THE ABLIFE October 2010
「あぶらいふ」厳選連載! アブノーマルな性を生きるすべての人へ
縄を通して人を知り、快楽を与えることで喜びを得る緊縛人生。その遊行と思索の記録がゆるやかに伝える、人の性の奥深さと持つべき畏怖。男と女の様々な相を見続けてきた証人が、最期に語ろうとする「猥褻」の妙とは――
乳房をつかみ出す。
ブラジャーも上方にずらして乳首まで露出する。
そしてその乳房に食らいつく。
吸うのではなく、食らいつく、といったほうが
正確であろう。
ブラジャーも上方にずらして乳首まで露出する。
そしてその乳房に食らいつく。
吸うのではなく、食らいつく、といったほうが
正確であろう。
緊縛遊戯に晒布(さらし)を使うといいですよ、などと書いてきたが、それが落花さんには合わないことがわかった。そのことについて書いてみようと思う。
まあ、見せるための「緊縛」、たとえばビデオとかSM雑誌の撮影のときなど、晒布を紐状にして使うのも、見た目にそれなりの変化があっておもしろく、私自身過去に何度かやっている。
だが、プライベートでやる緊縛、それも落花さんのような女性だと、いささか、いや、かなり勝手がちがってくる。
モデルの場合は、当人にM性があろうとなかろうと、ギャラで演じている女性なので、麻紐であろうと木綿ロープであろうと、晒布であろうと、形よくきれいに緊縛がきまる。きまらないと撮影が終わらない。
ところが落花さんは、端的に言ってしまうと、あいかわらず、「縄酔い」が早く、そして深いのだ。
手首を掴んで背中へねじりあげ、晒布の紐をひと巻きしただけで、本気になって感じてしまう。
体の支えを失い、全身がぐずぐずと前に倒れてしまう。
「まだ早い、まだ早い、もうすこし縛らせろ、おい」
と言って私は彼女の肩を片手で抱き起こそうとする。だが、そうなると彼女の体はもうずっしりと重く、とてもかんたんには抱き起こせない。それでも両手首を縛った紐を、なんとか胸にまわし、ひと巻きして留める。
ここまでくるのがひと仕事だ。女のほうがあまりにも無抵抗だと、かえって縛るのにたいへんな労力を要する。
ひといきついてから、私はこんどは両手で彼女の下半身をヨイショと起こし、唇を吸う。かなり乱暴に吸う。
かすかにうめき声をもらしながら、彼は私のキスに応じる。応じてはいるのだが、自分から積極的に私の唇や舌を吸い返す、というような行為はしない。
それはきっと、彼女にとっては、はしたない、恥ずかしい行為なのである。ただおとなしく、私に唇を吸われているだけ、という感じである。
私は彼女の着衣の胸をひろげ、ひと巻きかけてある布紐を、力をこめて上のほうにずらし、乳房をつかみ出す。ブラジャーも上方にずらして乳首まで露出する。
そしてその乳房に食らいつく。吸うのではなく、食らいつく、といったほうが正確であろう。さらに、乳首に噛みつく。上下の歯を動かし、キリキリと乳首を刺激する。
このときになって、彼女ははじめて声をあげる。それが、痛みに耐える声なのか、「感じている」声なのか、私にはわからない。きいても彼女は答えてくれない。
ただ、私がどんなに乳首を強く噛んでも、彼女は避けることをしない。逃げようともしない。
そうだ。晒布で彼女を縛っているこの場所を書くのを忘れていた。そして、晒布の紐による緊縛が、彼女には合わないことを書かねばならない。
場所は、全室に檜風呂を備えつけてある純日本風の旅館である。つまり、畳の部屋である。
そしてまた私と彼女は、いつものように芝居を観た帰りに、このなじみの旅館の二階にいるのだ。
彼女は、黒い毛糸で編んだ丈の長いカーディガンのような上着を着ている。
その上から、いきなり晒布で後ろ手に縛っているのだ(これもいつものやり方だ)。
上着の胸もとに強引に手をかけて左右にひろげ、つかみだした彼女の乳房を吸い、乳首を噛み、唇を吸っているのだ。
私は彼女の黒い毛糸編みの上着に、畳のケバが付着するのを心配する。
「おい、いつかみたいに、畳のケバがついて取れなくなったら困るぞ」
私はベッドの上へ彼女を引きずり上げ、服を脱がし、改めてまた晒布で後ろ手に縛り上げる。
私が縛ろうとするとき、彼女は自分から背中にまわした左右の手首を、高々と上の位置に組む。縛り終えた直後の形は、理想的な高手小手縛りである。
ところが、すぐにまた彼女は失神状態になり、背後の高い位置に固定した手首が、腰のあたりまで下がってくる。すると、その分だけ、手首と、腕と、胸をしめつけている晒布が、ぎゅっと伸びる。そして、伸びた分だけ幅がせまくなる。
はじめは五センチほどの幅で、腕と胸をゆったりと縛ったはずの晒布が、彼女が正気を失うと、わずか二センチ幅の細く鋭い紐になってしまうのだ。そして、細くなった分だけ、彼女の素肌に鋭く厳しく食い込む。晒布の意外な伸縮度を私は発見する。
陰惨とも思える食い込みの深さを見て、私はぎくりとする。迫力はある。だが、ここまでやってはいけない。
肌を痛めてはいけない。私はすぐに晒布を解きはじめる。結び目も固く縮んで、解くのにやや手間取った。もう晒布を使うのはやめよう、と私は思った。
失神状態になってのめりこんでいく彼女を眺めているのは、私のような人間にとっては快楽のきわみであり、至福のときである。だが、この快楽と至福のときを、でき得る限り長く味わうためには、それなりの配慮を怠ってはならない、というのが、今回の反省であり、結論である。そうなのだ、私はまだまだ、この快楽を、しぷとく、性懲りもなくつづけようと思っているのだ。
(続く)
『濡木痴夢男の秘蔵緊縛コレクション1「悲願」(不二企画)』
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緊美研.com
濡木痴夢男のおしゃべり芝居
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