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いなくなってしまったSMAPと新しい地図
ジャニーズファンのみならず広く世間を震撼させた人気アイドルグループSMAP独立騒動についての寄稿「ジャニーズ事務所派閥騒動とはなんなのか SMAPファンの立場から」から丸2年、生粋の「ジャニオタ」であるトモコさんより「新しい地図」の始まりに寄せた新たなメッセージです。私たちSMAPファンが2017年前半をどんな気持ちで過ごしたかといえば、暗澹たる気持ちとしか言いようがない。2016年末、SMAPは活動を停止した。独立に向けての反乱を起こしたとされる4人はこのまま事務所に飼い殺しにされるのではないか、そういう不安でいっぱいだった。2016年から続いた様々な憶測、噂話、インターネットでの誹謗中傷、ファン同士の諍い、うんざりだ。もちろんあきらめずに活動している人たちもいた。それが朝日新聞や東京新聞に対する意見広告だったり、募金活動だったりした。私はそういう活動に参加できないでいた。あきらめとも違う。こんなことで彼らが終わるわけがないと思いながら、動けずにいた。いやあきらめていたのかもしれない。なにをあきらめていたのかはわからないけれど。大半のファンはそうだったんじゃないかと思う。大好きなものがなくなりそうなことを認めたくなかったのだ。
そして中居正広と木村拓哉が事務所に残ることになり、稲垣吾郎草なぎ剛香取慎吾が事務所を出ることになった。退所日は9/8。彼らのデビュー日の前日だ。その日は何事もなく過ぎた。そして9/22。私たちは「新しい地図」という単語を知った。ひとつの動画(https://www.youtube.com/watch?v=aZxTgMs1y7Y)から始まったそれは鮮やかだった。
逃げよう。
自分を縛りつけるものから。
ボーダーを超えよう。
塗り替えていこう。
自由と平和を愛し、
武器は、アイデアと愛嬌。
バカにされたっていい。
心をこめて、心を打つ。
さあ、風通しよくいこう。
私たちは、新しい地図。
ああ、彼らは彼らを縛り付けるものから逃げ出したんだ、と思った。「新しい地図」のやり方はかつてのSMAPを感じさせる。そしてそれはSMAPのマネージャーである飯島三智のやり方でもある。動画と同時に意見広告が載った朝日新聞と東京新聞にも「新しい地図」の広告が載った。既存媒体ではその2紙だけにしか広告は載らなかった。ファンに対しての感謝を感じさせる強烈なメッセージだ。彼らが一番鮮やかだった頃のSMAPを思い出す。かつての彼らはアイドルという呪縛から逃れようと必死だった。バラエティやコントへの進出、そしてアイドルのアルバムだというのに当時新進気鋭だったデザイナー佐藤可士和を起用した人物像が一切載っていないジャケット。歌番組が次々と終了する時代に産まれたアイドルだったSMAPは既存のアイドル像から逃げ出したのだ。いや逃げざるを得なかった。そして始まった「新しい地図」は同じようになにかから逃れようとするプロジェクトだ。だから応援したい。すごく応援したい。でもそれはSMAPを応援することじゃない。「新しい地図」を応援することだ。そして彼らはきっと勝利するだろう。そう思った。
自分を縛りつけるものから。
ボーダーを超えよう。
塗り替えていこう。
自由と平和を愛し、
武器は、アイデアと愛嬌。
バカにされたっていい。
心をこめて、心を打つ。
さあ、風通しよくいこう。
私たちは、新しい地図。
続いて10/15にあげられた動画(https://www.youtube.com/watch?v=1qcn0Yrj6TI)は「こわくなんかない」と始まる。
私は彼らもやっぱり怖いんだと思った。怖いに決まっている。でもそこから彼らは逃げ出した。でもじゃあ中居正広は? 木村拓哉は? どうして逃げ出さないの? 逃げ出せないの? ねえSMAPはどうしてなくなってしまったの? SMAPファンの中にはSMAPはなくなっていない、という人がいる。でも私はそんなことを思っていない。SMAPはなくなってしまった。理由なんてどうでもいい。誰が悪いとかそういうこともどうでもいい。残ったふたりにはふたりの理由があるのだろう。それぞれ「新しい地図」に対してメッセージを発している。それは心温まると同時に胸が苦しくなるメッセージだ。
「新しい地図」は圧倒的に鮮やかだ。3人が楽しそうなのもいい。72時間テレビで見た様々な光景は私の胸を高鳴らせたし苦しくさせた。「新しい地図」の鮮やかさが逆に闇を際立たせる。だって「新しい地図」はSMAPじゃないもの。森且行が戻ってこようとそれはSMAPじゃない。なんなら森且行がいなくてもSMAPだ。伝わるだろうか、この気持ちが。「新しい地図」が始まったとしても、SMAPを失ってしまった穴が埋まるわけじゃない。かつて森且行がいなくなったときもSMAPはSMAPだった。私は森且行がいなくなって初めてのコンサートでそれを痛感し、同時にしばらくコンサートに行けなかったほどだった。あのコンサートのとき、森且行のパートを歌おうとした草なぎ剛が胸に手を当てて目を閉じそれから目を開いて歌い出したのを今でも覚えている。その傷は少しずつ癒えたけれど、あの2016年に傷ついた心は「新しい地図」ではまだ癒やされない。それほどまでにあの謝罪も、そのあとの報道も、ファンのいざこざも全部全部なぜあんなことが起きてしまったのか。彼ら自身だけではない、ファンが―――ファンである私たちが―――私がなぜこんなに傷つけられなければならなかったのか。だってアイドルって夢を与えてくれるものでしょう?
2016年1月。解散報道があった1/13、私の書いた記事がWEBスナイパーに載ったのが1/16、そして『SMAP×SMAP』で公共の電波を使って彼らが何に対して謝罪したのかわからない謝罪をしたのが1/18。あれから2年が経った。
私は「新しい地図」を応援している。でもそれはSMAPだからじゃない。私にSMAPを返して欲しい。いやみんなにSMAPを返してよ。でもきっと返ってこないんだ。何十年か先に返ってくるかもしれないと気休めを言う人がいる。でもそんな希望抱いたって悲しくなるだけだ。ねえ誰か。私に私の大切なものを返してください。
文=トモコ
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「ユリイカ 2015年4月臨時増刊号 総特集◎2・5次元 -2次元から立ちあがる新たなエンターテインメント」に「ジャニーズという2.5次元」執筆
18.01.16更新 |
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