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縄を通して人を知り、快楽を与えることで喜びを得る緊縛人生。その遊行と思索の記録がゆるやかに伝える、人の性の奥深さと持つべき畏怖。男と女の様々な相を見続けてきた証人が、最期に語ろうとする「猥褻」の妙とは――
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ちょっとだけ言うと、
その不気味なキモチわるいところから
出てくるのが人間なのだから、
しょせん人間なんてものは、
不気味なキモチわるい、
おどろおどろしい生き物ではないか、
と思ったりするのです。

まあしかし、なんといったらいいのか、ありがたいというか、なんともふしぎな世の中になったもので、いわゆる「女体の神秘」を、ここまであからさまに、カラー印刷でこまかく見せていただける時代がやってくるなんて、ついこの間までは夢にも思わなかった。

一流の出版社である講談社さんから発行されている「週刊現代」の「GW合併特大号」(二〇一二年)に掲載されている「『女性器 ヴァギナ』最新研究」というページのことです。

この八ページだけは、いわゆる「袋綴じ」になっています。
その一ページ目に、
「警告! 人前では絶対に開かないでください」
という赤色の大きな角ゴシック体の文字で注意書きがあり、ページ左側の隅に、
「こちら側を丁寧に切り開いてご覧ください」
と小さな活字で記してあり、親切にハサミの画が添えてある。

指示されているその点線のところを、ハサミでていねいに切って開いてみました。

第1章 名器とは膣の圧力である
第2章 スクープ! 女性器の内部を潜入撮
第3章 もはや常識! 膣を鍛える女性たち
第4章 アートとしての性器

まあ、どのページの写真にも説明文にもびっくりし、勉強させていただいたのですが、こまかいことをいまさらガダガタ言うのはやめて、私がいちばん「ギャッ」とうなり、「グヘッ」とうめき声を発したのは、この第2章です。

説明文はともかく、写真がまず、キモチわるかった。

女性器の内部を、電子走査型顕微鏡というもので撮影した写真(もちろん、カラーです)が数枚のっているのですが、これには参った。参りました。これだけで降参です。

ひとことで言えば、エロティシズムなんてものは皆無。そのかけらもない。
この種の内臓写真に、とくに私が弱いせいかもしれませんが、エロティシズムどころか、いやァ、不気味なものです。
正直に言ってしまうと、不潔です。うす汚い。いや、「うす汚い」から「うす」を取り除いて、ただ「汚い」。
いやいや、「汚い」というよりも「穢い」。私は「穢い」と表現したい。

どんなに妄想を働かせ、ひいき目にみても、キモチわるい。おどろおどろしい。
(おいおい、何を言うのか。お前だって、そのキモチわるい、おどろおどろしいところから生まれてきたのではないか)
という声が何処からか聞こえてくるけど、この際、それはべつのモンダイとして考えることにしましょう。

でも、ちょっとだけ言うと、その不気味なキモチわるいところから出てくるのが人間なのだから、しょせん人間なんてものは、不気味なキモチわるい、おどろおどろしい生き物ではないか、と思ったりするのです。



まあしかし、これはたしかに「人前で開いてはいけない」ページです。
美とかエロティシズムなんてものは、人それぞれの主観によって判断するというけど、この女性器内部の色彩とか形状は、だれが見てもエロティシズムは皆無だろうと思う。

エロティシズムが感じられないのだから、当然ロマンティズムもない。

もう一度しつこく言うと、
「へええッ、女というものは、みんなこういう不気味な、不潔なものを持っているのか!」
いまさらながら、週刊誌の袋綴じページの写真を見て、正直な私の実感でした。
まったく、いまさらながら、なのです。

私は職業柄、過去なん十年間、こういう不気味なものに、しかも、ナマで呼吸しているものに、数多く、数えきれないほど数多く実際に触れてきてしまっているのです。

まさか電子顕微鏡を使って、ヒダの一片一片までのぞきこんだことはなかったけど、撮影現場における私のシゴトがシゴトなので、指でギューンとひろげた女性器のかなり深部まで見てきた。見るだけでなく、指を挿入したり、かきまわしたりしてきた。

ですけれど、こういうことを言っても信じてもらえないだろうけど、私は、そういう女性器と向き合うシゴトを、好きでやってきたわけではないのです。

好きではないからこそ、撮影現場で50年間もやってこられたのです。



――というわけで、ここまで書いてきて、やっと前回の「縄研究会のこと」に話はつながります。

熱心な同好者の会があって、自分がモデルになり、濡木の縄に縛られる約束をしても、人前ではハダカにならない、服を脱ぎたくない、というカナさんの心情を書いてみようと思ったのです。

だけど、前ふりが長くなってしまった。

「週間現代」の袋綴じ写真のことは、じつは私が書きたい、私自身の性癖の告白の前ふりです。

女性器の内部写真の不気味さ不潔さをくどくど書いたのも、「私の女性器嫌悪」いや嫌悪とまではいかないけど、女性器に執着しない性癖を、わかりやすく第三者に説明したいがための「前ふり」のつもりです。

じつは、私の本心は、「女嫌い」なのだ、といまさら言ったところで、誰も信用してくれないだろう(女は嫌いだが男は好き、ということではありません、念のため)。

「女嫌い」と言いきってしまうほどではないけれど、人が思うほど私、女が好きではではないのですよ。

つまり女性器に執着しない、ということです。ですけど、これまで私は、いかにも女性器に執着しているようなことを、書いたり、しゃべったり、実行したりしてきました(そのほうが世間を渡るには都合がいいし、便利なのです。女性器に執着しない男だということがわかってしまったら、それこそとんでもない「変態」扱いにされて生き難くなります)。

女性器に執着しないからこそ「縄」に執着するのですよ。

ああ、とうとう言ってしまったな。さあ、面倒なことになったぞ。
女性器に執着しない男だからこそ「緊縛」に執着するという事実。
わかるかなあ。わからないだろうなあ。

でも、私が「縄」に固執し、欲情するそもそもの出発点は、すべてここにあるのですよ。

さあ、これからそれを、どういうふうにわかりやすく、納得してもらえるように書いていきましょうか。

(続く)

『濡木痴夢男の秘蔵緊縛コレクション2「熱祷」(不二企画)


品番:KC-02
発売:2010年09月02日
収録時間:87分
販売元:不二企画

メーカーサイトで作品詳細を確認・購入する>>>こちら

※当欄で使用しているイメージ写真は本作のキャプチャ画像です

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濡木痴夢男 1930年、東京都生まれ。SM雑誌『裏窓』『サスペンス・マガジン』の編集長を務めるかたわら、『奇譚クラブ』他三十数誌に小説を発表。1985年に「緊縛美研究会」を発足し、ビデオ製作や『日本緊縛写真史』(自由国民社)の監修にあたる。著書多数。近著に『緊縛☆命あるかぎり』(河出文庫)。
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