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『S&Mスナイパー』1980年8月号読者投稿小説
「悪魔の微笑」
作= 安曇野香平

屈辱の排泄、恥辱のデッサンに身をよじって抵抗する美人画学生・静香。身体各部へのフェティシズムを盛り込みながら、徹底的な羞恥責めを遂行するインモラルな行為の行く末は……。『S&Mスナイパー』1980年8月号に掲載された読者投稿小説を、再編集の上で全四回に分けてお届けしています。
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【3】淫猥なデッサン

手首に巻いた縄を鴨居に繋げられて、静香は両腕を吊り上げられてしまった。利夫は静香の二の腕から腋の下を撫でさすった。

「手入れが悪いね……腋毛がブツブツ生えたままになってる」
「いやッ、さわらないで!」
「このふんだと、下のほうは臭いんだろうねェ。割れ目に垢がたまってたりして……」
「ひどいわ、余計なお世話じゃない、わたしもういや、家に帰してよ!」
「可愛がってもらおうってつもりなら、もう少し身だしなみってものを、わきまえなくちゃね」

利夫はカミソリを持ち出してきて、静香の腋の下を剃り始めた。

ジョリジョリと腋毛を刈り取る陰惨な音が、静香の耳に響いた。

「い……いや……」
「動かないほうがいいよ……暴れるから切れちゃったじゃないか」

利夫は血のついた中指を見せた。

「おとなしくしてれば、君の手入れの悪い身体をきれいにして、たっぷり楽しませてやるからさ」

なにをされるかわからない、と思いながらも静香は恐ろしさで動くこともできなかった。

「終わったよ。きれいになった……つぎは……」

カミソリがスリップの胸のあたりに当てられた。

「乱暴しないで……」

ピーッと甲高い音がして、スリップがふたつに裂けた。

「ああ……」
「なんだいこのブラジャーは……横が透けて見えるじゃないか」

両横にレースの花形がはめこまれているブラジャーを、利夫は興味深そうに見つめた。

「こんな飾りの付いたブラジャーなんか付けて、君も好きだねぇ……」
「やめて……やめてったら!」
「まん中に穴があいてる……普通はここにリボンなんか結んであるんだよな」

利夫はブラジャーの中央に開いている小さな楕円型の飾り穴にカミソリを入れて、胸の双丘の中心部を切り取りにかかった。

「もっとおもしろいブラジャーにしてあげるからね。動くなよ……切れちゃうぞ……」
「やだあっ、恥ずかしい、だめよ!」

布を切り取られたブラジャーから、はち切れそうな餅肌の双丘が露になった。

「君みたいな、いつもさわられたがっているような女には、こんなファツションがお似合いだよ」

両方の乳首を指でつままれて、ぐっと前に引っぱられた。

「痛いっ……」

しかし、指でコリコリと揉みしごかれると乳首は静香の意志に反して、張りを増し、ピンと突き出た形になった。

「もうコーフンしてるじゃないか」

絞り出されたように露出している双丘の、堅くなったピンクの突起を見て、静香は頭がぼうっとしてしまうほどの羞恥にかられた。

「こんどは下だ……」

利夫はパンティに眼をやった。

「それは……だめ……付けたままにして……お願い、おとなしくするから」
「君は身だしなみが悪いねえ……チリチリヘアが見えてるじゃないか」

股間に手が伸びてきて、はみ出した翳りの一本が抜き取られた。

「痛いっ!」
「すました顔をしているわりには、君のヘアはいやらしい形をしてるんだねぇ……長く折れ曲がってて……」

利夫はそれを、これ見よがしに静香の眼の前にかざした。

「やめてよーっ」

静香は大声でどなった。なんというひどい男なのだろう――普段から利夫を信頼しきっていただけに、裏切られたという気がして怒りがこみあげてきた。

しかし間もなく、怒りは羞恥に圧倒されることになった。利夫はパンティの、翳りを被う部分を、カミソリで丸く切り取り始めたのである。

「そ、そんなことしないで……お願い」

切り取った部分に指を入れて、利夫は翳りを引っ張り出し、櫛でそれを丹念に梳いた。

「毛まで立っちゃって……」

利夫の無情のひとことで、静香はもうこらえきれなくなり、声を上げて泣き出した。

「泣くってのは、コーランしてる証拠だよね……待ってなよ、いまにもっともっと楽しませてあげるからね」

記念に一枚、デッサンをしておこうと言って、利夫はノートを取り出して、ときどき静香の肢体をちらちらと見やりながら、作業を続ける。

やはりモデルがいいと、描く気が起きてくる、などと呟きながら、利夫の表情はだんだんと緊張していき、真剣そのものといった顔付きになった。

利夫は面白半分で、わたしの身体をもて遊んでいるのだ、と思っていた静香にはわけがわからなくなった。

「うまくいかない……だめだ……」

紙をちぎっては床に投げ捨て、利夫はしきりになにかを考えている様子である。

「これでせいいっぱいだ……」

完成したデッサンを、利夫はまったく気に入らないという面持で静香に見せた。

それでも、そのデッサンは恐ろしいほどに正確で、不気味な執念がこもっているようだった。ちらりと見せられた瞬間に、静香はごくりと生唾を飲んだ。切り取られたブラジャーから突き出た双丘の生々しさ――無数の翳りの一本一本が、まるで浮き出してでもくるようにリアルに描きこまれている。

静香は恥ずかしさで、死んでしまいたい衝動にかられた。

「小細工はだめだ。やはり素っ裸にして、浣腸したほうがいいな」

浣腸――静香は耳を疑った。裸身を晒しているだけでも耐えられなかったのに、この上そんなひどいことを……これだけひどい仕打ちをしておきながら、まだ飽き足らないのだろうかと、静香は恐れおののいたが、利夫は大事なのはこれからだといった様子である。

「邪魔だ」

利夫はブラジャーを、汚ないものでも剥がすようにむしり取った。

「きゃーっ」

パンティが、あけられた穴に両手をかけられて、ビリビリと左右に引き裂かれていく。

「やだーっ、やめてよーっ」
「なんだこんなもの、こうしてやる」

利夫は憎々しげに、むしり取ったパンティを畳に叩き付けた。

「浣腸だ……」

利夫は呟きながら鴨居から縄を外し、静香を肘かけ椅子に座らせて、足を頭につくほど上に曲げ、左右に広げて縛り付けた。

「や……だ……」

静香は括られた手を秘苑に当てて悶えたが、やがてその手も、椅子の後から廻された縄で頭の上に引っ張られてしまった。

「まる見えになったな……君はその恰好で、このピンクの蕾から身体の中の汚ないものを出してしまうわけだ、これで浣腸されてね」

利夫は頑丈そうなボール箱から、キラキラ光った透明ガラスの、巨大な注射器型の浣腸器を取り出した。

「ぬるぬるした腸の中の物を、人の見ている前で自分の身体から出すところを想像してみろよ……」

そう言いながら、また、

「これまではいろいろと体栽を取り繕って、しなくてもいい無理をしていたことも多かったろう。わたしはこんな汚ないものを身体の中に貯めこんでいたのです。ほんとうのわたしは男の人の見ている前で、糞尿を垂れ流してしまうような淫らな女なのです、と言いながら、俺の前で排泄してみろ。そうすれば今まで思ってもいなかったような楽な気分に浸れるぞ」

と利夫は独り言のように呟いた。

「変熊! あなたは人間じゃないわ……今まで信じていたわたしが馬鹿だったわ……」

静香は利夫の隠された異常な一面を垣間見たと感じて、恐れと落胆のために赤ん坊のように泣きじゃくった。

「君は何か、とんでもない思い違いをしているようだね」

利夫は肩をすぼめて、不思議でならないといった顔をした。

「俺はねえ、君を悦ばせてあげようとしてるんだぜ……もう少し色っぽい台詞のひとつも言ったらどうなんだい」
「ひどい……こんなにわたしをいじめておいて、まだからかい足りないの……あんまりだわ」
「な、なんだって? からかってる……なんてことをいうんだ」

こんどは利夫のほうが怒りだした。

「俺はアーティストだぞ……俺は女のほんとうの悦びの姿を、このキャンバスの上に描き出そうとしてるんだ。この100号キャンバスの上にだ!」

利夫はなにも描かれていない白いキャンバスをポンと拳で叩いた。

それからの利夫の説明は、静香にはもう、狂気としか思えないものだった。女の悦びは、死ぬほどの羞恥のなかでこそ燃え上がる。そのときの表情や身体の緊張のありさまを詳細に観察して、このキャンバスに描き込むつもりだ、というのである。

襖二枚ほどもある大キャンバスに、自分のはしたない姿が描かれる――静香は震え上がった。

デッサンでは教授も一目置くほどの利夫のことである。排泄する瞬間の、どんな些細な点もけっして見逃がしはしないだろう。実物以上にリアルな、恥ずかしい姿が永久に残ることになる。

「そ、そんなことしたって、なんにもならない筈よ……無駄なことだわ」

震えている静香のピンクの蕾に、グリセリンをなみなみと満した、200ccガラス浣腸器の嘴管がずぶりと埋め込まれた。

「ひいっ」

血も凍るばかりのおぞましい薬液が、どっと身体の中に流れて来た。

「や、やだあっ、浣腸なんてわたしいや、や……め……て……やだっ、冷たいっ」

嘴管を引き抜くと利夫は、パネルを下敷きにして、ノートとペンを取り、じっと静香の全裸の肢体を見つめた。

「この絵はおそらく、俺の最高傑作になるだろうな……できれば他人の手には渡したくないんだが……」

もう買い手はついているのだという。

「売り絵は売り絵でも、俺はいい加減に描いたことは一度もない……アーティストの精神がこもっているんだ」
「これを見ろ」

と言って利夫はノートの一頁を開いた。

足を無残に広げられた女が、秘口に男の怒脹を埋め込まれて排泄している。膨れ上がってパッタリと開花したアナルや、多量の汚物、だらしなく口を開いてよだれを流している女の表情などが、くっきりと写真よりも生生しく描かれてあった。

わたしも、こんなふうに……そう思うと静香は、気が狂ってしまいそうになった。いやだ、ぜったいにいやだ――しかし、気持ちとはうらはらに、便意はじわじわと確実に静香の腹部に押し寄せてきた。

(続く)

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