2010.2.14
Sun.at 有明・東京ビッグサイト東4ホール
プロ・アマを問わないマンガ作家・イラストレーターたちが、自主出版した本・作品を発表・販売する展示即売会=コミティア。そこは作家たちが自分の個性を自由に発揮できる場であり、訪問者にとっては未知の表現に出会えるかも知れない宝の島。今冬のコミティアでは、はたしてどんな巡り合いがあったのでしょうか。
本日開催された「COMITIA91」の収穫物のレビューを、ネットワーカー・ばるぼら氏の速報でご紹介します!会場には11時40分頃に到着し、一通り回った。以下、購入したうちの1/3ほどを紹介するので、次回以降に足を運ぶ際の参考にしていただければと思う。昨今はイラスト本が盛況なため、逆にマンガ本を意識的に購入していった。完全に自分の好みなので、これがコミティアの傾向というわけではまったくない。自分の経験上、ここで紹介しているサークルの作品を同人誌専門店で見ることはあまりない。委託にかかる手間を惜しむサークルも少なくないし、専門店にはお店側の思惑(=売れ行きやジャンルなど)に添った作品が並ぶわけで、全体のほんの一部なのだ。誰かが選んでくれたものだけを楽しむのも消費者としては正しい姿勢だけども、自分で選ぶことの面白さというのを、経験しておくのも損はない。
RubiconHearts『京都、春。postscript of Kyoto in the spring.』 先日WEBスナイパーでも取り上げたサークル「ルビコンハーツ」の新刊は、ポストカード5枚セットと『京都、春。』のコピー誌。ポストカードは取り出すとインクの匂いが広がった。午前中に完売したようだ。
近未来タニシ『ロリコンは病気だよ、と警官は言った』 タイトルこそドキッとするが、自分達とゲスト作家のキャラを幼女化して一冊にまとめた、幼稚園が舞台のかわいらしいマンガ集。
三日で飽きる『プニッ…』 ほっぺたを指でプニッとすることに執拗にこだわるマンガと、昨今のヒーター事情マンガの二本立て。どちらも地味に笑える。
松田サーモン『牝牛と氷と塩と霜』 子供の博士と、開発したアンドロイドと、配達員の三人が織りなす4コマ形式の短編。思わずノリツッコミしたくなるギャグの落とし方が毎回素晴らしい。
あらたまのはる『少女企画』 10人の作家による合同誌。マンガと小説を交互に配置している。少女といっても年齢としての少女ではなく、成長してからも残っている少女性の輪郭を描こうとする作品が並ぶ。
ENOKIX『琴浦さん漫画 in comitia』
新刊はなかったが、夏に単行本化が予定されている「琴浦さん漫画」の、コミティア用フリーペーパーが置いてあった。相手の心を読めてしまう琴浦さんとその仲間達による学園ドラマ4コマで、2月14日現在第3部の佳境。長編だがウェブで読めるのでぜひ見てほしい。
オカヤイヅミ『におう』 日常における「匂い」を題材にした短編マンガ集。前作『けのこと』は日常の「毛」を題材にした作品で、そちらも良かった。ブックデザインも洗練されている。ミニコミ『テルテルポーズ』の表紙イラストで知っている方もいるかもしれない。
良識派『サーフィン人生・その他』 出るたびに買っているサークル「良識派」の新刊は、マンガではなく文章同人誌。しかしやたら面白い。一番笑ったのは「新ジャンル シュールにならないようにがんばるシュールな子」という一文であった。
AKYS『単眼』 単眼の少女ドローイング集。単眼モノは見つけ次第必ず買っているジャンルなのだが、これは黒と白のコントラストの強さが好みだった。
軌道ラウンジ『フルカラーよめ子本』『2DK』 合同カラーイラスト本。2冊購入。単眼と同様に複眼も見つけ次第買っているジャンルで、『フルカラーよめ子本』は四つ目の女の子イラスト集。『2DK』のテーマはよくわからなかったが、どちらも収録されているイラストが全体的にかなり良い。今回ベストを選ぶとしたらここだろうか。
ひあるろん『ひあるろん最。』 以前このサークルの作家が『幽香とアリスの桃色空間向日葵畑』という東方系同人誌に参加していたことで知り、非常に面白かったので今回はオリジナルの学園作品を購入。面白かった。『最。』はシリーズ3冊目で最後らしい。
爽快主婦『SKETCH』
『まんがタイムきらら』連載「おまもりんごさん」の単行本が先月出たばかりの作者によるモノクロイラスト集。制服の女の子達が普通にかわいい。
芥子『pure jam』 制服の女学生が様々なシチュエーションにいる場面を描いたカラーイラスト集。画像下部のストライプ部分はオビになっており、めくると半透明の遊び紙。厚紙の手に取った感触など、短いながら完成度が高い。
nems/suzuko『nems vol.01』 以前も取り上げたサークル「nems」の(たぶん)2冊目個人誌。表紙以外モノクロで、コラージュ、マンガ、イラストの組み合わせ。後半のドット絵が好み。
Chapter22『The other Two』 前回出していた合同誌『Teenage Fanclub』の本作りの完成度が高かったので今回は個人誌購入。女子高生二人の会話が8コマフォーマット・スタイルで数十ページ続き、最後にコマ割により作品が解放され、会話の重さとは裏腹の奇妙な希望感で終わる。
V.A.『Britney Fucked Businesss Preview』 今回この原稿を書きながら聴いていたのはこのCD-R。近々発売予定の『ざつおん!』(非・けいおん)コンピレーションCDのプレビュー版で、制作者のHTC*communicationsのブースに置いてあったのを入手。同CDのメガミックスとボツ曲を収録。今ひそかにtwitterで話題のネットレーベル「ゆのっちレコーズ」のショウケースも兼ねており、なかなか楽しんだ。何よりジャケット絵がかわいすぎる。
文・取材=ばるぼら
関連記事
“本”と私たちの新しい関係を巡って
同人誌の可能性を拡大する『京都、春。』「ルビコンハーツ」加野瀬未友インタビュー
読者と漫画を新たな“回路”で繋ぐ漫画専門店、秋葉原「ダンジョンブックス」の試み
2009年10月24日(土)〜デザイン・フェスタ vol.30開催中!
2009年8月23日(日)開催 COMITIA89!!
海外雑誌との付き合い方
“ZINE”≠ART BOOK?
“ZINE”≠同人誌・ミニコミ?
コミックマーケット76 頒布作品紹介
私たちの夏コミ、おすそわけします!
ばるぼら ネットワーカー。周辺文化研究家&古雑誌収集家。著書に『教科書には載らないニッポンのインターネットの歴史教科書』『ウェブアニメーション大百科』(共に翔泳社)『NYLON 100%』(アスペクト)など。『アイデア』不定期連載中。
「www.jarchive.org」 http://www.jarchive.org/