毎週土曜日更新! The dancing girls are in full bloom at their best.
咲きほころぶ踊り子たちの肖像 舞姫爛漫 第6回 「七雪ニコ」 【2】
写真・文・インタビュー=インベカヲリ★
モデル=七雪ニコ
ストリップ劇場でのストリップショー。黄金時代は過ぎたといえ、根強いファンはいまも劇場に通っています。そして踊り子たちもまた踊り続けているのです。そんな彼女たちの姿を追う「舞姫爛漫」第6回、七雪ニコさん掲載中です!
君達付き合ってていいよってみんなに言われたかったんです
でも言われないっていう社会にすごく腹が立って
でも言われないっていう社会にすごく腹が立って
森本くんと彼女
大学を中退し、アルバイトで生活をつないでいた七雪ニコは、友達の家を転々と居候していた。
「まず付き合ってた女の子の実家に一緒に住んで、そのあとは友達の家に住んだり、お姉ちゃんの家に転がり込んだり。そのあとは彼女と、新潟の工場で住み込みで働いたりしてましたね」
サラリというので聞き逃しそうになったが、確かに「彼女」と言っていた。
「バイセクシャルなんですか?」と聞くと、七雪ニコはしばらく考え込み「えっ?」と驚いて見せたあと、「バイセクシャルかもしれませんね」と答えた。
「そのときはレズビアンって言ってましたね。そもそも大学のときに、私は森本君っていうバンドやってる男の子のことが好きだったんですよ。ある日、授業中にボーっと窓の外を眺めてたら、森本君が金髪に青いカバンをぶら下げて、すごい天気のいい日に走ってるんですよね。カッコイイなあと思って、すっごい好きになっちゃったんですよ。でもアプローチの仕方とかよくわからなくて、とりあえずロックっぽい感じが好きだろうと思って、『ヒステリックグラマー』の服を着て、でもイメージ的にはシンディ・ローパーみたいな。私はそのとき自分のこと巨乳だと思ってて、ファッションのポイントとしては胸を強調してて。森本君はロックが好きみたいだし、こんな感じかなって。たしか椎名林檎の曲をカバーしてたんだよね。
私は森本君をストーカーしてて、家のところで張ってたりしてたんだけど、ちょうど近くにその彼女の家もあったんですよ。彼女は入学式のときから私のことを見てたらしく、『ずっと七雪さんと仲良くなりたかったの』って話しかけられて。張り込みに疲れたら、彼女の家に遊びに行ってご飯を食べさせて貰ったりね。でも森本君にはフラれちゃったんですよ。それで落ち込んでたら、彼女が『ニコちゃんは可愛いよ! 可愛い!』って言ってくれて。そんで私も『いいよ、キスすれば』みたいな」
身振り手振りを交えて、七雪ニコはぶっ通しで語ってくれた。その語り口が、あまりにも臨場感溢れるので、聞いているこっちまで、自分の青春時代を思い起こしてしまう。そして笑わせてくれたかと思うと、ふいに表情を変えるのだ。
「だからなんでバイセクシャルなんですか?って聞かれて即答できないかというのがね。彼女とは真面目に付き合ってたから、まず女同士で付き合うっていうのは普通に過ごしていればいいんだけど、だんだん壁が出てくるんですよ。例えばカップル割引使おうかって話しても、でも女同士で行っていいのかな?とかなるじゃない。ラブホテルに行くにもすごい勇気が必要だし。その勇気がいることに対しての社会のあり方を考え始めちゃったんです。一番、不満に思ったのは、親に紹介できないってことで、私達はなんかできなかったんですよ。『君達付き合ってていいよ』ってみんなに言われたかったんです。でも言われないっていう社会にすごく腹が立って。
そのときはだからレズビアンって言ってたんですよ。でもそのコミュニティというのも別に居心地がいいわけじゃなくて、レズビアンだからって人と人との面倒くささは変わらないし、偏見はあるし、バイセクシャルを敬遠するレズビアンの子もいるし。
セクシャルマイノリティで言えば、性的欲求がないって人もいるわけじゃないですか。だから誰とセックスするかっていうのは別に大した問題じゃないじゃんと思ってて。でも『バイセクシャルです』とか、『レズビアンです』っていうと、面倒くさいんですよ。『女の子見て興奮しちゃうの?』とかからかってくる男もいるわけじゃないですか。そういう男がまず苦手っていうのがあるし、そんな相手と真面目な話ししたくないから。だから、バイセクシャルなんですか?って聞かれると、あー当時はレズビアンやってました、みたいな感じ。そのあとは男の子としか付き合ってないから、今はノンケみたいな」
そこまで一気に話すと、コーヒーを飲み干し「ちょっと休憩入れようよ」と言って、煙草を吸いに行ってしまった。
物事を正確に伝えるために、答え方に妥協はない。七雪ニコは真面目な人だった。
(続く)
七雪ニコ
新宿TSミュージック所属。2004年2月21日シアター上野にてデビュー。新潟出身、B型、双子座。好きな言葉は「楽しんでくれよ、さもきゃくたばっちまえ!」。ステージ上ではピアニカを用いるなどPOPな演目を披露、また積極的にタッチショーも行なっている。劇場以外でもパフォーマンスを観ることができる数少ないストリッパーのひとり。
香盤情報
東京・新宿TSミュージック
5月11日-20日
福井・芦原ミュージック劇場
6月11日-20日 撮影=インベカヲリ★
モデル=七雪ニコ
取材協力=シアター上野
関連記事
咲きほころぶ踊り子たちの肖像「舞姫爛漫」 番外編
船橋ストリップシアター若松劇場 【1】>>>【2】>>>【3】
インベカヲリ★ 東京生まれ。編集プロダクション、映像制作会社勤務を経てフリー。写真、文筆、映像など多方面で活動中。著書に「取り扱い注意な女たち」。趣味は裁判傍聴。ホームページでは写真作品を随時アップ中。 インベカヲリ★ http://www.inbekawori.com/ |
08.05.17更新 |
WEBスナイパー
>
インタビュー