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THE ABLIFE February 2010
「あぶらいふ」厳選連載!
アブノーマルな性を生きるすべての人へ
写真=枷井克哉

縄を通して人を知り、快楽を与えることで喜びを得る緊縛人生。その遊行と思索の記録がゆるやかに伝える、人の性の奥深さと持つべき畏怖。男と女の様々な相を見続けてきた証人が、最期に語ろうとする「猥褻」の妙とは――
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それはもう、四年以上も前のことになる。
そのときの彼女の名前は「石谷秀」である。
名付けたのは私である。
知り合って、仲良くなって、最初に入ったのが、
山手線鶯谷駅近くにある「石秀」というラブホであった。


彼女は左右の太腿のつけねを、よじるように強くとじ合わせて、私の性器を入れさせまいとして抵抗する。
腰骨や膝の骨あたりから湧き出してくるその力は、相当なものだ。
こわいくらいに強靭である。
とてもかなわない。
その力に対抗して封じこめて、無理やり挿入してしまう体力が、私にはもうない。
いや、全身欲情でギラギラ煮えたぎっている猛々しい体力真っ盛りの若い男でも、女に本気になって抵抗されたら、とても挿入なんてできないと思う。
股間のあたりを防御する女性の抵抗力は、それほど強い。

落花さんを相手に、私はこれまでに何度かそれをためしている。
女をレイプするつもりだったら、殺すぞ、などとこわいことを言って恐怖を与えて無抵抗にするか、あるいは、いきなり固い物で頭をなぐって気絶させてしまうか、そのどっちかしかない。
そんな一方的な乱暴なことをしなくても、落花さんと私は、ラブホの一室へ入ると、ほとんど同時に、縛り、縛られるという仲である。

室内に備えつけてあるテレビなんかもちろん観ないし、無駄なおしゃべりもしない。
バッグの中から縄を取り出し、彼女の細い手首をつかんで背中へねじあげるとき、彼女はほとんど抵抗しない。

「え、なに? なんですか、え、あ、あ、なに?」

と、恥ずかしそうに低い声で言うくらいである。
抵抗するどころか、背中にねじりあげた手首を、自分のほうからさらに高い位置に上げて、さあ高手小手に縛ってください、というような格好になる。
協力的である。

で、私はすいすいと縛る。
SM雑誌とかSMビデオの撮影現場で、縛り係という仕事を長い間やってきて慣れているので、縛るのに時間はかからない。
縄も一本か二本しか使わない。
(最近ではほとんど一本しか使わない。一本で十分なのである。ゴテゴテと多くかけると、快楽の集中度が弱まることがある)

何度もくり返して書くことになるが、落花さんという人は、縛ると同時に、全身の力をぬいて、失神したかのように倒れてしまう。
最近では、縛り終えないうちに、つまり、縄をかけている途中で、上半身をぐにゃぐにゃにさせて、その場に倒れこんでしまう。

私と彼女がこういうことをする場合は、たいてい和室のあるラブホを使う。
つまり、縛っている途中で倒れても、畳の上だったら、それほど痛くないはずである。
考えてみると、こういう場所に入って、最初に縛ったときから、彼女はこんなふうに全身をぐにゃぐにゃにさせた。
柱を使って立ち縛りにしようとしたのだが、腰から下がぐにゃぐにゃになっていて、その形にならなかったことをおぼえている。

それはもう、四年以上も前のことになる。
そのときの彼女の名前は「石谷秀」である。名付けたのは私である。
知り合って、仲良くなって、最初に入ったのが、山手線鶯谷駅近くにある「石秀」というラブホであった。
各部屋に岩風呂があり、彼女がそれを気に入ってくれたので、その後も数回利用している。

「石秀」の間に、鶯谷の「谷」をはさんで、「石谷秀」と名付けたのである。「初縛り」であり、彼女と私はこのときからさらに友交の情を深めたので、この名前には愛着がある。

ラブホの「石秀」はもう取り壊されていて、いまは跡形もない。ひどい老朽状態で、私の目にも建物や設備の古さがわかった。
岩風呂の岩も、湯垢がしみこんでいるような色だった。
いや、いまは、彼女とはじめて行ったラブホの説明をしている場合ではない。
畳の上に倒れこんでしまった落花さんを、寝床まで運ばなければならない。

半分失神して重くなっている彼女の体を、約三メートル離れているベッドまで、引きずるようにして移動させる。
このときの彼女には、自分で動こうとする意識はまったくない。だから重い。
ベッドと言っても、畳の上に厚いマットが敷かれ、そこにうすい布団がかぶさっているだけである。

すでに彼女の下半身は裸にしてあり、上はブラジャーと小さな肌着だけになっている。
胸に縄が一本かかっているために、全裸にはできない。

私は上からのしかかって彼女の唇に自分の唇を押し付ける。さんざん吸いなぶってから私の舌を彼女の口の中へねじこみ、同時に指で彼女の乳首を撫でたり、つまんで引っ張ったりする。
つまり唇と乳首に刺激を加える。

ウウウ……とか、ククク……とかうめていて彼女は反応する。失神しているといっても、意識の半分は確かに残っているのだ。

私は股間に手をのばす。彼女はキュッと太腿をとじる。柔らかい太腿のあいだに、強引に指をねじこんで性器に触れる。
すると、そこはもう濡れている。はっきりと濡れているほどではないが、湿っているという程度ではない。やはり濡れている。

(続く)

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緊美研.com

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濡木痴夢男 1930年、東京都生まれ。SM雑誌『裏窓』『サスペンス・マガジン』の編集長を務めるかたわら、『奇譚クラブ』他三十数誌に小説を発表。1985年に「緊縛美研究会」を発足し、ビデオ製作や『日本緊縛写真史』(自由国民社)の監修にあたる。著書多数。近著に『緊縛☆命あるかぎり』(河出文庫)。
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