S&Msniper special archives gallery.
「SとMの狭間で揺れる我が秘悦」
毛羽立つ縄を秘裂に擦り付けて自慰に耽る書道教室の女性師範。その脳裏に渦巻いているのは少年生徒たちの幼い肉茎を弄ぶ、変態淫女と化した己の姿だった……。被虐願望と嗜虐願望が相克するアブノーマルな性の実態を生々しく綴った告白手記。『S&Mスナイパー』1981年1月号に掲載された読者投稿を再編集の上で紹介します。
ペンを執ることを何度かためらいました。でも思い切って書くことにしたのは、この恥ずべき告白をして、少しでも肩の荷を降ろしたいという、中年女性のあさはかさからです。
私は今年三十三歳になる書道塾の女性師範です。自宅の一部を改造して近隣の生徒をとっています。夫は四十二歳の地方公務員ですが性生活はこのところ、ずっと遠のいています。理由は夫が醜男なくせに性技が下手ですので、私はいっこうに燃えないのです。よく友人からはそんな醜男となぜ結婚したかと言われますが、私の婚期がおくれていたことと、醜男でもセックススさえ満たしてくれたら……という一縷の望みがあったからです。が、そのもくろみは無に帰しました。夫はセックスも下手くそで結婚以来二年九カ月、一度として私はオルガスムスを味わったことがありません。
セックスが人生のすべてでないことは存じておりますが、ナマ身の女体、狂おしいほどの絶頂に酔い痴れたいのは誰しもおなじでしょう。はしたないと軽蔑されるでしょうが、結婚一週間目から私は自慰をはじめました。
それもふつうの方法でなく、私は粗目のロープで性器をこするのです。棕櫚縄、麻縄、荒縄などをタワシのようにして、つよく性器にこすりつけます。するとびりひりとした痛みが鼠剄蹊部から会陰部、肛門のほうへ突っ走って、私ははげしい快感に襲われます。
そんなときの私の瞼に浮かぶのは草刈正雄や、三浦友和といった美男たちです。私の息は乱れ、瞳は濡れ、うめき声さえ出しているのです。さらに私は棕櫚縄に結び目をつくってそれを褌のようにタテに締め、背中から腹部へとおし、両手で前後にしごくことを覚えました。
こうするとパンティをつけたまま自慰が可能なのです。しかも力は数倍になります。棕櫚縄の結び目が陰核、尿道口、膣、会陰部、肛門とタテにつながる性感帯を、一網打尽にメタメタにしてしまうのです。
恥毛が縄目にこすれて抜ける痛みや、陰核が潰れそうな被虐感、さらに小陰唇が拗じれるときの苦痛……それらが私をえもいわれぬ妖美の世界へつれていってくれます。
二十回もこすると私は半ば失神状熊になります。縄を抜いてみると結び目を中心にして、血や股汗、パルトリン氏腺からの分秘液がべっとり附着しています。なんとも言えぬひどさですが、それが私にはたまらない興奮の余韻をのこしてくれるのです。
もちろんそんな自慰をしたあとの私は、内股が腫れあがって便所へもいけません。私はじっと腰をかがめて痛みが退くのを待っています。
そして私の脳裡には奇怪な幻覚が、現実とも悪夢とも知れずに明滅するのです。暴漢に縛られてお浣腸責めに遭っていたり、反対に美少年の青白い性器をくわえ、歯で咬み切っている光景など、とても口で言い尽せぬ淫らなシーンを私は描いているのです。
自慰というものはその行為を終えてしまったら、スカッと晴れるものではないでしょうか。よくわかりませんが男の人の場合、射精とともにスカッとするのでしょうが、私の場合は反対なのです。
縄を前後にこすっている間は手に力を入れているので、そんな空想や妄想に酔っている余裕はないのです。しかしプレイを終わったあと、私は存分に酔うことができるのです。
「ああっ……」
私は股間の痛苦に悶えながらも、その奇怪なSM幻覚――とでも申しましょうか――に、五分も十分もうっとりと陶酔することができるのです。
私は自分の性欲が他の女性とは、ずいぶん違うのだということがだんだんとわかってきました。それもただ違うのではなく、書道でいう前衛芸術のように次元の違うものだとわかってきました。
性器と性器を単に結合させたピストン運動――それを二次元のセックスとすれば、私のは三次元、四次元のセックスです。
いまにして思い当るのですがそういえば私は少女時代から、怪奇漫画や責め絵に強い関心と興味を寄せていたようです。映画もヒッチコックのスリラー映画などを観て、暗い映画館の中で自慰した記憶があります。
高校へ進んでからは男の人が見るSM雑誌を、古本屋でよく立ち読みしました。実現はしませんでしたが、SM雑誌の中に〈緊縛モデル女性求む〉などありますと、何度か応募してみたい誘惑に駆られたものです。
しかしついに私は自分がS体質なのか、M体質なのかわかりませんでした。暴漢に縛られて犯されたいときはMですが、美少年の性器を咬み切りたいときはSなのです。そんな私がお金を貯める以外、なんの能もないいまの夫と結婚したのですからこれはうまくいくはずはないのです。
(続く)
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