S&Msniper special archives gallery.
『S&Mスナイパー』1980年8月号読者投稿小説
「悪魔の微笑」
「悪魔の微笑」
屈辱の排泄、恥辱のデッサンに身をよじって抵抗する美人画学生・静香。身体各部へのフェティシズムを盛り込みながら、徹底的な羞恥責めを遂行するインモラルな行為の行く末は……。『S&Mスナイパー』1980年8月号に掲載された読者投稿小説を、再編集の上で全四回に分けてお届けします。
眼の醒めるような赤に、白い襟と黒いリボンがついたワンピース。ニューヨークファッションの専門店で選んだオスカー・デ・ラ・レンタのワンピースを着こんで、マニキュアはおろか足の爪にペディキュアまで塗り、二時間も化粧してきたというのに、利夫はなんともいってくれない。
学校では彫塑やデッサンの授業があるので静香はいつもGバンをはいている。絵具だらけのジャケットを着て、石膏と睨めっこをしている姿はあまり色っぽいとはいえないだろう――。だから利夫のマンションを訪れたこの機会に、せいいっぱい化粧してイメージチェンジをはかったつもりなのだが、やはり無駄だったようだ。
利夫は絵のことしか頭にないのだ。来年は卒業だというのに、就職などおかまいなしに油絵の制作に励んでいる。しかし、そんな利夫が静香は好きだった。好きというよりも、憧れているといったほうが当っているかもしれない。
ずっと以前、静香が木炭をかざして寸法を測りながら、「なんでこんなもの描くのかな?」とアマゾンの石膏像に向かって呟くと、「いまにわかるよ」と後ろで声がした。それが四年生の大塚利夫だった。なんの変哲もない石膏像のデッサンはつまらないかもしれないが、あとになればきっと、まじめにとりくんでおいてよかったと思うよ――新入生の秋本静香はなぜか利夫の言葉に、ある種の心の安らぎを覚えたのだった。
マンションは3DKで、六畳と四畳半の間にある襖をとり外した大きな部屋が、アトリエになっていた。キャンバスや画材で、アトリエは足の踏み場もなかった。天井にまで届くほどの直立式の画架に向かい合わせになって肘かけ椅子がひとつ置いてあり、静香は勧められるままに、そこへ座った。
ふと横を見ると、本が積み重ねられてある。何気なくその一冊を手にとって中を開いた静香は、ぎくりとして本を取り落しそうになってしまった。どの頁にも、あられもない恰好で縄をかけられた女の写真が載っている。
「それはSMの写真集だ。身体の動きを見るために買ってあるんだよ」
そうだったのか、と静香はほっとした。ポーズによって異なる重心や筋肉の変化を知っておくことも、絵を描く場合には大切なことにちがいない。
「こういう具合に逆さに吊り上げた身体を描くことができれば、とても勉強になると思うんだが……」
利夫は静香の横に、頬がくっついてしまうほど寄り添ってきて、縛ってある女体をひとつひとつ指さしながら、あれこれと説明を始めた。学校の授業で描くモデルは、単純なポーズが多いからつまらない、と利夫は言う。
「そこへゆくと……」と利夫はカラーグラビアの浣腸写真を指さした。両手と片足を天井に吊られて、アナルに浣腸器を突き立てられた女が、苦しそうに喘いでいる。女の足もとには白いホーロー便器が、新聞紙を詰めて置かれてある。それにしても、なんと大きな浣腸器だろう。牛乳ビンほどの大きさはある――。いかにポーズを研究しているのだと言われても、部屋のなかで排泄するというショツキングな場面を見せられて、静香が狼狽するのを隠せなかったのは確かだった。
「こういうポーズのほうが描き甲斐があるよ。動きもあるし、歯を食いしばった女の表情なんか、申し分ないね……」
物思いに沈んだような、低い呟きに、静香はいつにない異様な感じを覚えた。普段から小声で口ごもって話すのが利夫の癖だったが、その声は小刻みに震えているようで、ある種の推し量りがたい熱気を帯びていた。
「この女は、ほんとに浣腸されていると思うかい?」
と利夫が訊いた。
「わからないわ……」
「君は画学生だろ。もっとよくこの写真を見てみろよ」
あまりにも卑猥だという感情が先に立ってじっと見つめるにはかなりの抵抗があった。それでも、利夫がなにかを自分に気付かせようとしてくれているのかもしれない、そう思い直して静香はそれに見入った。
「やっぱり、わからないわ……」
「だめだなあ……こんな簡単なことがわからないようじゃ……たとえば君が、この女のように手足を縛り上げられて、一糸まとわぬ身体を男に観察されながら浣腸されるとしたら、君はどういう反応をするか想像してごらん」
と利夫は執拗に問いかけてきた。
「こんなことされたらわたし、恥ずかしくて、死んじゃうわ……」
「それでは答になっていないよ」
と利夫は写真の女の腹を指さして言った。
「ほんとうに浣腸されれば、この腹の筋肉が、もっと緊張してもいいはずだろう? それから女の顔はとても苦しそうだし、写真の横のほうには“あたしもう我慢できない、出ちゃう"などと書いてあるが、身体の筋肉が反応していないんだ。つまりこれは演技にすぎないんだよ」
と利夫は残念そうな顔をした。
「でも、縄はとても痛そうだわ……こんなに肌に食いこんでいるもの……可哀そうだわ」
静香はつい同情してしまう。きっとこの女の人はお金に困っていたのだ。父親の会社が倒産したとか、可愛い妹が病気になって、どうしても治療費を稼ぎ出さなければならなくなったとか、ともかくやむにやまれぬ事情があったにちがいないと思っていた。
「この女のひとは、えらいわ……」
静香は写真を見ながら呟いた。
「なにが、えらいんだ?」
利夫は不審そうである。
「だって、こんな恥ずかしいことをされても我慢して、お金を稼ぐ勇気があるんだもの」
「金でやってるわけじゃないだろ」
「だって、ほかには考えられないわ」
「なんで考えられないんだ。この女がマゾだったとすれば、かんたんに納得できるじゃないか」
利夫は事もなげに言うが、痛い思いをして悦ぶ女がいるなどとは、やはり静香には想像もできなかった。
(続く)
関連記事
パンティ三兄弟秘話
【1】>>>【2】>>>【3】>>>【4】
ABLIFE INFORMATION 『あぶらいふ』が貴方からの投稿を待っています!
「あぶらいふ」新着投稿作品展示室
【9月】>>>【10月】>>>【11月】>>>【12月】>>>【1月】>>>【2月】>>>【3月】
S&Mスナイパー ‐mobile‐
好評いただいた法廷ドキュメントや読者告白手記など、スナイパーモバイルでは読み物も毎日更新しております。これからも新しいコンテンツを随時アップ予定です♪ もちろん画像も毎日更新中!
10.05.19更新 |
WEBスナイパー
>
スナイパーアーカイヴス
|
|