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第十三章 淫獣たちの宴

II 沙耶1

「おい、沙耶にこれから行くと電話を入れておけ」

清島は秘書の高森に言った。ついさっきまで自分の派閥の領袖の前で浮かべていた卑屈な笑顔は微塵もなく消え去り、清島本来の傲慢な表情に戻っていた。

学生時代にラグビーで鍛え上げたという体格からは、筋肉はすっかり消え失せ、替わりに脂肪が鎧のように全身を覆っているが、攻撃的な雄の匂いはあの頃以上に強まっている。食うか食われるかの政治の世界を30年以上生き抜いて来た男とすれば当然のことだ。

「先生、今の時期はちょっと控えておいた方がいいのでは......」

秘書の高森が恐る恐る進言するが、清島は一喝する。

「うるさい。プライベートな楽しみまでお前が口を出すな。一時間後に行くから、ちゃんと準備をしておけと沙耶に伝えておけ!」
「は、はい......」

一度言い出したら何を言っても止まるものではないと、長年清島に仕えている高森は十分承知していた。特に性欲関係においては、歯止めが効かなくなる男だ。これまでも、何度もそれでトラブルを起こし、その度に高森たちが苦労して揉み消して来た。

しかし最近、清島の周りをマスコミがうろついているのだ。先月発覚した輸入食品に関する不正事件と清島の関わりを嗅ぎつけた者がいるらしい。こんな時に、沙耶の存在が発覚したら、とんでもないことになる。

高森は沙耶に電話を入れると同時に、運転手にも、尾行車に気をつけるように注意をしておいた。

それから、ふと沙耶の顔を思い浮かべる。あの美しい女を、これから清島が好き放題に嬲るのかと思うと、あまり性に対しては積極的ではないと自他共に認めている高森の心にも、微かなさざ波が立つ。1年前に初めて清島の元を訪れた時のあの清楚な女が、今ではあそこまで妖艶な色香を感じさせるまでに開発されてしまった。それでも、どこか哀しげな表情は変わらない。そしてそここそがサディスティックな性癖を持つ清島にとっては何よりの魅力なのだ。

数ヵ月前に、清島は高森の目の前で沙耶を嬲った。あの時の沙耶の白い裸身、そして淫らな痴態を思い出し、高森は秘かに勃起した。



「お帰りなさいませ、ご主人様」

玄関先で沙耶が土下座で清島を迎える。全裸だった。三十代前半の成熟した白い肉体が艶めかしい曲線を描いている。特に細くくびれた腰から大きな尻にかけての曲線が、清島の好みだった。

「首輪」

はき出すように清島が言うと、沙耶は顔を上げ、傍らに用意していた赤い首輪を清島に手渡す。大型犬用のがっちりした革作りの首輪で、太い鎖がつながっている。

清島は首輪のベルトを沙耶の首に巻き付けて止める。細く華奢な沙耶の首に、無骨な赤い首輪はあまりにも痛々しい。

清島は鎖を手にすると廊下を歩き出す。沙耶は四つんばいになって、犬のような姿勢で、その後を付いていく。

リビングのソファに清島はどっかと腰を下ろす。沙耶はその前で正座する。豊かな乳房がさらけ出される。綺麗な半球型を描いた沙耶の乳房は、彼女がこのマンションへやって来た頃よりも、いくぶん大きくなっているようだったが、垂れる気配すらない。

沙耶は再び土下座をして挨拶の言葉を口にする。

「ご主人様。本日も御調教よろしくお願いいたします。まず沙耶のいやらしい体をお調べ下さいませ」

そして沙耶は立ち上がると、両腕を頭の後ろで組んだ。美しい全身が清島の目の前に晒される。白く柔らかな曲線。出るべきところは出て、くびれるべきところはくびれた均整のとれた体型。やや下半身の肉付きがむっちりとしているが、それも大きな尻が好きな清島の好み通りだ。

三十代を迎えているのに、緩みは一切感じられない。むしろ若い娘に決して出すことの出来ない女の色気があふれ、彼女の肉体を一層輝かせている。

沙耶の股間には、あるべき茂みがなかった。白い下腹部は童女のような無毛であり、中央に肉の亀裂が走っているのがはっきりと見て取れた。

沙耶が清島の奴隷となった日から、そこを毎日綺麗に剃り上げられることを命じられている。少しでも剃り残しがあったりすれば、清島から厳しいお仕置きが下される。だから沙耶は毎朝、その部分を剃り上げるのが日課だ。清島は突然、ここを訪れることもあるので、手を抜くことは出来ない。

自らその恥ずかしい部分を剃る度に、沙耶は自分の哀しい立場を思い知る。それが清島の狙いでもあった。

清島は黙って沙耶の顔から足の先までを眺める。どこか変わったところはないかチェックする。沙耶の肉体は清島の所有物なのだ。傷ひとつつけることも許されない。

一通り眺めると清島は「開け」と一言命令する。

「は、はい......」

沙耶は足を少し広げ、そうして自らの指で無毛の肉裂を左右に開いた。鮮やかなピンク色の粘膜が清島の前に晒される。そこはすでにうっすらと湿り気を帯びていた。

「後ろ」

清島の次の命令が出る。

「はい」

沙耶はくるりと後ろを向くと、さらに足を肩幅まで開く。

「失礼します」

体を前に倒して自分の両足首をそれぞれつかむと、清島の前に突き出す姿勢になる。足を開いているため尻肉も割れ、その底にある菫色の窄まりも、すぐ下の肉裂も口を開き、全てが清島の目の前に晒されることになる。しかし、恥辱のポーズはそこに留まらない。

「よし、開け」
「......はい」

沙耶は手で尻肉を左右に大きく割り裂いた。当然のことながら、本来決して人目に晒されることのない秘められた菊花がこれ以上は無理というほど剥き出しになる。つられて、肉裂もさらに大きく口を開く。

女にとって、最も恥ずかしく屈辱的なポーズである。沙耶はもう何十回と清島の前でこの格好をとらされているが、未だに慣れることは出来ない。その度に恥ずかしさに唇を噛んでいる。

「ふん、見られるだけで、もうこんなに濡らしやがって。この淫乱女が」

清島が指で肉色の内壁に触れた。言葉通りに、そこはさっき以上に愛液をあふれさせていた。

「あん......。申し訳ありません、ご主人様」

恥ずかしいのに、肉体が勝手に反応している。清島に見られていると思うだけで、体の奥が熱くなり、愛液がとめどなくあふれてしまう。1年間にわたる調教で、沙耶の肉体はそこまで改造されてしまったのだ。

清島の指は肉裂の中に沈みこみ、乱暴にかき回す。沙耶は甘い悲鳴を上げる。たっぷりと愛液をからませた指を、清島は今度はその上の窄まりへとあてがった。

「あ、ああ......」

沙耶は自然にその部分の力を抜く。すると窄まりは清島の指をいとも滑らかに受け入れてしまう。清島はさらに指を押し込む。人差し指の第二関節まで、スムーズに挿入された。

「あうう......」

清島は指を蠢かせる。腸壁を刺激されて、沙耶は呻く。しかしそれは明らかに快楽を感じている声だった。

「すっかりケツで感じる女になりやがって」

清島がはき出すように言った。

「ああ、ごめんなさい、ごめんなさい......」

快楽と戦いながら、沙耶は謝りの言葉を口にする。しかし、それは清島に対するものなのか、それとももう会うことのできない夫に対するものなのか、沙耶自身にもわからなかった。



清島は沙耶の仲人だった。沙耶の夫である鈴木の父親が清島の地元の有力者である関係で、仲人を頼まれたのだ。当時、女子大を卒業したばかりの沙耶は若く美しく、清島は彼女の夫となる鈴木を羨ましく思ったものだ。清楚で色白で下半身の肉付きのよい沙耶は、清島の好みのタイプそのものだった。初めて沙耶を見た時から、清島は彼女をサディスティックに嬲る妄想に耽っていた。裸にひんむいて縛り上げたら、あの清楚な顔がどんなに歪むのか。あの尻を嬲ったら、どんな声で泣き叫ぶだろうか......。しかし、もちろんそんな邪な気持ちはおくびにも出さずに、清島は二人の仲人を勤め上げた。

それからしばらくして、鈴木の父親の会社が倒産した。地元での顔もあり、清島はその処理に尽力した。金がなくなったから残酷に切り捨てるというような真似をしては、評判が悪くなる。清島は義理人情に厚い庶民派というキャラクターを演じていたからだ。

その混乱の中で、数年ぶりに沙耶と再会した。父親の仕事を手伝っていた夫も当然ながら苦境に立ち、妻である沙耶も憔悴していた。しかし、それでもその美貌は全く衰えていなかった。いや、むしろ成熟し、大人の女としての美しさは増していた。数年続いた幸せな夫婦生活が沙耶の美しさを開花させたのだろう。子供を産んでいないせいか、体つきにも崩れは見られない。

「本当に清島先生にまで御迷惑をおかけして......」

沙耶は何度も夫と共に清島の地元事務所を訪れては、頭を下げた。

「何をいってるんだい。私は君たちの仲人だよ。仲人といえば親も同然と言うじゃないか。ましてや君のお父さんには、ずいぶん世話になっている。私もできるだけ力にはなってあげるから、がんばってこの苦境を切り抜けるんだ」
「先生、ありがとうございます」

若夫婦は何度も頭を下げた。

そうして表面上は鈴木家の復興を援助するように見せつつも、もはや関わってもメリットはないと判断した清島は、少しずつ距離を置くようになっていた。やがて父親が突然失踪。負債の後始末は一人息子である沙耶の夫の肩にのしかかった。



「こういう状況だと、なんとかあの嫁を俺のものに出来ないかなんて考えちゃうんだよ」
「いや、いけると思いますよ、ガースさん。ちょっと手伝いましょうか?」
「本当かい、ネイルさん」

清島は以前から出入りしていた会員制のSMサロンで、古くからつき合いのある男に、そんな話をしていた。紹介制で社会的地位のある人間しか入れないというそのサロンでは、全ての会員がニックネームで呼びあっていた。実際にはお互いの正体もわかっていることが多いのだが、この場ではあえてニックネームを呼び合うことでムードを楽しんでいるのだ。

ネイルと呼ばれる男は、どこかの不動産屋の社長らしく、ここの会員になれるほどの地位の人間ではないはずだが、何かと裏業界に詳しく、サロンの運営にも一枚噛んでいる。会員からも一目置かれる存在なのだ。

「私がお膳立てしますよ」
「しかし......わかっているだろうけど、これが公になると非常にまずいんだよ。その辺、大丈夫だろうね、ネイルさん」
「わかってますよ。私も、そういう世話は半分仕事みたいなものですからね、先生」

ネイルはそういって笑った。無理に標準語を使っているようだが、発音のイントネーションがどうにも関西っぽいのが、少し信用ならないように清島には思えた。

しかし、それから一ヵ月も経たないうちに、沙耶は清島の用意したマンションに囲われるようになったのだった。それも、清島の命令を何でも聞く、完全に人権を剥奪された牝奴隷として......。


(続く)

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08.10.13更新 | 小説  >  羞恥の教室