WEB SNIPER's book review
じゃあ、どうしたら幸せになれるの!?
全国のこじらせ女子の心をわしづかみにした、雨宮まみの第二作。もてあましたくなる「女子」を語らせたら、この人!という5人を迎えての対談集。雨宮まみ+5人の女性が語る「こじらせ女子の幸せ」とは!?
世の中に漠然と蔓延するこれら「いい女」という縛りに、一度たりとも振り回されたことがない女など、おそらくほとんど存在しないだろう。
それは、女が愛されることで幸せを感じる生き物だからであり、男は愛する女を見つけることに喜びを感じる生き物であるからだと思うのだ。
男たちが「こういう女がいい」と言えば、その条件から極力漏れないようにしようと頑張ってしまうのは、女の生存本能である。
ゆえに、女は誰しも女であることに悩んだことがあるはずなのだ。
さて本書は、普通の女の子になりそびれ、女としての自尊心を大きく損なわれた「こじらせ女子」を代表する雨宮まみが、同じように女であることに四苦八苦した経験のある女性5人と「愚痴り合ったりアドバイスを受けたり、どこを目指せばいいのか話し合ったりする」対談集だ。
最初に出てくる対談相手は、元AV女優で漫画家の峰なゆか。何で最初にこんな世間ズレしまくった人を持ってきてしまうのか、相乗効果でますます「こじらせ」を加速させてしまいそうな人選をするあたりがさすが「こじらせ女子」雨宮まみである。
峰「(略)そもそもAV女優って、まったくこじらせてないと思われてますし。」
雨宮「そうそう。どちらかというと自分のかわいさや美しさ、女性性を素直に受け入れて自信を持ってる人がやる仕事だと思われてるよね。(略)」
雨宮「そうそう。どちらかというと自分のかわいさや美しさ、女性性を素直に受け入れて自信を持ってる人がやる仕事だと思われてるよね。(略)」
という一般論の感覚からして、すでにズレている。
女性性を素直に受け入れられるほど歪みのない女性なら、結婚の対象から大きく外れるAV女優という職業は選択しないだろ、というのが一般的なイメージだと思うのだが、二人から見ると違うらしく、自らの考える一般論を否定する形で自身の過去を語りだす。
峰「地味なブスは、男が10人いたら10人無関心ですけど、勘違いしてエロい服とか着てるブスは、10人中9人からは嫌われても1人くらいはセックスしてもらえるんですよ! そのことに気がついたときは『すごい発見だ!』と思いましたね。(略)」
雨宮「(略)セックスさえできれば、勘違いの恥ずかしさなんて大したことじゃないですもんね。(略) 」
雨宮「(略)セックスさえできれば、勘違いの恥ずかしさなんて大したことじゃないですもんね。(略) 」
このあたりで、「あ、私そこまでこじらせてないかも」と本を閉じてしまう読者が多いのではないかと心配になる。
いや、確かにわかるのだ。高校生にもなると、とにかくセックスって気持ちいいらしいっていう知識が入るから、恋愛は難しそうでもとりあえずセックスしてみたいと思うのはわかる。しかし、「セックスできればリア充だと思うこと自体が童貞の発想だって、最近になって気づいた。(P37)」というのはあまりにも極端だ。
そんな「こじらせ女子」雨宮まみとの対談相手は、ほかに著述家の湯山玲子、漫画家の能町みね子、元TBSアナウンサーの小島慶子、漫画家のおかざき真里と様々なタイプの女性たちである。
面白いのは、雨宮まみを筆頭に、こじらせ続行中の女性は、峰なゆか、能町みね子と20代、30代なのに対し、40歳を通過している湯山玲子、小島慶子、おかざき真里は、すでに女という縛りに悩む時代をとおりすぎて楽しく生きているところである。
パワフルに生きてきた湯山玲子は、女性らしさに関する分析も深く、ネガティブすぎる雨宮まみに対し「こんなことで女子をこじらせてどうすんの!(P60)」と説教をはじめる始末。
さらに恋愛に対するアドバイスが、
湯山「(略)自分がロマンチストだと思ってる人は、絶対海外で異文化の中で恋愛するといい。(略)」
「(略)言葉の異文化もあるけど、やっぱり宗教の異文化が最強だな。インドと中近東あたりがおすすめ。こうなったらブラジルのケチア族とかね。習俗のギャップがあるほどイイネ。」
「(略)言葉の異文化もあるけど、やっぱり宗教の異文化が最強だな。インドと中近東あたりがおすすめ。こうなったらブラジルのケチア族とかね。習俗のギャップがあるほどイイネ。」
であり、なんだか難易度高すぎてついていけない。
さらに希望を与えることも忘れず、
湯山「30、40歳になると、周りにはどんどん経験積んだオモロい女が出てくるわけ。その中で、『なんで私が人気がない?』って悩まれてもさ、『アナタはそんなに美人でもないし、つまらない』って言うしかないよね。(略)」
と、30代以降からの一発逆転方法を伝授してくれる。実に頼りになるお姉さんだ。
とはいえ、読後に妙な疲労感が残るのもこの本の特徴である。
雨宮まみが、いかに面倒臭くて重くてネガティブで、だけど努力して頑張ってるかを全身で叫んでいるような痛々しさを感じずにはいられないのだ。
そもそも、すでに著書を二冊も出して「こじらせ」経験を商売にしている以上、周りからの次作に対する期待がエネルギーとなって、「こじらせ」に磨きがかかってしまうのでは?と思うと、もはや読んでいるうちにお先真っ暗感が憑依してしまいそうになるのである。
いかんいかん!
こじらせ女子に共感して本書を手に取る女性は、雨宮まみの放つ波動に融合してどつぼにハマらないよう、くれぐれも気をつけてほしいものである。
文=東京ゆい
『だって、女子だもん!!: 雨宮まみ対談集(ポット出版)』著者=雨宮まみ他
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『女子をこじらせて(ポット出版) 』 著者=雨宮まみ