S&Msniper special archives gallery.
『S&Mスナイパー』1986年4月号読者投稿小説
「SM快楽図鑑 花咲けるオンナ教師」
少女時代にバレエ講演を見たことによって被虐願望を目覚めさせた槇村真樹は妖艶な女教師へと成長した。男子生徒たちを悩ませる露出癖、パートナーと密かに繰り広げる過激な痴態……。教師にあるまじき行為に惑溺し、背徳感を覚えながらも欲望に逆らうことができない真樹は、次第に妄想と現実との境界を見失っていく――。アブノーマルプレイの魅力と魔力をスタイリッシュに描いた傑作。『S&Mスナイパー』1986年4月号に掲載された読者投稿小説を、再編集の上で全5回に分けてお届けしています。「SM快楽図鑑 花咲けるオンナ教師」
二月の冷い風を受けながら、槙村真樹はトレンチコートの前ボタンを外し、しかも、コートの下は緊縛用の赤いロープ一本の裸身という恥辱的な姿で、東急百貨店の横から、栄通りを道玄坂下に向かって歩いていた。
歩道をすれちがう男や女たちが、目を丸くして、真樹の姿を見ていく。
「綺麗な顔をしてるけど、露出狂か?」
「キャバクラかなんかの宣伝だろ」
「だって、ビラも看板も持ってないじゃないか」
「ロマンポルノのロケーションだぜきっと」
「ブラックパック・ビデオの撮影かもしれないな」
「それにしても、たまらねえな。あんな女と一発やってみてえよ」
それぞれが、何かを言っていく。
真樹は、彼女の裸身を見て感じる男たちのために、舗装された歩道に裸身を横たえて、ゆったりとマスターベーションをして見せてあげたいという衝動を覚えた。
(ああ、あたしは女教師。なのに、こんなにすけベな性格なんだ)
真樹は、絶望的にそう感じた。
(こ、怖い……。学校関係者に、こんな姿を見られたら、今の生活は破綻をきたしてしまう。でも、あたしは、ひそかにそうなることを期待しているのではないだろうか)
「真樹、娼婦のようなかっこうで、歩道の立木によりかかってみろ。行きすぎる、すけペな男たちを、挑発してやれ」
トレンチコートのポケットのトランシーバーが、水上の低い声を受信し、耳に挿入したイヤホンから真樹に冷酷な命令をくだす。
(ああ、あたし、めちゃくちゃになる。硬化ガラスのような精神にヒビがはいって、いまにも崩壊してしまいそう)
よろめきながらも、そばに立っているもっこくの木によりかかった。
「脱げ、トレンチコートを脱いでみろ」
「あ、ああ……そ、そんな」
「さからうことは許さないぞ。今、その場所で、きつく縄が絡んだ肢体を衆目のなかにさらすんだ」
目の前がマリンバ会館である。左手に、緑色のシャッターが閉まったT銀行、車道をはさんだ後方には、スカイラインビルがそびえている。雑居ビルのパブやキャバレーの呼びこみや、客たちが、目を丸くしてもっこくの木によりかかった真樹の肢体を見つめている。
(トレンチコートを脱げば、四方から、あたしの肢体が見える)
真樹は、目を閉じた。
(ああ、真樹の躯は、殿方のあそこを勃起させるにちがいない。渋谷の栄通りを偶然に通りかかった人々の眼に、真樹の綺麗な躯は永遠に焼きついてくれるにちがいない。躯の線がくずれかかったストリッパーが、ステージで裸体をさらすのとはちがう。槙村真樹は、現役の女教師なのだ。そして、ここは人通りの多い歩道、渋谷の駅まで歩いて二分の繁華街なのだ)
「脱げよ、真樹」
イヤホンが、真樹の耳のなかで、水上秀之の声を伝えてくる。
「ゆっくりと、トレンチコートを肩からすべらせるんだ。考えることはない。エロチックなパフォーマンスだぞ」
いつのまにか、マリンバ会館の前に人の群れができていた。
風でめくれあがった真っ赤なコートからのぞく縄のかかった肢体を、ストリップショーでも見るような色情のこもった目で、のぞきこんでくる。
(ああ、見られている)
そう考えると、熱い感動が下腹部を中心にして髪の先から爪先までをかけめぐる。
(男たちの脳裏で、真樹の躯は、幾通りもの方法で犯されているにちがいない。ズボンの下で、みんな、あそこを勃起させているにちがいない。勃起したもので、真樹のお××こをしっかりととらえた空想をして、それで感じてくれているにちがいない)
真樹は、被虐的願望は強いが、その一方で羞恥心も強い女なのだ。この頃の水商売で裸身をさらして金をかせぐ大学生のような、破廉恥女ではない。
その羞恥心の導火線が、被虐的快感の炎によってジリジリと燃え、真樹の体内のホルモンバランスを崩してしまう。真樹の躯のなかを、男の精神と女の精神がかけめぐり、その結果、真樹は色情的行為に走らなければ満足できなくなってしまうのである。
「脱げよ、真樹。トレンチコートを脱ぎ去って、赤いロープを巻かれた芋虫のような躯をさらせ」
十メートルほど離れた西武百貨店の前に、愛車の赤いトヨタ・ニュー・ブリザードを停車させ、双眼鏡でこちらを見ながら、水上はトランシーバーで真樹に指令をあたえているのだ。水上の声を、まるで悪魔のささやきのように彼女は感じたが、その悪魔のささやきは、とても心地のよいものだった。
風景が、紅蓮の炎に包まれているように彼女には見え、眩めくような、焦熱の地獄が彼女を擾乱させた。真樹が立っている場所は、被虐の煉獄。眼の前にひろがっているのは地獄だった。
真樹は、悪魔のささやきに向かってこくんと頷き、ゆっくりとコートを脱いだ。
眼の前の群衆に、どよめきが起こった。
「ねえちゃん。俺がギターをひいてやるからよ、ケツをふりふり踊ってみるかい」
黒の皮ジャンにパンチパーマの男が、おどけたようにいった。真樹は、麻薬中毒患者のような、どんよりとした眼で男のほうを見、よろよろっと歩いた。コートが歩道に落ち、ひっぱられてトランシーバーのイアホンが耳から抜けた。
(続く)
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