてよかった!!
冬場はトイレが寒くて途中でくじけそうになるので、ちゃんと厚着をしていきましょう。でもゲロが飛び散って汚れる可能性があるので、洗濯する予定のあるもののほうが良いです。髪はちゃんとまとめるか、何かで留めていくかしましょう。意外と気が散ります。吐きやすいのはやっぱり水分の多いものかなぁ。まぁ、やっているうちに大抵のものは吐けるようになりましたけど。
そう言えば昔「トルコ風アイスを食べると胃の中のものを全部巻き込んでくれるから吐くときにラク」とかいう話を聞いて試してみたら、逆につかえて全然ダメだったわ。やっぱり2ちゃんねるは信じちゃいけない。
イラストはリアルになるよう嘔吐物の部分だけオレンジ色にしてみました!
とはいうものの、最初は甘いモンでした。そういうシーンが好きな友人に、SM関係のイベントやバーに連れていってもらったぐらいのことです。私は元々そういう世界が嫌いではない、というよりむしろ興味がありましたから、嬉々としてついていきましたが、しかし、そういう場所にいる人たちと仲良くなったり、その世界にさらに深く入り込んだりという機会もこれといってなく、ただぼんやりと何をするでもなく片足を突っ込んでいるだけの状態でした。
やがて私は大学を卒業しましたが、特にマジメに就職活動にいそしむこともなく(最初はちょっとやったけど意外に大変だったのですぐやめた)、在学中にずっとやっていた雑誌の編集とライターのアルバイトを続けました。そこそこ楽しくそこそこ忙しくそこそこお給料も良い仕事だったので、焦りがなかったんですね。
卒業してそれが本業になりしばらく経ったあるとき、ひょんなきっかけから風俗誌の仕事をすることになりました。風俗というと、ごくごくフツーの20代女子はイヤがりそうなものですが、私の場合は大学時代に風俗で働いていた友人がおり、よく笑い話を聞かされていたせいか、特に抵抗がなかったのです。
取材に飛び回り、いろんな風俗のいろんな女の子に会って、彼女たちの話を引き出す毎日。そんな取材生活の中で出会ったのが、今はなき五反田の『サーバント』というお店に在籍していらっしゃった、ゆい女王様でした。
↑数年後、まさか自分がこんなガチに女王様をやることになるとは、このときの自分は想像だにできませんでした。しかもそれが人生の礎にまでなるとは。あのときは、ゲロと一緒に脳ミソまで流れ出ちゃったんじゃないかっていうぐらい、もうホントなーんにも考えていなかったからなぁ……。今、あのときの自分と同じ年の人たちに会うと、自分は何てバカだったのだろうか、この人たちは何て大人なんだろうかとつくづく恥ずかしくなります。タイムマシンがあったら後ろからハリセンでこづきたい。
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早川舞 世界、特にヨーロッパのフェティッシュ・カルチャー関係者との交流も深い、元SM女王様フリーライター。だが取材&執筆はエロはもとよりサブカルからお笑い、健康関係まで幅広く?こなす。SMの女王様で構成されたフェミ系女権ラウドロックバンド「SEXLESS」ではボーカルとパフォーマンスを担当。 現在、フェティッシュ・ミックス・バー「ピンク・クリスタル」に毎週木曜出勤。
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